“中国の台湾への軍事的冒険
は経済的自殺への道”

中国が台湾への軍事的な圧力を強めていることについて、自民党の安倍元総理大臣は「軍事的冒険は経済的自殺への道だ」と指摘し、習近平国家主席ら中国の指導部に対し、関係国で連携して自制を求めていくべきだという考えを強調しました。

自民党の安倍元総理大臣は、台湾の民間の研究機関が開いた会合にオンラインで出席し、台湾をはじめとする地域情勢について講演しました。

この中で、安倍氏は中国が軍事費を拡大させ、台湾への圧力を強めていることに強い懸念を示したうえで、「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある。この点の認識を習近平国家主席は、断じて見誤るべきではない」と指摘しました。

そして、「日本と台湾、民主主義を奉じるすべての人々は、習主席と中国共産党のリーダーたちに『誤った道に踏み込むな』と訴え続ける必要がある。軍事的冒険は経済的自殺への道でもあり、台湾に軍事的冒険をしかけた場合、世界経済に重大な影響を及ぼし、中国は深手を負うことになる」と強調しました。

また、安倍氏は台湾によるTPP=環太平洋パートナーシップ協定への参加やWHO=世界保健機関の会合への参加を支持する考えを示しました。

安倍元首相発言に中国抗議

中国外務省によりますと、1日夜、華春瑩次官補が北京駐在の垂秀夫大使を呼び、安倍氏の発言に抗議しました。

華次官補は「安倍元総理大臣の台湾問題をめぐる極めて誤った発言は、中国の内政に乱暴に干渉し、中国の主権を公然と挑発している。断固として反対する」などと述べたということです。

一方、北京の日本大使館によりますと、垂大使は、台湾をめぐる状況についての日本国内の考え方を中国としても理解する必要があると指摘したうえで「中国側の一方的な主張は受け入れられない」と反論したということです。

中国外務省が垂大使を呼んで抗議したと公表したのは、ことし4月以来で、中国側は、元総理大臣の安倍氏の発言に神経をとがらせています。

また汪報道官は「いかなる人であろうと、国家の主権と領土を守るという中国人民の強い決意と強大な能力を見くびってはならない。中国人民のゆずれない一線を越えようとするならば、必ずやみずから頭をぶつけて血を流すことになるだろう」と警告しました。

松野官房長官「しかるべく反論」

松野官房長官は、2日午前の記者会見で「昨夜、北京で、中国側から垂中国大使に対する申し入れを受けたのに対し、垂大使から、わが方の立場に基づき、しかるべく反論した。垂大使からは、政府を離れた方の発言のひとつひとつに政府として説明する立場にないこと、台湾をめぐる状況について日本国内にこうした考え方があることは中国として理解をする必要があること、中国側の一方的な主張は受け入れられないことなどを、述べたところだ」と述べました。