安倍晋三元首相の「国葬」 ことし秋に 吉田元首相以来の国葬

演説中に銃で撃たれて亡くなった安倍元総理大臣について、岸田総理大臣は、歴代最長の期間、総理大臣の重責を担い、内政・外交で大きな実績を残したなどとして、ことしの秋に国葬を行う方針を表明しました。

岸田総理大臣は7月14日夜に記者会見し、冒頭、奈良市で演説中に銃で撃たれて亡くなった安倍元総理大臣に哀悼の意を示しました。

そのうえで安倍氏について「憲政史上最長の8年8か月にわたり、卓越したリーダーシップと実行力をもって総理大臣の重責を担い、東日本大震災からの復興や日本経済の再生、日米関係を基軸とした外交の展開などさまざまな分野で実績を残すなど、その功績はすばらしいものがある」と述べました。

また「外国の首脳を含む国際社会から極めて高い評価を受けており、民主主義の根幹である選挙が行われている中、突然の蛮行で逝去されたことに対して、国の内外から幅広く哀悼や追悼の意が寄せられている」と述べました。

そして「こうした点を勘案し、この秋に『国葬儀』の形式で、安倍元総理大臣の葬儀を行うこととする」と表明しました。

さらに岸田総理大臣は「安倍元総理大臣を追悼するとともに、わが国は暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示していく。合わせて、活力にあふれた日本を受け継ぎ未来を切りひらいていくという気持ちを世界に示していきたい」と述べました。

「国葬」とは

政府によりますと「国葬」は国の儀式として行われるもので、戦後、総理大臣経験者の「国葬」は昭和42年に亡くなった吉田茂・元総理大臣が唯一となります。

「国葬」について法律の規定はありませんが、吉田氏の国葬は、生前の功績を考慮して閣議決定に基づいてとりおこなわれ、国葬の総額1810万円は全額が国費でまかなわれました。

政府は、今回も全額を国費で支出することを検討していますが具体的な規模や費用の負担方法は閣議で決定するとしています。

近年では総理大臣経験者の葬儀は内閣と所属する政党などによる「合同葬」が主流で、最近ではおととし10月に中曽根康弘・元総理大臣の「合同葬」が東京都内で行われました。

また昭和50年には佐藤栄作・元総理大臣の葬儀が、内閣と自民党、それに国民有志が共同で費用を支出する「国民葬」の形で行われました。

自民 森山前国対委員長「政府はよい決断をした」

自民党の森山 前国会対策委員長は、記者団に「安倍元総理大臣の政治家としての功績や、総理大臣としての国際的な活躍を考えると国葬にふさわしい。政府はよい決断をした」と述べました。

立民 泉代表「静かに見守る」

立憲民主党の泉代表は「改めて安倍元総理大臣に深く哀悼の誠をささげるとともに、この凶行を強く非難し、わが国の民主主義と社会の安全を守ることを約束する。国葬については、その性質から厳粛に行うものであり、元総理のご冥福を祈りつつ、静かに見守りたい」とするコメントを出しました。

維新 松井代表「反対ではないが家族などが望んでいるのか懸念」

日本維新の会の松井代表は、大阪市で記者団に対し「反対ではないが、亡くなった安倍元総理大臣と家族が望んでいることなのかと懸念を持っている。大々的に国葬を行えば経費もかかるので、その批判が遺族に向かわないことを願う。昭恵夫人を大切に守ってきた安倍元総理大臣は、夫人が批判の矢面にさらされるのは望んでいないのではないか。政府には遺族の負担についても考えてほしい」と述べました。

国民 玉木代表「国葬 理解できる」

国民民主党の玉木代表は「国の内外から広く哀悼の意が寄せられており、国葬とすることについては理解できる。改めて、民主主義の最大の発露である選挙の演説中の蛮行を強く非難するとともに、在任中の功績に敬意を表し、心からお悔やみを申し上げる」とするコメントを出しました。

官房長官「日程 規模などは関係者と調整」

松野官房長官は15日の閣議のあとの記者会見で、安倍元総理大臣の「国葬」の日程などを問われたのに対し「具体的な日程や開催場所、規模も含め今後ご遺族をはじめ関係者と相談のうえ、調整してまいりたい」と述べました。

また記者団が「安倍元総理大臣の国葬には賛否両論があるが、どう理解を求めるか」と質問したのに対し「国民のみなさまには政府の考え方をしっかりと説明させてもらいたい。また元総理大臣に対する葬儀のあり方は諸般の事情を踏まえ、国民の心情やご遺族のお気持ちなども総合的に勘案し、そのつどふさわしい方式が決められてきたと考えている」と述べました。

東京都 小池知事「国葬を受けられるだけ安倍氏には功績ある」

安倍元総理大臣の「国葬」について東京都の小池知事は「国葬を受けられるだけ安倍氏には功績がある」と述べました。

小池知事は記者会見で、安倍元総理大臣が銃撃され死亡してから15日で1週間となることについて「不条理としか言いようがなく、こうした不条理が故人を失った悲しみや今回の蛮行に対する憤りをより大きなものにしている」と述べました。そのうえで「安倍氏は選挙では『戦いの人』で演説でマイクを握りながら最後に散られたのは、まさに戦いの最中の戦死だった。世界がこれだけ混乱し、分断された時期に安倍氏を失うことは国益を失うことにつながりかねない」と述べました。

また安倍氏の「国葬」について小池知事は「世界でこれだけ認識されている方を、どうやって日本で弔うかは世界中も見ている。国葬を受けられるだけ安倍氏には功績がある」と述べました。