COP26 岸田首相が演説
途上国へ100億ドル追加支援

岸田総理大臣は気候変動対策の国連の会議COP26の首脳会合で演説し、2030年度の温室効果ガスの排出量を46%削減するなどとした日本の目標を説明しました。そのうえで、5年間で最大100億ドルの途上国への追加支援などを表明し「経済成長のエンジンであるアジア全体のゼロエミッション化を推進していく」と強調しました。

イギリスで開かれているCOP26の首脳会合で、岸田総理大臣は「気候変動という人類共通の課題に日本は総力を挙げて取り組んでいく決意だ」と述べたうえで、温室効果ガス削減の目標達成に向けて今後10年の取り組みが重要だと指摘し、高い野心を持って全力を尽くすよう各国に呼びかけました。

そして日本政府として、2050年の「カーボンニュートラル」を実現するため、2030年度の温室効果ガスの排出量を2013年度から46%削減することを目指し、さらに50%に向けて挑戦するとした目標を説明しました。

また、岸田総理大臣は、アジアを中心に途上国の脱炭素化を進めるため、石炭などの化石燃料による発電から再生可能エネルギーへの転換を推進するとして、1億ドル規模の事業を展開する考えを示しました。

さらに、先進国が途上国に年間1000億ドルを支援するとした目標に届いていない現状を踏まえ、これまで日本政府が表明した5年間で官民合わせて600億ドル規模の支援に加え、今後5年間で最大100億ドルの追加支援を行う用意があると表明しました。

そのうえで「これらの支援により、経済成長のエンジンであるアジア全体のゼロエミッション化を力強く推進していく」と述べました。

このほか、岸田総理大臣は自動車から出る温室効果ガスの削減に向け、次世代電池や水素などあらゆる技術を選択肢として追求することや、アメリカが主導する「メタン」の世界的な排出量を削減する取り組みに参加することなどを説明しました。

そして「われわれが気候変動に向き合うとき、誰一人取り残されることがあってはならない。日本は対策に全力で取り組み人類の未来に貢献していく」と強調し、脱炭素社会の実現に向けて世界をけん引していく決意を示しました。

岸田首相“質の高いインフラ投資の拡大が必要”

また、岸田総理大臣は、COP26に合わせて開かれているインフラ開発などに関する会合で演説し、新型コロナで打撃を受けた途上国などの復興に向け、さらなる貢献をしていく考えを強調しました。

この中で岸田総理大臣は「新型コロナウイルスは多くの命を奪い、世界経済に大きな打撃をもたらした」と述べ、新型コロナからのよりよい回復のため、各国の連携のもとで、質の高いインフラ投資を拡大させていく必要があると指摘しました。

そしてインフラへの投資にあたっては、気候変動を含む環境への配慮や強じん性が重要だとして、歴史的に数々の自然災害に直面し、防災・減災対策に取り組んできた日本が、これまで得られた経験や知見を活用し、途上国などにさらなる貢献をしていく考えを強調しました。

さらに、岸田総理大臣は「途上国が必要な支援を迅速に受け、それが途上国の自立的で持続的な成長につながる必要がある」と述べ、最大でおよそ64億ドルの円借款の提供を含め、途上国の資金需要への対応などで、世界を主導していく考えを示しました。

若者から「石炭火力発電廃止すべき」首相発言せず

COP26に出席した岸田総理大臣は、会場内に設けられた日本の気候変動対策の取り組みをPRするパビリオンを視察しました。

COP26の会場には各国がそれぞれの取り組みなどを紹介するパビリオンを設けていて、岸田総理大臣は2日、首脳会合で演説したあと日本のブースを視察しました。

ここには12の企業や団体がパネルや模型を展示し、岸田総理大臣は、企業の担当者などから工場などの排ガスから二酸化炭素の回収を行う技術や、海に浮いて稼働する浮体式洋上風力発電の仕組みなどについて説明を受けました。

岸田総理大臣は視察のあと歩いて移動する際、日本から参加している若者たちから「石炭火力発電を廃止すべきだ。気候変動対策に若者の声を取り入れてほしい」などと声をかけられましたが、発言はせず立ち去りました。

若者たちは外務省の担当者に岸田総理大臣宛ての手紙を渡したということで、大学3年生の時任晴央さんは「将来が気候変動によってどうなるのか、今のままでは不安です。本気の対策をお願いしたいです」と話していました。

COP26 岸田首相と米バイデン大統領 短時間の会談行う

岸田総理大臣は、日本時間の2日夜、アメリカのバイデン大統領と短時間、会談しました。

両首脳が対面で会談するのは初めてです。

会談で、両首脳は、日米同盟のさらなる強化や気候変動問題への対処、それに自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、日米で引き続き緊密に連携することなどを確認したということです。

総理大臣官邸のツイッターに両首脳の動画投稿

政府は2日午後10時すぎ、総理大臣官邸のツイッターなどに、岸田総理大臣がアメリカのバイデン大統領と短時間会談した際の動画を投稿しました。

動画には、両首脳が互いのひじを当ててあいさつする様子などが映されており「初の対面外交は米国バイデン大統領」というコメントが記載されています。

日英首脳会談 “脱炭素社会の実現”で連携へ

岸田総理大臣は、ジョンソン首相と会談し、日本の温室効果ガスの削減目標などを改めて説明して、脱炭素社会の実現に向けて連携して取り組む考えを伝えました。

気候変動対策の国連の会議、COP26の首脳会合に合わせて、岸田総理大臣は、イギリスのジョンソン首相とおよそ25分間、対面で初めて会談しました。

この中で、ジョンソン首相は「旧友であるフミオと会えて大変うれしい。衆議院選挙の直後に遠くまで来てもらい、地球に対するコミットメントを示していただいたことに感謝を申し上げたい」と述べました。

これに対し、岸田総理大臣は、日本の温室効果ガスの削減目標や、5年間で最大100億ドルの途上国への追加支援を行う用意があることなどを改めて説明し、「世界の脱炭素化をボリスとともにしっかりと主導していきたい」と述べ、脱炭素社会の実現に向けて連携して取り組む考えを伝えました。

そして「日本とイギリスの2国間関係もかつてない強固な関係にある。これをさらに進め『自由で開かれたインド太平洋』を強力に推進していきたい」と述べました。

また、岸田総理大臣は、国連のグテーレス事務総長、オーストラリアのモリソン首相に続き、ベトナムのファム・ミン・チン首相とも会談し、新型コロナウイルスからの回復や、ベトナムにある日系企業のサプライチェーンの正常化に向けて協力していくことなどを確認しました。

COP26 首脳会合終了 国際交渉本格化へ 協調し対策打ち出せるか

イギリスで開かれている気候変動対策の国連の会議「COP26」は、2日間にわたる首脳級の会合が終了しました。途上国から「カーボンニュートラル」の宣言が行われた一方、先進国からは資金面で支援する方針が示され、今後、本格化する国際交渉で各国が協調して対策を打ち出せるかが焦点となります。

「COP26」は、1日と2日に首脳級の会合が行われ、各国の首脳たち112人が演説を行いました。

このうち、これまで温室効果ガスの削減目標を明らかにしていなかったインドのモディ首相は、2070年までに排出量を実質ゼロにする考えを示しました。

このほか、ベトナムが初めて実質ゼロを目指すと表明するなど、途上国の首脳などが相次いで「カーボンニュートラル」を宣言しました。

インドのモディ首相は途上国や新興国の気候変動対策に向けて、先進国に、日本円で110兆円規模の資金拠出を求めたほか、中国の習近平国家主席は書面でメッセージを寄せ、先進国が途上国の対策も支援すべきだと強調しました。

一方で、アメリカのバイデン大統領は「われわれの気候変動問題への取り組みはことばではなく行動だ」と述べ、途上国の対策を促すための支援額を4倍に増やすことに言及したほか、日本やイギリスも追加支援の方針を示しました。

COP26では、今後、今月12日の会期末に成果文書を採択することを目指して国際交渉が本格化する見通しで、具体的な対策の議論の中で各国が協調して対策を打ち出せるかが焦点となります。

COP26 岸田首相 帰国の途に 温室効果ガス削減へ多くの課題

気候変動対策の国連の会議、COP26の首脳会合に出席するためイギリスを訪れていた岸田総理大臣は、日本時間の3日未明、帰国の途につきました。会合で説明した温室効果ガスの削減目標をめぐっては達成に向けて課題も多く、今後、実効性ある取り組みが求められることになります。

岸田総理大臣は、就任後初めての外国訪問として、気候変動対策の国連の会議、COP26の首脳会合に出席するため、日本時間の2日から3日にかけて、イギリス北部のグラスゴーを訪れました。

会合で、岸田総理大臣は、2050年の「カーボンニュートラル」を実現するため、2030年度の温室効果ガスの排出量を2013年度から46%削減することを目指し、さらに50%に向けて挑戦するとした目標を説明しました。

そして、アジアを中心に、途上国の再生可能エネルギーへの転換を後押しするほか、途上国に対し、最大100億ドルの追加支援を行う用意があると表明し、脱炭素社会の実現に向けて世界をけん引していく決意を示しました。

また、岸田総理大臣は、首脳会合に合わせてアメリカのバイデン大統領と短時間懇談したほか、イギリスのジョンソン首相やオーストラリアのモリソン首相、国連のグテーレス事務総長らと個別に会談し、日本時間の3日未明、帰国の途につきました。

岸田総理大臣が説明した2030年度の温室効果ガスの削減目標をめぐっては、再生可能エネルギーへの転換のあり方などで課題も多く、達成は容易ではないという指摘もあり、今後、実効性ある取り組みが求められることになります。

「日本の存在感を示すことができた」

岸田総理大臣は記者団に対し「『2050年カーボンニュートラル』への日本の強い決意と、アジア、さらには世界の脱炭素化に向けた、わが国の新たなイニシアチブを世界に発信した」と述べました。

そのうえで「アメリカのバイデン大統領やイギリスのジョンソン首相、国連のグテーレス事務総長をはじめ各国から高い評価をいただき、日本の存在感をしっかり示すことができた」と強調しました。

また、イギリスやベトナム、それにオーストラリアの首脳と会談したほか、インドやスリランカ、モンゴルなどの首脳とも懇談の機会を持ったとして「対面での首脳外交を非常によい形でスタートできた」と述べました。

そのうえで、アメリカのバイデン大統領との短時間の懇談について「同盟の強化や『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向けて緊密な連携を確認した。できるだけ早いタイミングで再会し、よりじっくりと話ができる会談の場を設けようということで一致した。年内も含めてできるだけ早くだ」と述べました。

一方、岸田総理大臣は、記者団が新たな経済対策に関連し、現金給付のあり方を質問したのに対し「帰国後、早急に与党と調整を行いたい」と述べました。

一連の日程を終えた岸田総理大臣は3日午後1時半ごろ、政府専用機で羽田空港に到着しました。

岸田総理大臣は来週10日に特別国会を召集し、第101代の総理大臣に指名されたあと直ちに第2次岸田内閣を発足させる運びで、今月中旬に新たな経済対策を取りまとめたうえで補正予算案を編成する方針です。