経済安全保障法が成立 国に新たな権限付与

経済安全保障の強化を図る新たな法律が、5月11日の参議院本会議で自民・公明両党や立憲民主党などの賛成多数で可決・成立しました。
法律には、国民生活に欠かせない重要な製品が安定的に供給されるよう国に新たな権限を与えることなどが規定されていて、今後、運用の在り方が焦点となります。

経済安全保障の強化を図る新たな法律は、11日の参議院本会議で採決が行われた結果、自民・公明両党や立憲民主党、日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決・成立しました。

新たな法律には、半導体や医薬品など国民生活に欠かせない重要な製品「特定重要物資」が安定的に供給されるよう、企業の調達先を調査する権限を国に与えることや、サイバー攻撃を防ぐため、電力や通信といったインフラを担う大企業が重要な機器を導入する際に、国が事前審査を行えるようにすることが規定されています。

また、軍事に関わる技術の中から国民の安全を損なうおそれのあるものは、特許の出願を非公開にできる制度なども盛り込まれ、実効性を保つため罰則も設けられています。

一方、経済界などから自由な経済活動への制約につながりかねないという懸念があったことも踏まえ、審議が行われた衆参両院の内閣委員会では「特定重要物資」を指定する場合には、関係する事業者や団体の意見を考慮するなどとした付帯決議が採択されました。

法律は近く公布され、ことし秋には、政府が制度の要点などを盛り込んだ「基本方針」を策定したうえで、それぞれの制度ごとに段階的に施行されることになっていて、今後、運用の在り方が焦点となります。

小林経済安保相「早期施行に向け準備加速したい」

法律が成立したことを受け小林経済安全保障担当大臣は記者団の取材に対し、「いかなる状況にあっても、国民の命と暮らしを経済面から守り抜くための重要な一歩を踏み出せたと感じている。経済活動の自由とのバランスを図っていくためにも予見可能性をしっかりと担保し、企業の負担を軽減していくことを意識しながら、早期の施行に向けて体制面の整備も含め、準備を加速していきたい」と述べました。

経団連 十倉会長「重要技術の開発などの進展に期待」

経団連の十倉会長は「経済活動の自由を維持しながらサプライチェーンの強じん化や基幹インフラの安全性と信頼性の確保、産官学による先端的な重要技術の開発などが進展することを期待する。今後打ち出される政策が経済活動の実態に即した実効性のあるものとなるよう、必要な情報の共有を政府に求めていく」などとするコメントを発表しました。

経済同友会 櫻田代表幹事「規制や支援の対象を明確に」

経済同友会の櫻田代表幹事は「事業者の自主性を尊重することなどが付帯決議に盛り込まれたことを評価したい。施行に向けては、政令による特定重要物資の対象分野の指定などが行われるが、法律の目的を損なわない範囲で規制や支援の対象を明確にし、裁量によって適用範囲が拡大する余地を排除すべきである」などとするコメントを発表しました。

松野官房長官「重要な一歩だと認識」

松野官房長官は午前の記者会見で、「法律は分野横断的、かつ法制上の手当てが必要な喫緊の課題に対応するためのものだ。具体的にはサプライチェーンの強じん化に資する重要物資の安定供給確保をはじめとする必要な経済施策を整備するもので、わが国の経済安全保障の確保に向けた重要な一歩だと認識している。引き続き、経済安全保障担当大臣が中心となり、関係省庁と緊密に連携をしながら経済安全保障の確保のための施策をしっかりと推進していきたい」と述べました。

公明 山口代表「法律の運用は極めて重要 目を光らせる」

公明党の山口代表は、党の参議院議員総会で「日本の国益をどう守り、世界の安定をどう作り出すかに関わる新たな法律になる。これからの法律の運用は極めて重要になるので、目を光らせ、国益や国際社会の安定に寄与するよう導いていかなければならない」と述べました。

維新 藤田幹事長「引き続き注視し議論喚起」

日本維新の会の藤田幹事長は、記者会見で「われわれが危惧してきたことは、法律の実効性をいかに担保するかということだ。今後は、罰則規定をどの程度盛り込めるか、引き続き注視するとともに、議論を喚起していきたい」と述べました。

共産 穀田国対委員長「審議は非常に不十分」

共産党の穀田国会対策委員長は記者会見で「経済の自主性や学問の自由など、さまざまな重要な問題がある法案にもかかわらず、審議は非常に不十分だった。アメリカと中国の対立のもとで『経済安全保障』という新しい概念が利用されて、日本の経済の自主性などにさまざまな形で問題が出てくるだろう」と述べました。

国民 古川国対委員長「今回の法律の成立は第一歩だ」

国民民主党の古川国会対策委員長は記者会見で「経済安全保障という考え方のもと、国民生活を守るために必要なものは、なるべく自給できる体制をつくることの重要性は認識しているので賛成した。ただ『特定重要物資』の対象はより幅広い分野に拡大させていくべきで、今回の法律の成立は第一歩だ」と述べました。