安倍元首相の「国葬」9月27日で最終調整 野党から異論も

政府は参議院選挙の応援演説中に銃で撃たれて亡くなった安倍元総理大臣の「国葬」を9月27日に東京の日本武道館で行う方向で最終調整に入りました。

岸田総理大臣は安倍元総理大臣の葬儀について、歴代最長の期間総理大臣の重責を担い内政・外交で大きな実績を残したなどとして、ことし秋に「国葬」で行う方針を表明しています。

安倍氏の「国葬」について政府は遺族の意向や外交日程なども踏まえ、9月27日に東京 千代田区の日本武道館で行う方向で最終調整に入りました。

政府は与党側とも調整を行ったうえで「国葬」の日程を近く閣議決定することにしています。

戦後、総理大臣経験者の「国葬」は昭和42年に亡くなった吉田茂元総理大臣以来2人目となります。

安倍氏の「国葬」をめぐって野党の一部から反対や懸念の声が出ていることも踏まえ、政府は国民に対し「国葬」を行う意義などを丁寧に説明していく方針です。

官房長官「政治的評価を強制するとの指摘は当たらない」

松野官房長官は午前の記者会見で「安倍元総理大臣は憲政史上最長の8年8か月にわたり卓越したリーダーシップと実行力をもって厳しい内外情勢に直面するわが国のために内閣総理大臣の重責を担うなど、その功績は誠に素晴らしいものであり、国の内外から幅広い哀悼・追悼の意が寄せられていることなどを勘案し、国葬儀を執り行うこととした」と述べました。

そのうえで一部の野党が「国民に政治的評価を事実上強制する」などとして「国葬」の実施に反対していることについて「国民一人一人に政治的評価を強制するとの指摘は当たらない」と述べ「国葬」を行う意義などを説明していく考えを示しました。

立民 馬淵国対委員長「決定の経緯や予算 国会で説明を」

立憲民主党の馬淵国会対策委員長は、記者団に対し「国葬は1967年以来で、近年、例がない事案なので、決定の経緯や予算について国会で説明すべきだ。われわれも、弔意を表す場は必要だと考えているが、国葬ありきというよりも、立法府で議論を重ねたうえで、国民の理解が得られるような形で行うべきだ。『閣議決定をしたから』ではすまされない」と述べました。

そして、記者団が「党として国葬に賛成なのか、反対なのか」と質問したのに対し、馬淵氏は「反対か、賛成かという簡単な問題ではないはずだ。政府が決定したことについて、国会で何も説明がないので、その説明を求めるという立場だ」と述べました。

公明 竹内政調会長「民主主義の重要性 国民と確認する意味」

公明党の竹内政務調査会長は、記者会見で「岸田総理大臣の決断を評価したい。民主主義の根幹である選挙に対し、暴力で言論を封じ込めようとすることは断じて許されない。『国葬』は、民主主義の重要性を改めて国民とともに確認する意味もあり、法的根拠もあると考えている」と述べました。

社民 福島党首「法的根拠ない 国会で説明すべき」

社民党の福島党首は、記者会見で「国葬には反対だ。最大の理由は、戦前にあった国葬令が廃止されたことで、現在、国葬をやるための法的根拠がないことだ」と述べました。

また「戦後、吉田茂氏の国葬が行われたが、学校などが半休となり、国民が黙とうを行ったため、思想良心の自由の観点などから問題になったようだ。その後の佐藤栄作氏の葬儀は、当時の新聞によると『国葬は法的根拠を欠き、野党にも配慮して断念』したとなっている」と指摘しました。

そのうえで「国葬という以上、三権が合同で行うべきで、閣議決定だけでは、ほかの二権に効力が及ばず、実質は内閣葬に過ぎなくなる。閣議決定だけで国葬を行えるとしている岸田政権の姿勢は極めて問題で、禍根を残すことになる。少なくとも国会で説明すべきで、ほかの野党とともに、閉会中審査を強く求めていく」と述べました。