名護市長選 自公が推薦
現職の渡具知武豊氏 再選

アメリカ軍普天間基地の移設計画への対応などが争点となった沖縄県名護市の市長選挙は、自民党と公明党が推薦した現職の渡具知武豊氏が、移設計画の中止を訴えた新人を抑え、2回目の当選を果たしました。

名護市長選挙の開票結果です。

▽渡具知武豊、無所属・現。当選。1万9524票。
▽岸本洋平、無所属・新。1万4439票。

自民党と公明党が推薦した現職の渡具知氏が、立憲民主党、共産党、れいわ新選組、社民党、地域政党の沖縄社会大衆党が推薦した新人の岸本氏を抑え、2回目の当選を果たしました。

渡具知氏は名護市出身の60歳。

名護市議会議員を務めたあと、前回4年前の市長選挙で初当選しました。

アメリカ軍普天間基地の名護市辺野古への移設をめぐり、国と沖縄県との対立が続く中で行われた今回の選挙戦で、渡具知氏は「国と沖縄県の争いの推移を見守る」という立場をとる一方、1期目で実現した給食費や子どもの医療費の無償化などの実績を強調しました。

渡具知氏は「子育て支援政策など4年間の市政運営が評価されたのではないか。普天間基地の移設計画ついては県と国が裁判を繰り返している中で、市長としては推移を見守るしかないという姿勢は変わっていない」と述べました。

一方、新人の岸本氏は、玉城知事から全面的な支援を受けて移設計画の中止を訴えましたが、及びませんでした。

今回の選挙の投票率は68.32%で、前回4年前を8.6ポイント下回り、これまでで最も低くなりました。

渡具知氏は「正直言って大変うれしい。子育て支援政策など4年間の市政運営が評価されたのではないかと思う」と述べました。
その上で、普天間基地の移設計画について、「県と国が裁判を繰り返している中で、市長としては推移を見守るしかないという姿勢は4年前と変わっていない」と述べました。
新人の岸本氏は「子育て支援やまちづくりなどについて私の訴えが明確に伝わったかどうかが心残りだ。私の力が足りなかった」と述べました。
その上で、普天間基地の移設計画について、「選挙戦を通して辺野古の新基地問題について市民の思いは反対であったと受け止めている」と述べました。
支援した岸本氏が敗れたことを受けて沖縄県の玉城知事は、「私たちの力不足でこのような結果になったのは残念だ」と述べました。
その上で、普天間基地の移設計画について、「相手候補を応援した人の中にも、辺野古への移設に反対だと思っている人はいたかと思う。私はこの選挙結果に何か懸念を持ったわけではなく、反対する思いは1ミリもぶれていない」と話していました。

自民 茂木幹事長「いまの政権の高い支持率がプラスに」

自民党の茂木幹事長は、党本部で記者団に対し「大きな勝利だ。ことしは参議院選挙があり、沖縄では秋に知事選挙を控えている選挙イヤーだ。大切な最初の選挙であり、良いスタートを切ることができた」と述べました。
また、勝因について「いまの政権の高い支持率がプラスに働いた。一方、相手陣営は、『オール沖縄』という共産党も含めた枠組みで、これまで実績も積み重ねてきたが、共産党と連携することに対する違和感も大きく広がったのではないか」と述べました。

自民 世耕参院幹事長「政府・与党の取り組みが評価された結果」

自民党の世耕参議院幹事長は「これまでの政府・与党の説明や取り組みが評価された結果で良かった。地方選挙といえども、大きな勝利で、夏の参議院選挙に向けて大きなステップになった」と述べました。

自民 遠藤選対委員長「業績が評価された」

自民党の遠藤選挙対策委員長は、NHKの取材に対し「現職がこれまで4年間進めてきた業績が、市民に評価されたということだ。また、自民・公明両党が安定した政権をつくり、コロナ禍で傷んだ経済の回復に取り組んでいることも評価されたのではないか。夏の参議院選挙など、今後続く選挙にもプラスになった」と述べました。

公明 高木選対委員長「自公が力を合わせた結果」

公明党の高木選挙対策委員長は「公明党と自民党が力を合わせて押し上げた結果であり、渡具知氏の実行力、行政手腕が評価された。今後は、新型コロナウイルスへの対応と市勢発展が大きな課題となる。県政や国政と連携しながら、全力を挙げて取り組んでいただくことを期待したい」というコメントを発表しました。

立民 大西選対委員長「野党勢力の主張 一定の評価」

立憲民主党の大西選挙対策委員長は「党として全力で支援を行ったが、新型コロナの感染拡大で役員の派遣ができず、陣営の活動も制限されたことは大変痛手だった。現職にあと一歩のところまで迫れたことはオール沖縄を中心とする野党勢力の主張が一定の評価を得られたことと受け止め、引き続き、参議院選挙や沖縄県知事選挙に向け、一丸となって戦う準備を進めていく」というコメントを出しました。

共産 小池書記局長「新基地建設を強行することは許されない」

共産党の小池書記局長は、記者団に対し「現職は係争を見守るとして、最後まで新基地建設推進の姿勢を隠した。今回の選挙結果を受けて、政府は新基地建設が容認されたなどとして、建設を強行することは許されないということを強調しておきたい。沖縄では今後も大事な選挙が続くので、日米地位協定の抜本改定、新基地建設ストップのために全力を尽くしていく」と述べました。

れ新 山本代表「新基地問題からいつまでも目をそらさずに」

れいわ新選組の山本代表は「残念だ。渡具知氏には、子どもたちに負の遺産となる新基地問題からいつまでも目をそらさず、名護の住民の皆さんの将来を見据えた市政運営を期待したい」というコメントを発表しました。

社民 服部幹事長「辺野古争点はずしの戦術などに一歩及ばず」

社民党の服部幹事長は「現職陣営による辺野古争点はずしの戦術や、自公政権による予算を使った懐柔策などの前に一歩及ばなかった。辺野古移設については、県民投票の意思や地方自治を踏みにじり、軟弱地盤の上に強行しようとする実現性のない無謀な計画であり、断念すべきだ」というコメントを出しました。

政府高官「市民が生活者の視点を第一に投票先を選んだ結果だ」

政府高官は、NHKの取材に対し「名護市民が、地域振興など生活者の視点を第一に投票先を選んだ結果だと受け止めている。渡具知氏の4年間の実績が評価されたことも大きかったのではないか。政府としては、今後とも地域振興や新型コロナ対策、それに基地負担の軽減に向けた取り組みなどに、沖縄の皆さんの声をしっかりと聴きながら対応していきたい」と述べました。

政府関係者「移設計画進める上で現職が勝利してよかった」

政府関係者はNHKの取材に対し「辺野古への移設計画を進める上で、意見交換のできる関係を築いている現職が勝利してよかった。激戦を制したという意味では、参議院選挙や沖縄県知事選挙に向けて、さい先のよいスタートになったのではないか」と述べました。

防衛省幹部「移設工事を着実に進めていかなければならない」

防衛省幹部はNHKの取材に対し「率直にほっとしている。辺野古への移設工事を着実に進めていかなければならない。沖縄の基地負担軽減のため、今後も、普天間基地の1日も早い全面返還という政策目標のため、地元の皆さんの理解を得る努力を続けたい」と述べました。