【詳しく】菅首相 記者会見
緊急事態宣言と重点措置受け

菅総理大臣は、緊急事態宣言の対象地域の拡大などを決めたことを受けて、17日夜、記者会見し、感染拡大の要因は感染力の強い「デルタ株」だと指摘し、▼医療体制の構築、▼感染防止、▼ワクチン接種の3つを柱に対策を進めると強調しました。また、今月末までに全国民の半数近くが2回のワクチン接種を行うという見通しを示すとともに医療提供体制の確保が宣言解除の前提になると説明しました。

以下会見の詳細です。

大雨「被災者の救命救助 復旧支援に全力」

「今回の大雨で亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被害にあわれた方に心からお見舞いを申し上げる。政府としては、被災者の救命救助、復旧支援に全力を挙げていく。国民の皆さんには、警戒感を緩めず、早めに命を守る行動をしっかりとっていただくようお願いする」

新型コロナ「感染拡大 要因は“デルタ株”」

「全国各地で新規感染者の数が急増し、これまでに経験のない感染拡大が続いている。重症者の数も増加し、入院者や、自宅、ホテルで療養する方も急速に増加している。保健所の体制や医療提供体制がひっ迫し、首都圏を中心に非常に厳しい状況となっている。
要因は、感染力が極めて強いとされる『デルタ株』だ。わが国においても急速な置き換わりが進み、残念ながら、全く異なる様相をもたらしている

「政府の使命は医療態勢の確保」

「政府の使命は、国民の命を守ることで、急激な感染拡大の中にあっても、必要な方が必要な医療を受けられる医療体制を構築することだ。自宅にいる方であっても、病状が急変した場合に適切な対応をとれる医療体制を確保することが、何より急がれる。同時に、感染者数をできるだけ減らすための対策を続け、その間にワクチン接種を進めていく。
今般、それぞれの地域の感染者や病床の状況を踏まえ、措置を講じる地域を拡大し、あわせて、必要な医療を確実に受けることができる体制を構築することとし、そのための期間として、宣言の延長を決定した」

「3つの柱からなる対策」

「多くの国民の皆様、関係者の皆様には、これまでも多大な苦労をおかけしており、心苦しいかぎりだ。国民の皆様のご協力をいただきながら、この危機を乗り越えるという強い決意のもとで、医療体制の構築、感染防止、ワクチン接種という3つの柱からなる対策を確実に進めていく。
自宅にいる患者の皆さんは、大変不安な気持ちでいると思う。自治体や地域の医療機関と連携して、必ず連絡がとれるようにする。医師による電話診察を強化するために、そのための診療報酬や、訪問診療の報酬の引き上げを行う。また、酸素投与が、必要になった場合には、病院などに設ける酸素ステーションに滞在していただくなど、速やかに、酸素投与ができる体制を各地に構築していく。
先月導入された中和抗体薬は、重症化リスクを7割も減らすことができる画期的な薬だ。政府は、十分な量を確保しており、今後、病院のみならず、療養するホテルなどでも投薬できるよう、自治体と協力を進めていく方針だ。対象となる50代以上や、基礎疾患のある方々に対して、集中的に使用し重症化を防いでいく」

「混雑した場所への外出 半分に」

「緊急事態宣言の地域などでは、デパートやショッピングモールなどの混雑する場所について、自治体と連携して、人数制限を呼びかけていく。旅行や帰省は控えてもらったうえで、日々の買い物といった混雑した場所への外出を、半分減らしてもらうなど、人流の抑制への協力をお願いしたい。
それぞれの職場では、談話室などの共有部分での対策を徹底するとともに、テレワークの推進を改めて行い、昨年春に多くの企業が達成した出勤者7割減をお盆休み明けに、もう一度目指してもらうようお願いする。
時間短縮、酒類提供の停止を続けてもらう事業者には、協力金を早期に給付し、雇用調整助成金や緊急小口資金などの特例措置も期限を延長し、事業と暮らしを守っていく。全国の都道府県と市町村が、きめ細かく事業者の支援を実施できるよう3000億円の交付金を新たに配分する」

「40代、50代の重症者増加」

「東京では、連日、20代の新規感染者が1000人を超え、20代から50代の感染が、全体の8割近くを占めている。感染は、家庭や飲食の場で広がり、職場でのクラスターも急増している。若い人でも重症化する場合や、深刻な後遺症が続くケースも報告されている。夜間滞留人口に占める40代、50代の割合も増加し、その世代の重症者の増加は、今回の感染拡大の特徴の1つとなっている。
医療機関への負荷を減らすため、また、命と健康を守るためにも、いま一度、1人ひとりが意識を持って、リスクの高い行動を避けるようお願いする。マスク、手洗い、3密の回避という基本的な予防策を徹底し、特に会話するときのマスク着用を改めてお願いする」

ワクチン「9月末には6割近くが2回接種」

「8月はお盆休みの影響があっても1日100万回以上のペースで進み、きょう(17日)までに、国民の半数が少なくとも1回の接種を終え、総接種回数は1億1000万回を超えている。
世界各国ではワクチンの接種が一定の進捗(しんちょく)を示すのを機に、通常の社会経済活動へと回復しつつある。わが国でも、8月末には全国民の半数近くの方が2回の接種を行い、そして9月末には6割近くの方が2回の接種を終え、現在のイギリスやアメリカ並みに近づく見通しだ。すべての対象者の8割に接種できる量のワクチンを、10月初旬までには配分する」

「宣言解除の前提は医療提供体制の確保」

「長きにわたる新型コロナとの戦いで、多くの皆様に精いっぱいご協力をいただいてきたが、ここに来て、感染の急拡大に『この先どうなってしまうのか』という強い不安や『対策を守っても仕方がない』という諦めを抱いているのではないかと懸念している。
これからワクチン接種が40代、50代、さらに若い世代の方々へと進めば、明らかな予防効果が期待でき、はっきりとした明かりが見えてくる。10月から11月のできるだけ早い時期に、希望するすべての方への2回のワクチン接種の完了を目指していく。
今回の宣言を解除する前提は、国民の命と健康を守ることができる医療提供体制の確保だ。ワクチンの接種状況、重症者数、病床利用数などを分析し、適切に解除の判断をしていく。その先には、飲食店の利用、旅行、イベントなど、社会経済活動の回復が視野に入ってくるので、総力を挙げて取り組む。ご理解とご協力を心からお願い申し上げる」

「全国への宣言は過剰な規制 」

「今回、閣僚の間で、全国に緊急事態宣言を出す選択肢についても議論した。感染状況や医療体制には差があり、全国となると、一部の県の皆さんに過剰な規制となってしまう。地域ごとに最も効果的な対策を行っていくため、今回の判断になった。今後、宣言解除という出口に向かって、医療体制をしっかり構築したうえで、重症者を減らす対策を徹底していきたい」

「『ロックダウン』決め手にならず」

「諸外国の『ロックダウン』=都市封鎖は、感染対策の決め手とはならず、結果的には、各国ともワクチン接種を進めることで日常を取り戻してきていると理解している。新型コロナという非常事態について、今後しっかり検証して、感染症に対する法整備も含めて幅広く検討しなければならない」

衆院解散・総選挙「選択肢が少なく」

「常に申し上げているのは、最優先すべきは新型コロナ対策だ。そのために必要な医療体制をしっかり充実させ、若い世代の人たちにワクチン接種を進めて、重症化を少なくすることが、まず私がやるべきことだ。衆議院議員の任期も刻一刻と迫り、同時に自民党総裁選挙もある。解散について、選択肢がだんだん少なくなってきているが、その中で行っていかなければならない。いずれにしろ感染対策を最優先にしながら考えていきたい」

「より迅速な病床確保 法整備の必要性」

「極めて厳しい状況であることは事実なので、いま国と地方自治体が連携しながら、新たな病床の確保に取り組んでいる。
前回の国会で感染症法が改正され、都道府県が医療機関に対して、新型コロナの患者を受け入れるように要請や勧告を行い、従わない場合は病院名を公開できるようになった。ただ、現実問題としては、こうした規定があまり使われずに、自治体からの事実上の要請に基づく病床の確保にとどまっている。緊急事態の感染症に対し、より迅速に病床を確保するための法整備の必要性は、私自身、痛切に感じている。
病床の確保のほかに、ワクチンや治療薬も迅速に導入できる仕組みがないので、そうしたことも頭に入れながら、法整備について速やかに検討していきたい」

アフガニスタン情勢「連携し適切に対応」

「わが国やアメリカを含む国際社会は、アフガニスタン政府自身による国づくりを後押しする前提のもとで、およそ20年間にわたり、安定化と復興に向けて一体となって取り組んできた。今般、首都カブールへのタリバンの入域によってガニ政権は機能しなくなり、タリバンへの権力移譲の流れとなったが、今後の情勢は依然として不透明だと思っている。
わが国としては、アフガニスタンの安定化と復興が、地域や国際社会の平和と安定にとって、引き続き極めて重要だと認識している。邦人の安全確保を最優先に、日本の国益を踏まえつつ、アメリカなどの関係国と連携して適切に対応していく」

自民党総裁選「“出馬は当然”に変わりない」

「以前、『秋の総裁選に出るか』と質問があり、『総裁として出馬するのは、時期がくれば当然のことだ』と答えた。それに変わりはない」

指定感染症の変更「総括する中で考える」

感染症法の指定感染症として「2類相当」となっている新型コロナウイルスを、季節性インフルエンザなどと同じ「5類相当」に変更する考えがあるか問われたのに対しーー
「『5類相当』とすることは、ある意味でインフルエンザと同じような扱いに位置づけるわけだが、隔離など感染対策を十分に行う必要があり、今回の一連の対応を総括する中で考えていく必要がある」

五輪選手村の活用「都や事業者の間で決められる」

東京オリンピック・パラリンピックの選手村を改修して分譲されるマンションをめぐり、国が買い取って新型コロナウイルス対策専用の病院として活用する考えがあるか問われーー
「分譲マンションのうち、相当数が販売済みだと聞いている。今後の活用方法については、東京都や、所有者である民間事業者の間で決められると聞いている。
最も重要なのは、必要な病床や療養施設を確保し、自宅にいる方でも適切な医療を受けられる体制を作ることだ。自治体と連携して、地域のあらゆる資源の活用を連日のように検討し、実施に移している」

大雨「避難所での新型コロナ発生 報告ない」

「今回の大雨による避難所での新型コロナの状況について、毎日報告を受けている。その中で、分散避難を呼びかけたり、ホテルや旅館の活用を含めて、可能なかぎり多くの避難場所を確保することや、避難所では消毒や衛生管理、密を避けるための十分なスペースを取っているか、報告を受けながら対応しているが『新型コロナが発生した』という報告は今まで全くない」