益に適合しえない」
翁長知事 承認撤回手続きへ

沖縄のアメリカ軍普天間基地の名護市辺野古への移設工事をめぐり、沖縄県の翁長知事が記者会見し、国が環境保全対策などを示さずに工事を実施し事業者の義務に違反しているとして、前の知事が行った埋め立て承認の撤回に向け手続きを始めることを表明しました。

アメリカ軍普天間基地の名護市辺野古への移設工事をめぐり、沖縄防衛局は早ければ来月17日にも護岸で囲った埋め立て予定地に土砂を投入する方針です。

こうした中、翁長知事は27日、沖縄県庁で記者会見し、アメリカ軍普天間基地の名護市辺野古への移設工事について、沖縄防衛局は環境保全対策などを県に示さずに工事を実施していて、事業者の義務に違反していると批判しました。

そのうえで、護岸が設置される場所の地盤が軟弱であることなど、埋め立ての承認後に新たな事実が判明したとして、工事について「公益に適合しえないものだ」と指摘し、前の知事が行った埋め立て承認の撤回に向け、国から反論を聴く「聴聞」の手続きを始めることを表明しました。

さらに翁長知事は、普天間基地の名護市辺野古への移設について、「今後もあらゆる手法を駆使して辺野古に新基地を造らせないという公約の実現に向け、全力で取り組む」と述べました。

一方、実際に埋め立て承認を撤回する時期について、基地問題を担当する県の幹部は、「聴聞を踏まえ適切な時期に最終的な判断を行う」と述べ、具体的な時期は明らかにしませんでした。

埋め立て承認の撤回は、承認後に新たな理由が生じた場合、知事の権限で行うことが可能で、実行されれば辺野古への移設工事は止まることになります。

これに対して、国も法的な対抗措置を取る方針で、国と県の対立が一層深まる見通しです。

予想される政府側の対応

沖縄県が埋め立て承認を撤回した場合、政府は法的な対抗措置を取る方針です。
具体的には、裁判所に対し、「撤回」の効力を一時的に失わせる執行停止の申し立てや、「撤回」の取り消しを求める訴訟などを検討していて、工事が長期的に止まるかは不透明な状況です。

官房長官「環境保全策は適切に対応」

菅官房長官は午後の記者会見で「政府としては引き続き、作業の安全に十分留意したうえで、関係法令に基づいて、自然環境や住民の生活環境にも最大限配慮し、辺野古移設に向けた工事を進めていく考え方に変わりはない」と述べました。

一方、沖縄県側が国が環境保全対策などを示さずに工事を実施しているなどと批判していることについて「外部の有識者から助言を得る『環境監視委員会』の専門的見地からの指導・助言を踏まえながら、適切に対応してきた」と述べました。

さらに、沖縄県側がおととしの最高裁判所の判決は、移設工事をめぐる沖縄県知事のすべての権限を縛るものではないなどと主張していることをめぐり「それは沖縄県の言い分であり、最高裁の判断に従って進めるのが国の判断だ」と述べました。

共産 小池書記局長「英断で強く支持」

共産党の小池書記局長は記者会見で「翁長知事の決断は、知事選挙や国政選挙で繰り返し示された沖縄県民の民意の実現に向けた英断であり、強く支持する。安倍政権は翁長知事の決断を踏まえて、直ちに新基地建設の作業をやめるべきだ。『辺野古移設が唯一の解決策だ』と言うのは、まさに思考停止状態で、新基地建設に突き進む暴走は、絶対に認められない」と述べました。