憲法 国民投票 なぜテレビやネットでCM規制?

広告規制?

改憲の手続きを定めた国民投票法が成立したのは、2007年5月でした。今から15年前になります。
この法律の内容をめぐって、国会の憲法審査会では、さまざまな議論が行われています。

国民投票でテレビやラジオの「CM」規制は?

その一つが、国民投票の際、投票前にテレビやラジオで流す「CM」の規制です。
「CM」には、改憲の項目に賛成や反対を呼びかけるものなどが想定されていますが、法律では、投票日の14日前から禁止されています。
それより前は、基本的に自由になっています。

このため、たとえば、資金力のある団体が多くの「CM」を流せば、その分、投票結果に有利に働くのではないかといった懸念などから、衆議院憲法審査会の議論では、「CM」の量や、「CM」を提供する団体の資金の流れを、事前にチェックするなどの規制が必要だといった指摘も出ています。

民放連=日本民間放送連盟
これに対し、テレビ局などで作る民放連=日本民間放送連盟は、「表現の自由や知る権利の制限につながりかねず、言論の自由市場で淘汰されるべきだ」として、規制に反対しています。

インターネットの広告規制はない!

法律には、インターネットの広告に関する規制はありません。

法律が成立した15年前には、いまのようなネットの普及が想定されなかったからです。いま憲法審査会では、ネット広告のあり方も議論すべきだという意見が各党から出ています。理由としては、以下の2つが挙げられています。

1つは、「ネット広告市場の拡大」です。

ネット広告費は増加

大手広告会社「電通」の調査によりますと、ネット広告費は、法律が成立した2007年は6003億円。それが、2019年には、テレビの広告費を上回って2兆1048億円に。さらに、去年は、2兆7052億円に。テレビ、新聞、雑誌、ラジオの4つの媒体をあわせた2兆4538億円を上回るまでになっています。

それだけに、規制のあり方などをめぐって議論が続いていますが、結論は出ていません。

もう1つは、「フェイクニュース」です。
ネット上には真偽が定かではない情報もあふれ、意図的にうその情報を流す「フェイクニュース」の存在も問題になっています。

トランプ氏とクリントン氏

2016年のアメリカの大統領選挙では、候補者に関するうその情報が、結果に影響を与えたという指摘も出たほどです。

国会での議論はどうなっている?

衆議院憲法審査会の様子

こうした状況も踏まえて、6月2日の衆議院憲法審査会では参考人質疑が行われました。

IT事業者が加盟する「セーファーインターネット協会」専務理事の吉田奨さんと、情報の事実関係の確認などを行うNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」事務局長の楊井人文さんの2人が出席しました。

2人がまず指摘したのは、コロナ禍での情報への対応です。

「セーファーインターネット協会」専務理事の吉田奨さん

吉田さんは、ネット上でワクチンをめぐるデマが横行したことなどをきっかけに、「プラットフォーマー」と呼ばれるIT企業が、正しい情報を届けるための工夫に取り組んだことを紹介しました。
その一つがワクチンに関する用語を検索すると、検索結果の画面の上の方に、厚生労働省や医療専門家などが提供する情報を表示するようにしたということです。

「ファクトチェック・イニシアティブ」事務局長の楊井人文さん

楊井さんは「偽情報はネット社会だけの問題ではない」として、コロナ禍で事実に基づく議論が冷静に行われていたのか、政府の関係部署などから事実に基づく情報が発信されていたのか、疑問に感じることが多かったと指摘しました。

その上で、吉田さんは「世界的に民主主義の脅威となるようなフェイクニュースの横行が報告される中、日本も関係機関が協力し、偽情報に強い社会の実現を図るべきだ」とする一方、「1つの策で副作用なく100%解決するという手法は存在しない。常にもどかしさを覚えながら、表現の自由を確保しつつ、調整を図っていかなければならない」と指摘しました。

また、楊井さんは「フェイクニュースへの直接的な法規制は決して望ましくない。副作用が大きく、乱用の可能性もありえる。法規制によらずに、ファクトチェックを活性化する方向に向かってほしい。それを通じて誤情報に対する人々の免疫力が強まっていく可能性は十分ある」と述べました。

ネット上にあふれる情報の「量」と「質」を法律によって規制するべきなのかどうか。

また、規制をしたとしても実効性があるのか。
言論・表現の自由をどう確保するのか。国会での議論は今後も続きます。

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