北朝鮮ミサイル 過去最長の飛行距離 岸田首相「暴挙で強く非難」

防衛省によりますと、4日午前7時22分ごろ、北朝鮮から弾道ミサイル1発が発射され、東北地方の上空を通過したあと、日本のEEZ=排他的経済水域の外側の太平洋に落下したとみられています。
北朝鮮が日本の上空を通過する形で弾道ミサイルを発射するのは、5年前の9月以来で、今回で7回目です。
防衛省が情報の収集を進めるとともに、発射の意図について分析を進めています。

防衛省によりますと、4日午前7時22分ごろ、北朝鮮内陸部から弾道ミサイル1発が東の方向に発射されました。

ミサイルは東北地方の上空を通過したあと、日本のEEZ=排他的経済水域の外側の太平洋に落下したとみられています。

政府関係者によりますと、ミサイルは発射後、およそ20分間、4000キロ以上飛行し、日本列島の東3000キロ余りの海域に落下した可能性があるということです。

防衛省などによりますと、これまでのところ、被害の情報は確認されていないとしています。

この発射に関連して、政府は、人工衛星を通じて自治体などに緊急に情報を伝えるJアラート=全国瞬時警報システムやエムネット=緊急情報ネットワークシステムで情報を発信しました。

北朝鮮による弾道ミサイルの発射について、政府がJアラートやエムネットで情報を発信したのは、5年前の2017年9月15日以来です。

北朝鮮は、アメリカ軍と韓国軍が9月下旬に日本海で共同訓練を行ったことなどに対して反発を強め、9月25日以降、1週間で弾道ミサイルを4回発射していました。

北朝鮮によるミサイル発射は、巡航ミサイルも含めてことし23回目です。

防衛省は情報の収集を進めるとともに、発射の意図について分析を進めています。

岸田首相「暴挙で強く非難」

岸田総理大臣は午前8時過ぎに総理大臣官邸で記者団に対し「先ほど北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、我が国上空を通過し、太平洋上に落下したとみられる。最近の度重なる弾道ミサイルの発射に続く暴挙であり、強く非難する」と述べました。

そのうえで「私からはこの事態を受けて、落下物等による被害がないかの確認、そして情報収集分析の徹底、関係国との連携を指示したところだ。こののち、直ちにNSC=国家安全保障会議を開催し、情報の集約、分析に努めたい」と述べました。

松野官房長官「飛距離約4600キロと推定」

松野官房長官は、NSC=国家安全保障会議の閣僚会議のあと記者会見し、北朝鮮から発射された弾道ミサイルは1発であることを明らかにしたうえで「青森県付近の我が国上空を通過した後、7時44分頃、太平洋上の我が国排他的経済水域外に落下したものと推定される。現時点で被害報告などの情報は確認をされていない。政府としては、引き続き、我が国の領域、およびその付近の落下物の有無などについて、関係機関を通じて確認作業を実施しているところだ」と述べました。

また、北朝鮮から発射された弾道ミサイルについて、飛距離はおよそ4600キロ、最高高度はおよそ1000キロと推定していると明らかにしました。

浜田防衛相「中距離弾道ミサイル級以上 これまでで最長」

浜田防衛大臣は、北朝鮮が発射した弾道ミサイルについて、IRBM=中距離弾道ミサイル級以上の射程を有するミサイルだと考えられると明らかにしました。

また、発射地点から着弾地点までの推定距離として発表してきた飛行距離、およそ4600キロは、これまでで最長であったと考えられると明らかにしました。

外務省幹部「米韓共同訓練など行ったため 何かしら反応か」

外務省幹部は、午前8時半ごろ外務省で記者団に対し「現在、情報収集中だ。北朝鮮は、米韓が空母も参加した共同訓練などを行ったため、何かしら反応しなければいけなかったのだろう」と述べました。

韓国 ユン大統領「北は国際社会のきぜんとした対応に直面する」

韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領は、北朝鮮が4日朝に発射した弾道ミサイルについて、報道陣に対し「北は、わが軍をはじめ、同盟国や国際社会のきぜんとした対応に直面することになる」と述べ、北朝鮮を強く非難するとともに、午前9時からみずからも出席してNSC=国家安全保障会議を開くことを明らかにしました。

Jアラートやエムネットでの情報発信は2017年9月15日以来

北朝鮮による弾道ミサイルの発射について、政府がJアラート=全国瞬時警報システムや、エムネット=緊急情報ネットワークシステムで情報を発信したのは、5年前の2017年9月15日以来です。

このとき、弾道ミサイルは北海道の渡島半島や襟裳岬付近の上空を通過しておよそ3700キロ飛行し、太平洋上に落下したとみられ、政府は、ミサイルの発射と上空通過、それに、推定される落下地点についてJアラートやエムネットを通じて情報を発信しました。

JーALERTとは

JーALERT=全国瞬時警報システムは、防災や国民保護に関する情報を、人工衛星を通じて瞬時に自治体に送るものです。

国からの情報を自治体の装置が受信すると、防災行政無線が自動的に起動して放送が行われます。

また、一部の自治体では、登録すれば携帯電話のメールで情報を受け取ることができます。

システムが作動してから最短では数秒で、情報伝達が可能だということで、現在は、すべての自治体で導入されています。

青森県 太平洋沖の大型のイカ釣り船などに被害なし確認

青森県水産振興課によりますと、北朝鮮によるミサイルが発射された当時、青森県の太平洋沖では大型のイカ釣り船など合わせて4つの船が漁に出ていましたが、午前8時の時点でいずれも被害はないことが確認されたということです。

漁業者男性「逃げようがないので非常に不安」

千葉県から、青森県八戸市の近海にサバやイワシの漁に来ていた70歳の漁業者の男性は「サイレンが鳴ったので、船員を全員起こして船内で待機していましたが、『丈夫な建物の中で窓から離れて』と言われても、船内では逃げ場がないので太平洋上に落下したと聞いて安心しました。ふだんは、30キロから50キロほどの沖合で操業していますが、ミサイルが飛んで来たら海上では逃げようがないので、非常に不安です」と話していました。

北朝鮮 日本上空通過の弾道ミサイル発射 今回で7回目

北朝鮮が日本の上空を通過する形で弾道ミサイルを発射するのは5年前の9月15日以来で、今回で7回目です。

このうち、前回、5年前の9月と、前々回、5年前の8月の発射は、いずれもミサイルが北海道の渡島半島や襟裳岬付近の上空を通過し、太平洋上に落下したとみられます。

防衛省は、いずれも最大射程およそ5000キロの中距離弾道ミサイル級の「火星12型」としています。

このほか北朝鮮は、1998年8月と2009年4月に東北地方の上空を、2012年12月と2016年2月には沖縄県の先島諸島付近の上空を通過させる形で弾道ミサイルを発射しています。

一方、北朝鮮が事前に予告なく日本の上空を通過する形で弾道ミサイルを発射したのは、今回で4回目です。

北朝鮮 弾道ミサイルなどの発射 ことしに入って23回目

防衛省などによりますと、北朝鮮が弾道ミサイルなどを発射したのはことしに入って23回目です。

これまでに、1月に7回、2月に1回、3月に3回、4月に1回、5月に4回、6月は1回、8月に1回、先月に3回、今月に1回、それぞれ弾道ミサイルなどの発射を繰り返しています。

特に先月下旬から今月初めにかけてはわずか1週間の間に4回と相次いで発射しています。

これまでの22回のうち、19回は弾道ミサイルと推定されもう1回も弾道ミサイルの可能性が指摘されています。

残りの2回は長距離巡航ミサイルなどと推定されています。

このうち、直近の今月1日に発射された弾道ミサイルについて防衛省は、北朝鮮西岸付近から2発を東方向に向けて発射したことを明らかにしています。

変速軌道で飛行した可能性があり、いずれも落下したのは日本のEEZ=排他的経済水域の外側と推定されるとしています。

中距離弾道ミサイル これまで4回発射

ことしの防衛白書によりますと、北朝鮮は液体燃料方式の中距離弾道ミサイルを、これまでに4発発射しています。いずれも北朝鮮が「火星12型」と呼ぶミサイルです。

【1回目 2017年5月14日】
最初の発射は5年前の2017年5月14日で、朝鮮半島の東、およそ400キロの日本の排他的経済水域の外側に落下しました。およそ30分をかけて800キロほど飛び、高度は2000キロを大きく超えたとみられ、通常よりも発射の角度を上げて高く打ち上げる、「ロフテッド軌道」だったと推定されています。通常の軌道で発射されたとすれば射程は最大でおよそ5000キロに達するとみられ、アメリカ軍の拠点があるグアムが射程に入ります。

【2回目 2017年8月29日】
2回目が2017年8月29日です。北海道の渡島半島や襟裳岬の上空を通過し、襟裳岬の東、およそ1180キロの太平洋上に落下したと推定されています。飛行距離はおよそ2700キロ、最高高度は襟裳岬付近の上空でおよそ550キロに達したとみられています。

【3回目 2017年9月15日】
3回目が2017年9月15日です。2回目と同様、渡島半島や襟裳岬の上空を通過し襟裳岬の東、およそ2200キロの太平洋上に落下したと推定されています。飛行距離は、8月の発射より1000キロ長いおよそ3700キロに達しました。また、最高高度も8月の発射を250キロ上回り、およそ800キロだったと推定されています。

【4回目 2022年1月30日】
そして4回目がことし1月30日です。北朝鮮内陸部から発射され、日本のEEZ=排他的経済水域の外側の日本海に落下したと推定されています。飛行時間は30分ほど、飛行距離はおよそ800キロで、最高高度はおよそ2000キロに達し、「ロフテッド軌道」で発射されたとみられています。また、このときのミサイルも、通常の軌道で発射されたとすれば、射程は最大でおよそ5000キロに達するとみられています。

中距離弾道ミサイルをめぐって北朝鮮は2016年に「ムスダン」と呼ぶミサイルの発射を繰り返しましたが、この年の10月に2回連続で発射に失敗していて、防衛省は中距離弾道ミサイルとしては「火星12型」の開発や実用化に集中している可能性が考えられるとしています。