沖縄本土復帰50年 岸田首相「基地負担軽減に全力」各党も談話

沖縄が本土に復帰してから15日で50年を迎えました。
沖縄では政府と沖縄県が共同で記念式典を開催し、岸田総理大臣が基地負担の軽減に全力で取り組むことを強調した一方、玉城知事は政府に対し、平和で豊かな沖縄の実現に向けて取り組むよう求めました。

沖縄の本土復帰50年を記念する式典は、政府と沖縄県が共同で沖縄県宜野湾市と東京 港区の2つの会場をオンラインで結んで同時に開催され、沖縄の会場には岸田総理大臣や玉城知事など合わせて781人が出席しました。
また、天皇皇后両陛下もお住まいの御所からオンラインで出席されました。

式典では、沖縄県の出身で、全盲のテノール歌手として知られる新垣勉さんが国歌を独唱しました。

このあと、岸田総理大臣は、沖縄が本土復帰50年を迎えたことについて「戦争によって失われた領土を外交交渉で回復したことは史上まれなことであり、日米両国の友好と信頼により可能となったものだ。この50年、沖縄は着実に発展の歩みを進め、政府はその歩みを後押ししてきた。本日、沖縄の歩んだ歴史に改めて思いをいたし、沖縄県民のひたむきな努力に深甚なる敬意を表したい」と述べました。

一方、沖縄のアメリカ軍基地について「復帰から50年がたつ今もなお、沖縄の皆様には大きな基地負担を担っていただいている。政府として、重く受け止め、引き続き基地負担の軽減に全力で取り組んでいく」と述べました。

そして、再来年度以降に返還が予定されているアメリカ軍キャンプ瑞慶覧の「ロウワー・プラザ住宅地区」について返還に先立ち、緑地公園として利用できるよう、近く日米両政府で合意する見通しだとして、来年度中の利用開始に向けて必要な準備を進める考えを示し「これからも日米同盟の抑止力を維持しながら基地負担軽減の目に見える成果を一つ一つ着実に積み上げていく」と述べました。

そして「復帰から50年という大きな節目を迎えた今日、沖縄がアジア太平洋地域に、そして世界に力強く羽ばたいていく新たな時代の幕が開けたことを感じている。復帰から今日に至る沖縄県民のたゆまぬ努力と先人たちの尽力に改めて敬意を表するとともに、世界の平和と沖縄のさらなる発展を祈念する」と述べました。

一方、玉城知事は、この50年の沖縄の歩みについて「1972年からの5次にわたる沖縄振興計画等により、社会基盤の整備等によって本土との格差は縮小され、社会経済は着実に進展した。しかしながら、1人当たり県民所得は全国平均の水準に達しておらず、自立型経済の構築はなお道半ばにあるとともに、子どもの貧困や離島における不利性、ぜい弱な産業構造など依然として克服すべき多くの課題が残されている」と述べました。

そして、沖縄のアメリカ軍基地をめぐり「復帰から50年たった現在も、わが国の国土面積の0.6%にすぎない沖縄県に全国の在日アメリカ軍専用施設面積の70.3%が集中し、アメリカ軍人・軍属による事件・事故、騒音、環境汚染等、県民は過重な基地負担を強いられ続けている」と指摘しました。

そのうえで政府に対し、沖縄の本土復帰の意義と重要性について国民全体の認識の共有を図るとともにすべての県民が真に幸福を実感できる平和で豊かな沖縄の実現に向けて取り組むよう求めました。

天皇陛下は「先の大戦で悲惨な地上戦の舞台となり、戦後も約27年間にわたり日本国の施政下から外れた沖縄は、日米両国の友好と信頼に基づき、50年前の今日、本土への復帰を果たしました。大戦で多くの尊い命が失われた沖縄において、人々は『ぬちどぅたから』(命こそ宝)の思いを深められたと伺っていますが、その後も苦難の道を歩んできた沖縄の人々の歴史に思いを致しつつ、この式典に臨むことに深い感慨を覚えます」と、おことばを述べられました。

そのうえで「沖縄には、今なお、さまざまな課題が残されています。今後、若い世代を含め、広く国民の沖縄に対する理解がさらに深まることを希望するとともに、今後とも、これまでの人々の思いと努力が確実に受け継がれ、豊かな未来が沖縄に築かれることを心から願っています」と述べられました。

東京会場では、アメリカのエマニュエル駐日大使があいさつし「先月、沖縄を訪問し、平和祈念資料館と平和祈念公園を訪れ、戦争がもたらす悲惨な犠牲を改めて実感した。だからこそ、両国とその国民は、何としても平和を守らなければならない」と述べました。

会場にはアメリカのバイデン大統領から寄せられたメッセージが展示され、この中でバイデン大統領は「アメリカ人と沖縄県民とのつながりは、アメリカと日本の関係を深化させるかけがえのない要素だ。アメリカと日本の関係の次の50年を見据える中、われわれが共有する歴史は次世代の教育と経済機会に投資すれば、あらゆることが可能になると強く思い出させてくれるだろう」としています。

本土復帰後も残る米軍基地 重い負担変わらず

沖縄では77年前、住民を巻き込んだ激しい地上戦で20万人を超える人が亡くなり、県民の4人に1人が命を落としました。

1952年、サンフランシスコ平和条約が発効して、日本は主権を回復しましたが、沖縄は切り離されました。

引き続きアメリカの統治下に置かれた沖縄は、いわゆる「銃剣とブルドーザー」と呼ばれる手法でアメリカ軍によって強制的に土地を接収され、基地建設が進められました。

沖縄返還協定が調印された1971年6月17日の時点で、沖縄には353平方キロメートルのアメリカ軍専用施設があり、これらの土地が返還されることが多くの住民たちの願いでした。

しかし、翌年1972年5月15日の本土復帰までに返還されなかったアメリカ軍専用施設は278平方キロメートル。

返還されたのは山奥の訓練場や憲兵の詰め所などにとどまり、79%はそのまま残されました。

現在は185平方キロメートルと復帰当時に比べて3分の2に減りましたが、国土面積の0.6%しかない沖縄に国内のアメリカ軍専用施設の70%が集中しています。

基地があることで起きる事件や事故、それに騒音被害などはあとをたたず、復帰から50年がたった今も沖縄の重い基地負担は変わっていません。

沖縄本土復帰50年 市民団体が基地の負担軽減などを訴え

沖縄が本土に復帰してから50年を迎えた15日、市民団体などが那覇市内で集会を開き基地の負担軽減などを訴えました。

集会は、市民団体や労働組合が、毎年、沖縄が本土復帰した5月15日に行う「平和行進」に合わせて開いているもので、那覇市の会場には主催者の発表でおよそ1000人が集まりました。

はじめに沖縄平和運動センターの上原邦夫共同代表が「復帰から50年たったが基地から派生する事件事故は後を絶たず、繰り返し基地の負担軽減を訴えてきたが、状況は深刻化している」などと訴えました。

このあと会場では「基地のない沖縄、平和な日本、戦争のない世界をつくるために力を尽くすことを誓う」などとする宣言が採択されました。

沖縄市から参加した30代の女性は「基地の不安もなく、楽しく暮らせるようになってほしい」と話していました。

沖縄 玉城知事 沖縄振興のための10年計画を岸田首相に手渡す

沖縄県の玉城知事は15日、岸田総理大臣に対し、新たにまとめた沖縄振興のための今後10年間の計画を手渡しました。
これに対し岸田総理大臣は、沖縄振興を国家戦略の1つと位置づけて積極的に推進していく考えを示しました。

岸田総理大臣は、沖縄の本土復帰50年を記念する式典の合間に玉城知事と会談し、県が新たにまとめた「沖縄振興計画」を受け取りました。

新たな計画は「『安全・安心で幸福が実感できる島』の形成」を基本的な指針として、子どもの貧困の解消や、離島や過疎地域の魅力ある生活環境づくり、それに世界から選ばれる持続可能な観光地の形成などを盛り込んでいます。

玉城知事は「本土復帰50周年という特別な日に沖縄県は新たな一歩を踏み出す。県民が望む将来像の実現に向けて、県民と一丸になり全力で取り組んでいく。一層の支援と協力をお願いしたい」と述べました。

これに対し岸田総理大臣は「沖縄県が地域の課題解決に取り組み、成長が続くアジアの玄関口に位置する地理的特性、日本一出生率が高いなどの優位性や潜在力を生かして、わが国全体の発展をけん引してもらうよう期待している」と述べました。

そのうえで「政府としても引き続き、沖縄の自立的発展と豊かな生活を実現できるよう、沖縄振興策を国家戦略の1つとして積極的に推進していきたい」と強調しました。

岸田首相 ”沖縄中南部の米軍施設 返還計画を着実に実行”

岸田総理大臣は、訪問先の沖縄県で記者団に対し、基地負担の軽減に向け、日米両政府が2013年にまとめた、嘉手納基地より南にあるアメリカ軍施設の返還計画を着実に実行していく考えを示しました。

この中で岸田総理大臣は、アメリカ軍普天間基地の名護市辺野古への移設計画について「日米同盟の抑止力と普天間飛行場の危険な状況を考え合わせたとき、辺野古への移設が唯一の解決策だ。1日も早い全面返還に向けて努力をしなければならない」と述べました。

そして「今後、計画に基づいて、跡地利用の潜在力の可能性が高い県中南部の土地の返還を一つ一つ結果を積み上げていく。こうした努力を続けていきたい」と述べ、日米両政府が2013年にまとめた、嘉手納基地より南にあるアメリカ軍施設の返還計画を着実に実行していく考えを示しました。

また岸田総理大臣は、日米地位協定の見直しの必要性について問われたのに対し「日米地位協定は膨大な法体系であり、具体的な課題に迅速・的確に対応するために具体的に何をするべきなのか、今後も絶えず検討していかなければならない。そうした方針で今後も地位協定の在り方を考えていきたい」と述べました。

各党から声明・談話

沖縄が本土に復帰して15日で50年になることを受け、各党は声明や談話を発表しました。

自民党「振興策を国家戦略として推進」

自民党は「沖縄は地理的特性や自然環境などの優位性と潜在力を有し、日本のフロントランナーとして経済再生のけん引役となる大きな可能性を秘めている。政府・与党として、引き続き力強い沖縄経済の実現に向け、産業発展や基地跡地の利活用、人材育成などの振興策を国家戦略として推進していく」などとする声明を発表しました。

また、声明では「戦後77年を経てなお、沖縄に多くの米軍施設が集中し、大きな負担となっている事実を重く受け止めなければならない。負担軽減については『できることは全て行う』との姿勢で、1つ1つ着実に取組みを進め、目に見える成果を挙げていく」としています。

立憲民主党「県民の願いを忘れず、真摯に向き合う」

立憲民主党の泉代表は「沖縄は県民のたゆみない努力により現在の発展を遂げた一方で、全国最下位の県民所得など数多くの課題が残されている。復帰にかけた県民の願いを忘れることなく、課題に真摯に向き合っていく」などとする談話を出しました。

また、談話では「沖縄にアメリカ軍基地が集中している状態が変わらないままで、県民に過大な負担をかけていることはざんきに堪えない。沖縄の基地問題を日本国民全体で考え、負担軽減に全力を注ぐことを改めて誓う。また、締結後一度も見直されていない日米地位協定の抜本改定を目指す」としています。

公明党「沖縄振興策と福祉 子育て支援策の充実取り組む」

公明党は「将来にわたり『平和で豊かな沖縄』を実現していくため、コロナ禍で傷んだ観光・経済の立て直し、本島と離島との格差や子どもの貧困などの課題に真正面から向き合い、より一層の沖縄振興策と福祉・子育て支援策の充実、平和創出拠点としての発展に全力で取り組んでいく」などとする声明を発表しました。

また、声明では「在日アメリカ軍施設の多くが沖縄に集中している状況はいまなお続いており、基地負担の軽減に向け県民の声を受け止めながら着実な取り組みを進めるとともに、これからも非核三原則を強く堅持していく」としています。

日本維新の会「平和と発展のために全力」

日本維新の会の松井代表は「豊かな沖縄の創造と一層の発展に向けて、自立した強い沖縄経済の構築が求められる。沖縄県民の思いに寄り添いながら、沖縄の平和と発展のために全力を尽くしていく決意である」などとする談話を出しました。

また、談話では「在日アメリカ軍基地が沖縄に偏在している問題は、日米両政府が真摯に対話を重ね訓練場所などの暫定的移転を含む合意可能な新たな基地負担軽減策を示していく必要がある。日米地位協定の抜本的な見直しは、日米が対等の立場にある同盟関係を維持するためにも不可欠であり、喫緊の課題だ」としています。

国民民主党「県民と連携して国会と政府を動かしていく」

国民民主党の玉木代表は「大陸や海洋の多種多様な文化を融合し、成熟させてきた沖縄の独自性はかけがえのない財産だ。沖縄らしさを活かせる振興計画の推進に取り組み、沖縄の抱える課題解決と沖縄の発展に向けて、県民と連携して、国会と政府を動かしていく」などとする談話を出しました。

また、談話では「沖縄には今なお、アメリカ軍基地が集中し、過大な負担がかかっている。日本の安全保障環境が厳しさを増す中、日米安全保障体制の重要性を踏まえつつ、日米地位協定の見直し、沖縄の基地役割軽減に向けて今後とも努力を続ける」としています。

共産党「今後のたたかいに生かす決意を新たにする」

共産党の志位委員長は「基地のない平和で豊かな沖縄をめざす県民のたたかいは、さまざまな逆流や曲折を経ながらも着実に発展している。『島ぐるみ』で声を上げ続け、本土が固く連帯するならば、必ず政治を動かすことはできるという復帰闘争の教訓を、今後のたたかいに生かす決意を新たにする」などとする談話を出しました。

また、談話では「岸田政権は新たな巨大なアメリカ軍基地の建設を押しつけ、平和憲法そのものを壊そうとしている。沖縄県民の復帰に込めた願いに背く2つの重大な逆行を絶対に許さない立場で頑張り抜く決意を表明する」としています。

れいわ新選組「沖縄のこれから 建議書の理念を体現するものに」

れいわ新選組は「沖縄県が発表した建議書では自立型経済の構築や『基地のない平和の島』の実現など、沖縄の自立・自己決定に重きが置かれており、沖縄のこれからの歩みがこの理念を体現するものとなることを願っている」などとする談話を出しました。

また、談話では「アメリカ軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画を巡り、政府は沖縄県による不承認処分を取り消したうえ、埋め立て計画を承認するよう県に対して命じる是正指示を出した。沖縄県の自己決定権を踏みにじり、圧力をかけ続ける政府の暴虐な姿勢を強く非難する」としています。

社民党「沖縄を再び戦場とすることがあってはならない」

社民党の服部幹事長は「沖縄県は政府に基地問題の早期解決を求める新たな建議書を決定し、岸田総理大臣に手渡した。日米両政府はこうした訴えを真摯に受け止めるべきだ。沖縄を再び戦場とすることがあってはならないことを強く訴えたい」などとする談話を出しました。

また、談話では「政府はアメリカ軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を強引に進めているが、普天間飛行場の『返還』の代償として辺野古の海を埋め立てた巨大基地を建設・提供するのではまったく本末転倒で、ただちに計画を撤回するべきだ」としています。

NHK党「関係者に心より敬意を表する」

NHK党の立花党首は「アメリカ統治下の時代を経て本土復帰を果たした頃の沖縄は言葉では表現し難いほどの状況であったと思う。その後、本土復帰からの沖縄は、関係者の努力によって素晴らしい発展を遂げた。関係者に心より敬意を表する」などとする談話を出しました。

また、談話では「沖縄はアメリカ軍基地などの社会的な問題、全国最下位と言われている一人当たりの県民所得や厳しい状況にある子どもの貧困など、なお解決すべき課題を抱えている。今後も沖縄固有の諸問題に対して国会で真摯に向き合っていく」としています。