首相 物価上昇への緊急対策 4月末までのとりまとめ指示

ウクライナ情勢に伴う物価の上昇を踏まえ、岸田総理大臣は閣僚懇談会で4月末までに緊急対策をまとめるよう関係閣僚に指示しました。

岸田総理大臣は29日の閣僚懇談会でウクライナ情勢に伴う物価の上昇をめぐり「原油や穀物の国際価格が高い水準で不安定に推移するとともに、一部の水産物などの安定供給に懸念が生じている。国民生活や経済活動に重大な影響を及ぼし、社会経済活動の順調な回復の妨げになるようなことは避けなければならない」と指摘しました。

そのうえで
▽原油高騰対策
▽小麦などの価格上昇に伴う食料品や飼料などへの対策
▽原油高や新型コロナの影響を受けた中小企業の資金繰り支援
それに
▽厳しい生活を余儀なくされている人への支援を
4つの柱として緊急対策を策定する考えを示しました。

そしてみずからのもとに関係閣僚会議を設置し、山際経済再生担当大臣を中心に与党とも十分連携しながら来月末までに緊急対策をまとめるよう関係閣僚に指示し、財源は新年度予算の予備費でまかなう方針を示しました。

官房長官「十分な効果発揮できる対策の取りまとめに尽力」

松野官房長官は閣議のあとの記者会見で「岸田総理大臣の指示を踏まえ関係省庁一体となって速やかに取りまとめていきたい」と述べました。

また記者団が「年金生活者らを支援する5000円の給付金や『トリガー条項』の凍結解除を盛り込むことも検討するのか」と質問したのに対し「『トリガー条項』は自民・公明両党と国民民主党の3党の協議を踏まえ対応を検討していく。5000円給付は、その必要性を含め、しっかり検討していく」と述べました。

さらに記者団が「予備費にはかぎりがあるが対策はどのくらいの規模感を考えているのか」と質問したのに対し「関係省庁における検討などを踏まえ効果的な施策を吟味した結果として規模感が決まってくる。施策の中身が重要であり直面する危機に機動的に対応すべく、十分な効果を発揮できる対策の取りまとめに尽力していきたい」と述べました。

萩生田経済産業相「影響最小化するよう具体的検討進める」

萩生田経済産業大臣は閣議のあとの記者会見で国民生活への影響を最小化するため原材料の調達先の多様化や中小企業の資金繰り支援の強化などに取り組む考えを示しました。

この中で萩生田経済産業大臣は物価上昇を踏まえた緊急対策について「国民生活や経済活動への影響を最小化するよう具体的な検討をしっかり進めていきたい」と述べました。

そして具体的にはエネルギーや原材料などの安定供給に向けた調達先の多様化や物価の高騰に対応するため、中小企業が上昇したコストを販売価格に転嫁しやすい環境をつくること、さらに中小企業への資金繰り支援の強化に取り組む考えを示しました。

ガソリンなどの小売価格の上昇を抑えるための石油元売り会社に支給する補助金については政府はすでに来月末まで延長することを決めています。

萩生田大臣は「さらに高騰し続けた場合の対応について現在講じている措置の効果も見極めつつ、あらゆる選択肢を排除することなく検討する」と述べました。

山際経済再生相 “今後 首相のもとに関係閣僚会議設置”

山際経済再生担当大臣は閣議のあとの記者会見で「新型コロナについては第6波の出口がはっきりと見えてきたところだが、医療体制を維持強化するとともに安全安心を確保しながら経済社会活動の正常化を図っていく必要がある。そうした中でウクライナ情勢などを受けた原材料価格の高騰などが国民生活や経済活動に重大な影響を及ぼし、順調な回復の妨げになることは避けなければならない」と述べました。

そのうえで「今後、岸田総理大臣のもとに関係閣僚会議を設置し私を中心に関係省庁と連携し与党の意見もよく聴きながら具体策の検討を進めていく。新たな財政措置を伴うものについてはまずは予備費を活用した迅速な対応を優先する」と述べました。

自民 茂木幹事長「緊急対策は予備費活用しすぐに実施を」

自民党の茂木幹事長は記者会見で「原油価格の高騰や物価上昇が大きな課題となっており、国民生活の安心や安全を確保するため党としても政務調査会を中心にさっそく検討に入りたい」と述べました。

一方、公明党が、補正予算案の編成も含む、十分な財源の確保を求めていることについて「緊急対策はすぐに実施しなければならず、新年度予算の予備費を活用して迅速かつ機動的に対応していく。そのあとの対応策は、ウクライナ情勢も含め、国際経済や日本経済がどうなるかを考え、少し長いスパンで考えることになる」と述べ、補正予算案の必要性は中長期的な視点で検討することになるという認識を示しました。

国民 玉木代表「4月中では遅すぎる」

自民・公明両党と政策協議を行っている国民民主党の玉木代表は記者会見で「このままいくと戦後最悪の『スタグフレーション』に陥る可能性があり対策の取りまとめは4月中では遅すぎで、今週中か来週中にも講じる必要がある。党の経済対策を近々岸田総理大臣に提言したい」と述べました。

また原油価格の高騰対策については「政府は石油元売り会社への補助金の引き上げを来月末まで1か月延長したが、それだけでは不十分で『トリガー条項』の凍結解除も必要だ。今月中に方針をしっかり定められるよう3党の政策協議を急がせたい」と述べました。

自民党 4月中旬めどに新たな経済対策を提言へ

ウクライナ情勢に伴う物価の上昇を踏まえ、岸田総理大臣が29日、新たな経済対策の取りまとめを指示することを受けて、自民党は28日の役員会で、来月中旬をめどに党としての提言をまとめる方針を確認しました。

岸田総理大臣は、28日夕方開かれた自民党の役員会で、「原油、原材料、食材価格の高騰といった経済状況を踏まえ、29日の閣僚懇談会で緊急対応策の策定を指示する予定だ。党内でダイナミックな議論をけん引してもらいたい」と述べ、新たな経済対策に向けて、党内で活発な議論を行うよう要請しました。

これを受けて高市政務調査会長が、「党の経済成長戦略本部を中心に、来月中旬を目指して議論を行っていきたい」と述べ、来月中旬をめどに、党としての提言を取りまとめる方針を確認しました。

このあと茂木幹事長は記者会見で「長引くコロナ対応やウクライナ情勢の緊迫化により、原油価格の高騰や物価上昇が大きな課題となっている。国民生活の安心・安全を確保するため、早速検討に入りたい」と述べました。

公明「トリガー条項」凍結解除や補正予算案の編成など申し入れ

新たな経済対策をめぐり、公明党は、政府に対し、原油高騰対策として「トリガー条項」の凍結解除や、補正予算案の編成も含めた財源確保などを申し入れました。

ウクライナ情勢に伴う物価の上昇を踏まえ、岸田総理大臣が29日に新たな経済対策の取りまとめを指示するのを前に、公明党の石井幹事長らは28日、総理大臣官邸で、岸田総理大臣と会談し、緊急提言を申し入れました。

この中では、原油高騰対策として、石油元売り会社への補助金の拡充に加え、ガソリン税の上乗せ部分の課税を停止する「トリガー条項」の凍結解除を求めています。

また、小麦など穀物の価格上昇の影響を緩和する対策や、中小・小規模事業者の資金繰りの強化などを盛り込んでいて、新年度の補正予算案の編成を含め、十分な財源を確保するよう求めています。

岸田総理大臣は「提言を重く受け止め、対応を検討したい」と応じるとともに、「トリガー条項」については、自民・公明両党と国民民主党の実務者による協議を見守りたいとして、来月中の結論に期待を示しました。

会談のあと、公明党の石井幹事長は記者団に「今後、追加の提言も行いたい。今国会は提出法案の数も絞っているので、補正予算案の審議も、時間をひねり出せるのではないか」と述べました。