【詳報】菅首相会見
「コロナとの長い闘いに…」

19都道府県の緊急事態宣言と8県のまん延防止等重点措置が、すべて解除されることを受けて、菅総理大臣は、記者会見し、次の感染の波に備えながら、感染対策と日常生活を両立させる取り組みを進めていく考えを強調しました。また、ワクチン接種について年内にも3回目の接種が開始できるよう、準備を進める考えを示しました。

解除の基準 満たす

「医療や介護の関係者、飲食などの事業者、それに、国民一人一人のご協力をいただきながら、医療体制の構築や感染防止対策、ワクチン接種を懸命に進めてきた。8月半ばすぎに2万5000人を超えていた全国の新規感染者数は大幅な減少を続け、きのうは1128人となった。東京では5773人から、本日は248人まで減った。病床の使用率はすべての都道府県で50%を下回り、重症者は9月初めをピークに減少傾向にある。一時は全国で13万人をこえた自宅療養者も3万人となり、なお減り続けている。現在の状況は、専門家から示された宣言解除の基準を満たしており解除を判断した」

新型コロナとの闘いは新たな段階に

「ウイルスへの高い警戒は保ちながら、飲食などの制限については段階的に緩和する。新型コロナとの闘いは新たな段階を迎え、ワクチン接種が急ピッチで進む中で、感染リスクが高い場面を抑えることで、感染者数は大きく減っていく。ワクチン接種と中和抗体薬で重症化を防ぐことができる。大きな変化に対応した医療体制の構築により、一定の感染が生じても、安定的な医療の提供ができるようになる」

年内にもワクチン3回目接種開始へ準備

「今月もワクチン接種は一日110万回で進み、総接種回数は1億6000万回を超えた。10月から11月のできるだけ早い時期に、希望するすべての国民が2回目を終えられるよう接種を進める。このまま進めば、わが国は世界でもワクチン接種が最も進んだ国の一つになる。これまでの関係者の一人一人のご協力が私には大変ありがたく、誇らしい気持ちでいっぱいだ。3回目の接種も見据え、すでに2億回分の契約を結んである。年内にも3回目接種が開始できるよう、準備を進める」

第6波に備え病床と体制確保を

「ことしに入ってから病床で1万3000床、ホテル療養施設で2万6000床を確保し、協力要請も行ってきた。ただ、いざという時になると、常日ごろから医療チームの体制で取り組んでないと、なかなか現場は難しいということだった。ただ病床が空いているからということではなくて、体制をしっかり作るということがなかなかできなかったという指摘があったので、そうしたことも含めて、感染の第6波が来ても感染者数を最小にしながら、病床をしっかり確保していく体制をつくることが大事だ」

次の波に備え体制整備必要

「今後はウイルスの存在を前提とし、次の波に備えながら感染対策と日常生活を両立していくことが重要だ。そのためには3つの方針で進めていかなければならない。第1に医療体制のもう一段の整備だ。7月以降に全国で4800病床、1万4000室の軽症者用のホテルを確保し、さらに臨時の医療施設、酸素ステーションをあわせて全国で約80施設を設置し、現在も増設を進めている。自宅で療養する方々には、身近な診療所や在宅医療の専門医が健康観察や入院の判断を行い、必要な医療が受けられる体制を各地で構築している。また、中和抗体薬については、すでに3万4000人に使用されている。持てる力をすべて使って構築してきたこれらの資源をフル活用し、再び感染拡大が発生したとしても十分に機能する体制を作っておかなければならない」

基本的な予防続けリスクの高い行動は避けて

「みなさまにはこれまでと同様に、マスク、手洗い、3密の回避という基本的な予防を続け、感染リスクの高い行動は避けていただくようお願いする。きのうから抗原検査キットを薬局で購入できるようにした。体調が気になる場合は、みずから検査を行い、医療機関の受診につなげていただきたい」

コロナとの長い闘いにはっきりとした明かり

「総理大臣に就任してから1年あまり、新型コロナとの闘いに明け暮れた日々だった。自宅で療養される方々への医療、飲食など事業者の生活、子どもたちの教育、生活困窮者の暮らし、そして孤独な状況に置かれた人々に思いをはせ、悩み抜いた日々もあった。そうした中でたどりついたのがワクチンと治療薬だった。ワクチンと治療薬の供給にめどがつきつつある中で『新型コロナとの長い闘いにもはっきりとした明かりが見えてきている』と申し上げた。このことばには数々の批判もあったが、今や効果は明らかであり、明かりは日々輝きを増していると実感している」

接種証明などの活用検討

「ワクチン接種によって社会全体の感染予防効果が高まり、感染者数も大きく減少してきたことで、ようやく社会経済活動の正常化が見えてきた。私自身が約束してきた安心とにぎわいのある日常の回復に向けて、段階的に制限の解除を進めていく。ワクチンの接種証明や検査結果も活用したさらなる措置を検討する」

国際的な往来緩和も検討

「ビジネスに必要な国際的な人の往来についても、制限を緩和する方策を積極的に検討する。来月1日からは、原則として、ワクチン接種済みの帰国者の自宅待機を、2週間から10日間に短縮する。今後、更なる措置を検討していく」

留学生入国も前向きに検討

「現在、原則一時停止にしているが、外国人留学生の受け入れは、大学などの国際化や教育、研究力を向上させる観点から重要だと考えている。国内におけるワクチン接種の進展や、国内外の感染状況を踏まえながら、前向きに検討していきたい」

外交、安保の進路示せた

「外交や安全保障でも、日本が歩むべき進路を示すことができた。基軸である日米同盟はかつてない高みにある。先週には初めて対面での日米豪印の首脳会合が実現し、日本がけん引してきた『自由で開かれたインド太平洋』を大きく前進させることができた。日本は今まさに正念場にある。国難というべき少子高齢化や、激変する安全保障環境、さらに新型コロナウイルスにより、デジタル化の遅れなどの課題も浮き彫りになった。日本の未来のためには成長を実現し、国民の食いぶちをつくらなければならない。痛みを伴う改革でもしっかりと説明し、実現していくことがますます重要となっていく」

厚労省分割見直し不可避

「厚生労働省は、予算的にも仕事量からしても、あまりに巨大になり過ぎている。大臣のほかに担当大臣を設けるとか、複数大臣制にするとか、最終的には組織全体の分割見直しは、避けて通れないと思っている。私自身も、この1年半にわたるコロナ対応を行ってきて、極めて大事なことだと思っている」

一政治家として子ども支援

「『こども庁』の設置を目指して取り組み、高齢者の医療費についても道筋をつけたので、そうしたものを、これからしっかり進めていく。NPOのみなさんに初めて補正予算で60億円をつけさせていただいた。コロナ禍の中で、自殺相談や『子ども食堂』など、行政の手が届かないところをNPOのみなさんに行っていただいているので、一政治家の立場として、しっかりと応援することをやっていきたい」

派閥ではなく政策勉強会やる

「今後、自分の政治活動をどうするかについては、まだ決めていない。ただ、政策の実現について、自分が掲げたものがあり、その実現には取り組んでいきたいと思っている。派閥ということではなく、政策の勉強会をやっていきたい」

次の総理も最終判断行使を

「総理大臣と官房長官の違いは最終決定者であるかそうでないか、ここは極めて重いものがあると思う。総理大臣として、例えば緊急事態宣言を決定をすると、多くのみなさまの生活が一挙に変わってくるが、そういう判断を総理大臣はせざるを得ない。政治は、やはり最終判断は総理大臣がすべきだと思っているので、次の総理大臣にもそうした権限を行使してもらいたい。いろんな条件に耐えられることが必要だと思う」

臨時国会召集 違憲ではない

「(臨時国会は)さまざまな政治日程の中で、与党と相談して決めさせていただいており、そういう中で、来月4日の召集を決定している。コロナ対応については、閉会中審査をかなり開いていることも事実で、野党の質疑にも答え、配慮しながら、政府の対策を行っている」と述べました。

記者団から「野党側の要求に応じず、速やかに召集しなかったことは憲法違反だとの指摘があるが」と問われたのに対し「そこは、ないと聞いている」と述べました。

拉致問題 じくじたる思い

「北朝鮮による拉致問題は、最重要で取り組んできている。総理大臣として、大変申し訳なく、じくじたる思いだが、外交はもちろん、さまざまな人脈を使ったりして、いろいろな対応をしてきていることは事実だ。次の総理大臣は、当然、こうしたことを優先してやられると思う。なかなか、いつ、具体的にどうかというのは難しいが、そういう状況は、私からもしっかり説明して、現状を引き継いでおきたい」

尾身会長「感染減少に5つの要素」

菅総理大臣の記者会見に同席した「基本的対処方針分科会」の尾身茂会長は、今後、再び感染が拡大する第6波に備えるためには今回、なぜ感染者数が急激に減少したかを分析しておくことが重要だとして「7月から8月にかけて夏休みや4連休、お盆休みという感染を急増させる要素が集まっていたが、この要素が無くなったことが感染者数減少の背景にあると思う」と話しました。

そして「感染者数減少の要因として、それぞれどれだけ影響したかは今の時点では分からないが、5つあると考えている。
▼深刻な医療のひっ迫が報道されたことで一般の人たちが危機意識を高め、今まで以上に協力してくれたこと。
▼夜間の繁華街の人出が目標の50%減少には届かなかったものの、長い期間にわたって20%から30%の減少が続いたこと。仮説ではあるが、ワクチン未接種の人たちの夜間の人出が減少したとみられることも大きいと考えている。
▼さらにワクチン接種の効果も確かにあったと思う。詳細な分析をするには抗体保有率の厳密な調査が必要だ。
▼ワクチンの効果もあり医療機関や高齢者施設での感染が減少したこと。これまでの流行のように若い世代から医療機関や施設の高齢者にうつらなかった。
▼気温や降水など気象も要因になったと考えている。今度さらにどうして感染が減少したのか分析を続けていきたい」と述べました。