「感染再拡大
全国的に広がっている」

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が、東京都に4回目の緊急事態宣言が出されてから初めて開かれました。

田村厚生労働大臣は、専門家会合の冒頭「新規感染者数の増加は特に首都圏は顕著で、東京だけでなく周辺の3県も増加が続いている。沖縄は減少が続いているが、まだ重症者の病床使用率が厳しい状況にある。さらに、関西や北海道、愛知、福岡でも感染が増加に転じる動きが見られ、感染再拡大が全国的に広がっている」と指摘しました。

そのうえで「帰省や旅行の季節になってくるが、ふだん会わない人と会うことなどには慎重を期してもらいたい。また、複数人での飲酒などリスクの高い行動を徹底的に避けるよう、国民の皆さんに協力をお願いしたい」と呼びかけました。

脇田座長「4連休や五輪、夏休み なるべく外出控えて」

専門家会合のあと会見した脇田隆字座長は「65歳以上の高齢者ではワクチンの接種が進んで入院する人はそれほど多くない状況になっているが、40代、50代で重症になる人が割合的に増えてきている。高齢者以外でも重症化のリスクが無いわけではない。感染者数が多くなれば入院も増えて病床がひっ迫し、また、入院調整ができずに治療が遅れて重症化する人も出てくる。ワクチンがさらに下の年代に広がっていくまでしっかりと感染者数を抑制していくことが大事だ」と話していました。

また、今後について脇田座長は「きょうの会合では人流だけでなくて人と人との接触の機会をなるべく減らしていくことが重要だという議論があった。変異ウイルスのデルタ株が増えていることもあり、今後もしばらくは感染者数の増加が続く可能性がある。これから4連休やオリンピック、それに夏休みなどもあるのでなるべく外出は控えてほしい。オリンピックは、大勢で集まらずに家族などと少人数で過ごしながらテレビで観戦してもらいたい」と話していました。

“これまでの感染対策では通用しなくなっている 今が瀬戸際”

東京都で一日に確認された新型コロナウイルスの新規感染者数が14日、1000人を超えたことについて厚生労働省の専門家会合のメンバーで、国際医療福祉大学の和田耕治教授は「緊急事態宣言が出される前の、自粛疲れなどによる人流の増加の影響が出ているとみられる。特に、企業での会議や会食といった場や、教育現場で部活動などを通じてクラスターが発生している。ある特定のエリアというよりは広く日常生活の中で感染が広がっている印象だ」と指摘しました。

そのうえで「まだワクチンを接種しておらず基礎疾患のある人が多い40代、50代で増えている傾向がある。さらに、活動量が多い20代、30代の入院患者数が感染の第3波、第4波より増えていることに注意が必要だ。インドで確認された変異ウイルス『デルタ株』への置き換わりが進み、これまでの感染対策では通用しなくなっていることを意味しているのではないか。新型コロナの流行が始まって以来、特に若い世代で今がいちばん感染が広がりやすい状況だ。ワクチンが広く全世代に行き渡るのを目の前にして、感染してしまわないよう、これまで以上に感染対策を徹底することが重要で今が瀬戸際だ」と述べ、感染対策を徹底する必要性を強調しました。

さらに、4連休や夏休み、それにオリンピックの開催が近づく中での注意点として「ことしの夏こそはと旅行を計画している人もいると思うが、県境を越えず、家族だけでの移動にとどめてもらいたい。オリンピックの応援も多くの人が集まる場所には行かず、家族だけで観戦してほしい」と呼びかけました。

東京都の新規感染者数 5月の第4波ピーク上回る

東京都内では14日、新たに1149人が新型コロナウイルスに感染していることが確認され、第4波のピークだったことし5月8日の1121人を上回りました。高齢者の感染は抑えられている一方、20代と30代で全体の半数近くを占めています。また、入院している患者は先月1日以来2000人を超えました。

首都圏の拡大顕著 “デルタ株”1.7倍に急増

専門家会合では、現在の感染状況について「東京都を中心とする首都圏の感染拡大が顕著で、周辺や全国への影響が懸念される」と評価しました。
またインドで見つかった変異した新型コロナウイルス「デルタ株」について、厚生労働省などが感染者の一部の検体を遺伝子解析した結果、12日までの1週間に確認されたのは前の週のおよそ1.7倍に急増したことがわかりました。

変異ウイルス「デルタ株」東京都では半数近く

専門家会合では、感染力が強いインドで確認された変異ウイルス「デルタ株」のクラスターが複数報告され、検査で全体に占める割合は全国で11%程度になり、今後置き換わりが進むとしていて、国立感染症研究所が示した推定の資料では、東京都では半数近くになっています。

また国立感染症研究所は、専門家会合で、「デルタ株」でみられる「L452R」の変異が含まれたウイルスがどれくらいの割合を占めているか推定した結果を示しました。

研究所は、民間の検査会社6社の「変異株スクリーニング検査」のデータを元に推定していて、東京都と神奈川県、埼玉県、千葉県の首都圏の1都3県では、デルタ株などがすでに44%となっていて、来月初めにはおよそ80%を占め、来月末にはほぼすべて置き換わるとしています。

最も割合が高いのが東京都で、すでに49%に上っていて、今月末にはおよそ80%となり、来月下旬にはほぼすべて置き換わるとしています。

一方、大阪府、京都府、兵庫県では、これまでのところ全体の25%と推定され、今月下旬にはおよそ半数が置き換わる可能性があるとしました。

デルタ株は感染力が強いため、感染者が急増して入院患者が増え、医療のひっ迫につながる恐れが指摘されています。

専門家会合のあとの記者会見で、脇田隆字座長は、「デルタ株への置き換わりが首都圏で進んでいて、感染拡大の速度がさらに加速する可能性がある。そうした状況を前提とした医療提供体制、公衆衛生の体制の確保が重要だという議論があった」と話しました。

専門家会合は、首都圏での感染拡大を各地に広げないためにも今後、4連休や夏休み、お盆休みなどでも帰省や旅行での県境を越える移動は慎重を期すよう呼びかけました。

また、大人数や長時間での飲食、飲酒を伴う会食に複数回参加することで感染リスクが高まることが示唆されているほか、職場や学校などでのクラスターの発生が見られていてこうした場での感染対策の徹底が必要だと改めて強調しました。

「デルタ株」感染者 1.7倍に急増

厚生労働省は、全国の自治体に依頼して新型コロナウイルスの感染者の一部の検体を抽出し、PCR検査より詳しい遺伝子解析を行って変異ウイルスの広がりを調べています。

厚生労働省が12日までの1週間に自治体から寄せられた報告を集計した結果、全国で合わせて133人が、インドで見つかった変異ウイルスの「デルタ株」に感染していたことが分かったということです。

前の1週間に報告された人数を53人、率にして66%上回っています。

▽東京都が最も多く38人、
次いで
▽千葉県が28人、
▽大阪府が13人、
▽埼玉県が7人、
▽神奈川県、鹿児島県、沖縄県で6人
▽鳥取県が5人、
▽茨城県、京都府、兵庫県が4人
▽愛知県で3人、
▽山梨県、福岡県で2人
▽栃木県、石川県、岐阜県、静岡県、広島県でそれぞれ1人でした。

デルタ株の感染がさらに拡大していることをうかがわせるデータもあります。

全国の自治体が感染者についてPCR検査を行った結果、12日までにデルタ株と同じ「L452R」の変異を持つ新型コロナウイルスへの感染が確認されたのは、全国で合わせて2450人で、1週間で1.7倍に急増しました。

新規感染者 増加傾向

専門家会合で示された資料によりますと、新規感染者数は13日までの1週間では、前の週と比べて全国では1.32倍で、増加傾向が顕著になっています。

緊急事態宣言が出されている
▽東京都は1.31倍と増加傾向が顕著になっている一方、
▽沖縄県は0.86倍と減少傾向が続いています。

まん延防止等重点措置が適用されている地域のうち、首都圏では
▼神奈川県が1.47倍、
▼埼玉県が1.28倍、
▼千葉県が1.21倍、
▼大阪府も1.41倍と
それぞれ増加傾向が顕著になっています。

現在の感染状況を、人口10万人あたり、13日までの1週間の新規感染者数は、
▼東京都が39.75人と全国で唯一、感染状況が最も深刻な「ステージ4」の目安の25人を超えていて
▼神奈川県は24.07人、
▼沖縄県は23.06人、
▼千葉県は19.17人と「ステージ3」の目安の15人を超えています。

▼全国では11.91人となっています。

沖縄 玉城知事「リバウンドが懸念」

およそ1か月半ぶりに、前の週の同じ曜日から、2桁の増加になったことについて沖縄県の玉城知事は「これまで減少傾向であった県内の感染状況で、リバウンドが懸念されている。ここで増加傾向に転換し、感染急拡大になれば、緊急事態措置の解除は困難となりかねない」と危機感を示しました。

そのうえで「来週の連休に端を発する人出の増加に危機感を持っている。県外の皆様にはあらためて緊急事態宣言の期間中は、沖縄に来ることは自粛をお願いする。仕事などで、やむを得ず来沖する場合でも、必ず事前のPCR検査か、抗原検査を受けるようお願いしたい」と呼びかけました。