首相 困窮学生に10万円
GoTo再開「感染状況見極め」

第2次岸田内閣の発足を受けて岸田総理大臣は10日夜、記者会見し、新型コロナ対策で18歳以上の希望するすべての人が3回目のワクチン接種を受けられるようにするとともに、数十兆円規模の新たな経済対策を策定し働く人の賃上げに全力を挙げる考えを強調しました。

丁寧で寛容な政治を

冒頭、岸田総理大臣は「先の総選挙では岸田政権にわが国のかじ取りを引き続き担うようにとの民意が示された。国民の信頼と共感を得ながら丁寧で寛容な政治を進めていく以外に国民からの信任を保つ道はない」と述べ、今後スピード感をもって政策を実行に移す考えを強調しました。

12月から3回目ワクチン接種開始

そして新型コロナウイルスへの対応が引き続き最優先の課題だとして
▽今月中にことしの夏に比べ3割多いおよそ3万5000人が入院できる医療体制を整備する考えを明らかにしました。

また
▽軽症者向けの宿泊療養施設を増加させるとともに
▽すべての自宅や施設で療養する人たちに健康観察や診療を実施できる体制を確保する方針を示しました。

さらに専門家の意見も踏まえて
▽来月から3回目のワクチン接種を開始し、2回目の接種完了からおおむね8か月以降のタイミングで18歳以上の希望するすべての人が接種を受けられるようにするほか
▽12歳未満についても薬事承認ののちに接種を開始すると説明しました。

また
▽軽症者向けの飲み薬は今後の切り札だと指摘し年内の実用化を目指し、薬事承認が行われれば速やかに60万回分を医療現場に提供しさらに100万回分を確保する方針を示しました。

そして「これまでの新型コロナ対応を徹底的に検証し、来年6月までに司令塔機能の強化も含めた感染症危機管理の抜本的強化策を取りまとめる」と述べました。

子育て世帯や困窮学生に10万円支給

一方、来週19日に決定する新たな経済対策について数十兆円規模になると説明し「年内のできるだけ早期に今年度の補正予算案を成立させ国民に一刻も早くお届けする」と述べました。

そして
▽子育て世帯に対し年収960万円の所得制限を設けたうえで、現金とクーポンで合わせて10万円相当の給付を行うほか
▽非正規で働く人など経済的に困窮している世帯や厳しい経済状況の学生に10万円を支給する考えを示しました。

このほか
▽事業者向けの給付金について去年の持続化給付金並みの支援を事業規模に応じて行い、来年3月までの5か月分を一括で給付する方針を示しました。

また岸田総理大臣はみずからが掲げる「新しい資本主義」について「成長のための投資と改革を大胆に進め、成長の果実を国民一人一人に実感していただきたい。新しい分配の仕組みをつくり動かしていく」と述べました。

そして
▽科学技術立国を目指して10兆円規模の大学ファンドを今年度内に創設するほか
▽経済安全保障の観点からサプライチェーンの強じん化や基幹となるインフラの信頼性を確保するための法案の国会提出に向けた準備を加速する考えを示しました。

さらに
▽デジタルを活用した地域活性化への交付金を大規模に展開し
▽来年の通常国会に自動運転による自動配送サービスを可能とする法案を提出する方針を明らかにしました。

また分配の強化に取り組むとして給与を引き上げた企業に対し税額の控除率を大胆に引き上げるなど、制度を抜本的に強化する考えを強調し「私が労使の代表と向き合い賃上げを促していく」と述べました。

さらに
▽人への投資を強化するため働く人たちがデジタルなどの新しい時代のスキルを身につけられるよう「3年間の施策パッケージ」を設け、予算を大胆に投入する考えを明らかにしました。

このほか
▽看護、介護、保育・幼稚園などで働いている人たちの給与を増やすための検討を進め新たな経済対策で必要な措置を行い、前倒しで収入の引き上げを実現する考えを重ねて示しました。

早期にアメリカを訪問

また外交・安全保障政策をめぐっては
▽アメリカのバイデン大統領との首脳会談に向け、年内も含めできるだけ早期にアメリカを訪問する意向を示したほか
▽中国やロシアに対しきぜんとした外交を進める考えを強調しました。

さらに
▽北朝鮮による拉致被害者の1日も早い帰国を実現するため、条件をつけずキム・ジョンウン(金正恩)総書記と直接向き合う決意を示しました。

そして
▽国家安全保障戦略などの改定に向けてNSC=国家安全保障会議で徹底的に議論を行い、防衛力の強化に取り組むと説明しました。

このほか岸田総理大臣は自民党の総裁として党改革と憲法改正が重要な課題になるとして、憲法改正を進めるため党の体制を強化し国会で精力的な議論を進めるよう指示したことを明らかにしました。

成長と分配の好循環

岸田総理大臣は、成長と分配の好循環をどのように実現していくか問われたのに対し「赤字企業に対するさまざまな補助金についても賃上げを1つの条件にするなど民間の皆さんの協力を得られるよう、従来の取り組みにひとくふう、ふた工夫を加えることによって具体的な結果につなげていく」と述べました。

国際人権問題の担当補佐官設置

国際人権問題担当の総理大臣補佐官について「外交のみならずさまざまな課題において普遍的な価値や自由、民主主義とともに人権をしっかり重視しながら取り組みを進めていく基本的な方針は大変重要だ。人権の課題は外務省だけでなく法務省はじめさまざまな役所にまたがる課題で、補佐官にはしっかりと各省庁とも連携しながら全体を見つつあるべき政府の方針を考え、補佐してもらうことを期待している」と述べました。

Go Toトラベル再開「感染状況見極め」

「Go Toトラベル」の再開の見通しについて「より安心、安全な形の仕組みをしっかり考えていかなければいけない。仕組みを抜本的に見直したうえで、専門家の意見も聞きながら感染状況をしっかり見極めて時期を決めていきたい」と述べました。

また観光客の水際対策の緩和については「年内に実証実験、検証を行いながらタイミングをはかっていく」と述べました。

敵基地攻撃能力「現実的な議論を突き詰める」

いわゆる「敵基地攻撃能力」の保有や防衛費の増額をめぐる公明党との調整について「大事なことは国民の命や暮らしを守るために必要なものは何なのかという現実的な議論をしっかり突き詰めていくことだ。ミサイル防衛を考えても、超音速核兵器や変則軌道で飛来するミサイルの技術も急速なスピードで変化し進化している。何が必要なのかの議論をしっかり突き詰めることによって国民や公明党の皆さんの理解を得て順次、予算などに組み入れられるものは組み入れ結果を形にしていくという姿勢で臨んでいきたい」と述べました。

給付金 なぜ18歳までか?

また「18歳以下の子どもに対する給付は子育て世代に対する支援につながると思っている。『なぜ18歳までなのか』という声もあるやに聞いているが、支援策の中に大学生や専門学校生に10万円の給付を行うことも盛り込んでいる。18歳以上の方々に対する支援も盛り込んでいるという全体像をしっかり丁寧に説明することによって国民の皆さんに納得していただくよう努力を続けていかなければならない」と述べました。

賃上げ税制にバージョンアップ

賃上げに向けた具体策について「従来の賃上げ税制は人件費の総額に視点をあてて評価して控除を行う仕組みだったが、それでは一人一人の賃上げにはつながらない。人件費の総額ではなく一人一人の給与の平均の引き上げを評価して控除額をさらに大きくするというような形での賃上げ税制にバージョンアップすることで、より民間の協力を促すといった工夫を加えることによって具体的な結果に結び付けることが重要だ」と述べました。

憲法改正「党内体制 拡充できないか議論」

憲法改正について「衆議院選挙の結果も受け、より憲法改正について『しっかりと取り組んでいかなければいけない』という声は自民党内にも高まっていると受け止めている。党内で議論する従来の組織も大事だが、国会の議論ともしっかり連動し国民との対話も重視する形で党内の体制を拡充できないか議論している」と述べました。

そのうえで「国会の議論と国民の皆さんの憲法改正に対する理解の2つは車の両輪で両方がそろわないと憲法改正は実現しない。これからも国民との対話の中で国民の憲法改正に対する思いを盛り上げていただく工夫を党としても行っていくことは大事だ」と述べました。

気候変動対策「石炭火力に厳しい目」

気候変動対策に関連して「石炭火力に対する厳しい目があることはしっかり受け止めなければならない。アンモニアや水素といった最新の技術をしっかり活用することによって石炭火力の負の側面を抑えていく技術について説得力を高めていかなければ国際社会の十分な理解にはつながらず、努力しなければならない」と述べました。

そのうえで記者団が国のエネルギー政策の方針「エネルギー基本計画」を見直す考えはあるかと質問したのに対し「今の方針はすでに明らかにしているとおりで、しっかり進めていきたい」と述べました。