各地で災害レベルの認識必要
感染急拡大 厚労省専門家会合

新型コロナウイルスの感染者数が全国で連日、過去最多を更新するなど急激な感染拡大が続く中、対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれました。
重症者数が過去最大規模になって亡くなる人の数も今後増加することが懸念されるため「全国各地で災害レベルの状況にあるとの認識での対応が必要だ」として、自分や家族を守るためにも外出や県境を越えた移動を控え、できるだけ自宅で過ごすよう呼びかけました。

田村厚生労働相「抗体カクテル療法 全国展開を」

田村厚生労働大臣は専門家会合の冒頭「全体に感染が広がり、重症者の数も急激に増加していて、医療の体制をしっかりと確保していかなければならない。抗体カクテル療法を全国で展開できるよう早急に進め、十分な供給量の確保にも努めていく。また、自宅で療養している人のために、緊急の場合は、酸素濃縮機を自宅でも対応できるよう、メーカーにも増産をお願いし、国がある程度、管理しながら計画的な配布を考えていきたい」と述べました。

また「コロナ患者の治療を行っていない医療機関にも治療を担ってもらえるよう、感染症法の規定を活用して、早急に対応を進めたい」と述べました。

「お盆の影響でさらに増加することも」

専門家会合では、感染状況について「全国的にほぼすべての地域で新規感染者数が急速に増加しており、これまでに経験したことのない感染拡大となっている。お盆の影響で今後さらに増加することも想定される」と分析しました。

「全国各地で災害レベルの状況に」

そのうえで重症者の数が過去最大規模になり高齢の感染者数も増加し、亡くなる人の増加傾向が見え始め、今後さらに増えることが懸念されるとして「全国各地で災害レベルの状況にあるとの認識での対応が必要だ」という認識を示しています。

さらに、中等症や重症の患者の入院調整が困難になり、一般の医療を制限し、救急搬送が困難なケースが出てきているとして「救える命が救えなくなるような危機的な状況さえ危惧される」という表現で、極めて強い危機感を示しました。

入院者数は20代~50代 重症者数は40代~60代中心

地域別に見ると、東京都では過去最大規模の感染拡大で、入院者数は20代から50代を中心に、人工呼吸器などを使用している重症者数は40代から60代を中心として増加が継続して過去最多の水準を更新し続け、新たな入院の受け入れや救急搬送が困難なケースや、一般医療を制限する事態も起きています。

各地の状況

また、埼玉県、千葉県、神奈川県でも病床の使用率が急増していて、東京では夜間の人出は着実に減っているものの、前回の緊急事態宣言時の水準には届いていないと指摘しています。

沖縄県は過去に例のない水準の感染となっていて、病床使用率が8割を超える状況にもかかわらず夜間の人出が再び増加傾向に転じ、感染拡大が続く可能性があるとしています。

専門家会合は、首都圏や沖縄県ではPCR検査の陽性率が20%以上などと高くなっていて、検査での感染者数の把握が不十分と考えられ、実際の感染者数が過小に評価されているという指摘もあるとしています。

デルタ株「これまでとは違うレベル」

そのうえで専門家会合は、必要な対策について、感染力が強いデルタ株は「これまでとは違うレベルのウイルスである」という危機感を行政と市民が共有し、自分や家族を守るために、ワクチンを接種した人を含めて外出を半分以下にして、ふだん会わない人と会う機会をできるだけ減らし、県を越えた移動を控えること、職場では会議を原則オンラインで行い、テレワークを推進し、症状がある人の出社自粛を徹底するよう求めました。

また、都道府県が主体となって地域の医療資源を最大限活用し、全国的に厳しい感染状況が当面は続くという前提で、臨時の医療施設などの整備などの対策を進める必要があるとしています。

脇田座長「接触を減らしてもらうしかない」

会合のあと会見した脇田隆字座長は現在の感染状況と対策について「首都圏や沖縄では感染状況が『踊り場』になっているように見えているが、ほかの地域では急速な拡大が続いていて、東京でもかなり多い感染者数が報告されているので今後も増加が続くという見込みが話し合われた。これまでの感染対策を徹底するのに加えて当面は接触を減らしてもらうしかない。政府の分科会から提言があったように外出の機会を半分にしてもらうことが中心になる。現在、医療の状況は『災害レベル』としきりに言われているが、一般の医療が制限されるような状況だということを認識して行動してほしい」と話していました。

そのうえで、ロックダウンのような強い感染対策の仕組みが必要だという声が出ていることについては「飲食店などには強い制限がとられる一方で、個人に対しては外出制限などの強い対策はできず、自粛をお願いする形で進めてきた。現在の爆発的な感染拡大に間に合うように新たな仕組みの議論をするのは難しいため今の法的な枠組みの中でなんとか感染状況を改善させることになる。きょうの会合で議論があったわけではないが、今後の感染症への対策を考えると個人の行動もある程度、制限するような法的な枠組みが必要ではないかと考えている」と話していました。

新規感染者数 全国で前週比1.31倍に

専門家会合で示された資料によりますと、新規感染者数は17日までの1週間では、前の週と比べて全国では1.31倍と感染の拡大が続いています。

現在の感染状況を人口10万人あたりの直近1週間の感染者数で見ると、
▽沖縄県が311.56人と、初めて300人を超える過去にない規模の感染拡大になっているほか、
▽東京都が227.64人、
▽神奈川県が159.68人、
▽埼玉県が149.10人、
▽千葉県が138.06人、
▽大阪府が126.20人、
▽福岡県が111.62人、
▽京都府が104.37人と100人を超えていて、
全国でも101.26人と初めて100人を超えました。

感染状況が最も深刻な「ステージ4」の目安の25人を超えているのは、40の都道府県となっています。

デルタ株 各地で感染全体の90%以上に

感染力の強い変異ウイルス「デルタ株」は、首都圏だけでなく関西や愛知、福岡、沖縄など、各地で感染全体の90%以上を占め、ほぼ置き換わったと推定されています。

国立感染症研究所が民間の検査会社7社の「変異株スクリーニング検査」のデータを元にデルタ株でみられる「L452R」の変異が含まれたウイルスがどれくらいの割合を占めているか推定した結果を、専門家会合で示しました。

それによりますと、東京都ではデルタ株などがすでに98%、神奈川県、埼玉県、千葉県を含めた首都圏の1都3県でも98%とほぼすべてが置き換わっています。

また、大阪府、京都府、兵庫県の関西の2府1県でも、先月上旬までは少ない状態でしたが、急速に広がって、すでに92%とほぼ置き換わったとしています。

さらに、沖縄県ですでに99%、福岡県で97%、愛知県で94%とほぼ置き換わったほか、北海道でも85%と推定されていて、デルタ株の感染の拡大とともに感染者の急増とともに入院患者が急増し、東京都などで医療体制が危機的な状況になっていることにつながっていると指摘されています。