野党側が辞任要求
西村経済再生相は陳謝

新型コロナウイルス対策で、酒の販売事業者に対し、酒の提供停止に応じない飲食店との取り引きを行わないよう求める要請などを撤回したことをめぐり、14日に開かれた衆議院内閣委員会で、野党側が、西村経済再生担当大臣の辞任を求めたのに対し、西村大臣は事業者に不安を与えたと陳謝したうえで、引き続き、感染対策に全力を尽くす考えを示しました。

この中で、自民党は酒の販売事業者に対し、酒の提供停止に応じない飲食店との取り引きを行わないよう求めた政府の要請について、「自由な取り引きを制約すると読み取ることもでき、事業者の中には動揺している方々もいる」と指摘しました。

これに対し、西村経済再生担当大臣は「酒類販売の事業者に対して強制的な実施を求めるものではなく、可能な範囲で感染拡大防止に協力をお願いする趣旨だったが、混乱を生じさせてしまった」と述べ、13日夜に要請を撤回する事務連絡を発出したと説明しました。

そのうえで「事業者の皆様には、さまざまな不安を与えてしまい誠に申し訳なかった」と陳謝しました。

そして、事業者への支援について「業界団体から、酒類提供の自粛が長期におよび、経営に与える影響が大きいことから、支援を求める意見もある。適切な支援が行われるよう検討していきたい」と述べました。

また、立憲民主党は「このような要請を出した責任は重く、辞任したほうがいい」と述べ、西村大臣の辞任を求めました。

これに対し、西村大臣は「閣僚会議で事務方から触れられたが、その後の閣僚間の議論で、要請の具体的な内容について議論していない。私の責任で、内閣官房の新型コロナ対策室が、関係省庁と調整のうえで決め協力依頼を行った」と述べました。

そのうえで「混乱を招いてしまったことを深く反省している。感染拡大を何とかを抑え、その後の経済回復に取り組むとともに、厳しい状況の方々にも目配りしながら機動的な経済対策を打っていかなければいけない。このことが私の責務であり、感染を何としても抑えるため全力を挙げることで責任を果たしていきたい」と述べました。

野党 西村大臣の辞任求める

酒の販売事業者に対し、酒の提供停止に応じない飲食店との取り引きを行わないよう求める要請を、政府が撤回したことなどを受け、野党側は、混乱を招いた西村経済再生担当大臣の責任は重大だとして、辞任を求めました。

新型コロナウイルス対策で政府は、酒の販売事業者に対し、緊急事態宣言の対象地域などでは酒の提供停止に応じない飲食店との取り引きを行わないよう要請するなどの対応をとっていましたが、関係者から反発が相次ぎ、撤回しました。

立憲民主党、共産党、国民民主党の国会対策委員長らは、国会内で会談し「関係者の混乱や不信を招いた責任は重大で、撤回しても国民の信任は得られない」として、西村経済再生担当大臣の辞任を求めていくことで一致しました。

このあと、立憲民主党の安住国会対策委員長は、自民党の森山国会対策委員長と会談し、西村大臣の辞任を要求し、森山氏は「厳しい意見があったことを二階幹事長に伝えたい」と述べました。

首相 酒販売事業者への要請撤回で陳謝「おわび申し上げたい」

新型コロナウイルス対策で、酒の販売事業者に対し、酒の提供停止に応じない飲食店との取り引きを行わないよう求める要請などを撤回したことについて、菅総理大臣は「多くの皆様に大変、ご迷惑をおかけし、おわび申し上げたい」と陳謝したうえで、事業者の協力を得ながら対策を進めていく考えを示しました。

政府は、緊急事態宣言の対象地域などで酒の販売事業者に対し、酒の提供停止に応じない飲食店との取り引きを行わないよう求める要請を、13日に撤回したほか、先週には、飲食店などへの要請の順守を金融機関に働きかけてもらう方針も撤回しています。

菅総理大臣は14日午前、総理大臣官邸で記者団に対し「先週の事務方の説明の中で言及しているということだが、要請の具体的な内容について議論したことはない。すでに要請は撤回されているが、多くの皆様に大変、ご迷惑をおかけしたことについて、私からも、おわび申し上げたい」と陳謝しました。

そのうえで「緊急事態宣言を発出する中で、例えば、酒の提供停止などに応じた飲食店への協力金の先渡しなどで、少しでも理解をいただき、協力をいただくことが極めて大事だ。結果的に、そうしたことが国民の皆さんの感染拡大防止につながる」と述べました。

また記者団が、西村経済再生担当大臣を担当閣僚として続投させるのかと質問したのに対し「西村大臣は、感染防止のため、いろんな対策を練ってきている。丁寧に説明していくことが大事だ」と述べました。

そのうえで「内閣として、関係者の皆さんに迷惑をかけるようなことは避けるべきだ。皆でしっかり対応していかなければならない」と述べました。

一方、菅総理大臣は「感染対策の最大の切り札は、何と言ってもワクチンだ。安心安全の日常を取り戻すことに全力で頑張っていきたい」と述べました。

加藤官房長官 “事業者への支援の充実 早急に検討”

加藤官房長官は午前の記者会見で「多くの皆さんに大変なご迷惑をおかけしたことについて、改めておわびを申し上げたい。酒類業界団体の方々をはじめ、関係者の皆さんからの声をしっかりと聞きながら、今後、対応していきたい」と述べました。

そして「新型コロナウイルス対策の影響が長期化していく中で、酒類販売事業者の皆さんが大変厳しい状況にあることをしっかりと踏まえ、事業者の方々や与党からも、酒類販売事業者へのさらなる支援を求める声も頂戴しており、支援の充実についても早急に検討を進めていきたい」と述べました。

自民 下村政調会長 “発言不適切 国民目線の発言を”

自民党の下村政務調査会長は、党の会合で「酒販店をはじめ、影響を受ける事業者には、より丁寧な説明や支援が必要であり、先日の西村経済再生担当大臣による一連の発言は不適切だった。政府には、国民や事業者の目線に立った発言を今まで以上に心がけてもらいたい。また、重要な決定については、事前に党との連携を密にするよう改めて注文したい」と述べました。

自民 森山国対委員長「速やかに適切な対応」

自民党の森山国会対策委員長は、記者団に対し「速やかに適切な対応がされたのではないか。遺憾なところがあったのは、そのとおりだが、国民の皆さんの理解をいただければと考えている」と述べました。

また、野党側が西村経済再生担当大臣の辞任を求めていることについて「西村大臣は一生懸命、頑張っているのではないか。少し手違いのことはあったが、改めるべきものは速やかに改めて努力している。厳しい意見があったことは、二階幹事長に報告したい」と述べました。

自民 中谷元防衛相「政治手法としては異質で異常な状態」

自民党の中谷 元防衛大臣は、所属する議員グループの会合で「上から圧力をかけて、指示を徹底しようとしたというのは、日本の政治手法としては全く異質で異常な状態だ。危機管理は、どんな時も平常心を持って行わないと、民衆に動揺や不安が起こり、かえって反発を持たれる」と述べました。

そのうえで「酒の販売や飲食業の方は大変に苦労し、深刻な状態であるという状況を察して、政府には、国民や関係者の理解がえられるやり方をとってもらいたい」と述べました。

立民 安住国対委員長「撤回してすむものでない辞任を」

立憲民主党の安住国会対策委員長は「西村大臣は『上から目線』で強圧的な態度であり、撤回してすむものでもない。国民の信任を得られないと思うので、辞任を要求したい」と述べました。

また、臨時国会の召集に与党側が応じないことについて「来週、東京オリンピックの開幕を前に、政府や大会の組織委員会のマネジメントが問われており召集すべきだ。今週中にも要求を行いたい」と述べました。

維新 馬場幹事長「許されない行為だが奮起を」

日本維新の会の馬場幹事長は、記者会見で「商売をする人を政府側の権力でコントロールしようとするのは絶対に許されない行為だが、責任の取り方はいろいろある。西村大臣は辞めるのではなく、これまでのノウハウや知識などを駆使して対応するよう奮起を促したい」と述べました。

共産 穀田国対委員長「西村大臣はその任に値しない」

共産党の穀田国会対策委員長は、記者会見で「撤回は当然だが、強権的なやり方をとろうとしたことは許しがたい。要請が関係者にどう受け取られるのか、思いが至らなかった西村大臣は、その任に値しない。また、菅総理大臣自身の責任はどうなのかも問われるのではないか」と述べました。