名簿公表で41人の所在確認
安否確認と捜索救助を急ぐ

今月3日に静岡県熱海市で起きた土石流は、人命救助にとって重要とされる発生からの72時間がたとうとしていて、警察や自衛隊などは捜索や救助を急いでいます。

一方、県は5日夜、住民基本台帳をもとに所在のわかっていない64人の名簿を公表し、情報提供を呼びかけていましたが、6日朝までに本人や知人などから連絡があり、新たに41人の所在が確認されたということです。

また、新たに住民基本台帳に載っていない所在不明者が1人増え、現在所在がわかっていない人は24人になったということで、市は引き続き広く情報を集めて状況の確認を進めることにしています。

今月3日に熱海市の伊豆山(いずさん)地区で起きた土石流では、少なくとも130棟の建物が流され、これまでに女性4人の死亡が確認されました。

6日で発生から4日目となり、災害の発生から72時間が過ぎると生存率が急激に下がるとされていることから、現場では警察や自衛隊などは捜索や救助を急いでいます。

道路にたまっている土砂は徐々に撤去され、警察官は家屋の中に流れ込んだ泥をシャベルで取り除いたり、倒れた家具を運びだしたり作業にあたっていました。

また、市と県が住民基本台帳に基づいて被害を受けた地域に住んでいたとみられる215人の所在の確認を進めた結果、県は5日夜、確認が取れていない64人の名簿を公表しました。

熱海市によりますと6日朝までに本人や知人などから連絡があり、新たに41人の所在が確認されたということです。

また、新たに住民基本台帳に載っていない所在不明者が1人増え、現在所在のわかっていない人は24人となったということで、市は引き続き広く情報を集めて状況の確認を進めることにしています。

一方、警察にも、「連絡がとれない人がいる」といった通報が多く寄せられているということで、通報した人の了承を得るなどした上で、順次、名前を公表していくことにしています。

熱海市と静岡県は公表した人の情報を広く集めて確認を急ぐことにしていて、心当たりのある人は次の電話番号まで連絡してほしいと呼びかけています。熱海市役所災害対策本部 0557-86-6443

土石流 高さ10mの砂防えん堤 乗り越える

静岡県によりますと、今回の土石流は土砂災害を防ぐために設けられていた高さ10メートル、長さ43メートルの砂防えん堤を乗り越えて、住宅地に流れ込んでいたことが分かりました。

土石流は熱海市伊豆山地区の逢初川の上流部から2キロにわたって流れ、海にまで到達しました。

静岡県によりますと、土石流が発生した最も上流の部分では盛り土がされた場所が崩れ、少なくとも5万立方メートルの盛り土が流れ出たと推定されています。

もともと逢初川の上流部では川底に土砂が堆積し、川沿いの住宅地などは土砂災害警戒区域に指定されていて、県は平成11年、高さ10メートル、長さ43メートルの砂防えん堤を建設して対策を取っていました。

しかし今回の土石流は、盛り土が崩れた場所から下流に500メートルほどの場所にあったこの砂防えん堤を乗り越えて大量の土石流が住宅地に流れ込んだということで、県は盛り土の影響などで想定を超える土砂が出て、えん堤を乗り越えたとみられるとしています。

県が5日、砂防えん堤を確認したところ、上流側のスペースには土砂がいっぱいにたまった状態だったということです。

最初の土石流から15分ほどあと

土石流が発生した熱海市伊豆山の逢初川近くで、自宅から消防に救助された男性が当時の状況を語りました。

「木がガサガサとゆれるような音が聞こえ、10分ほどするといきなりダーっと土砂が流れてきた」
「最初の土石流から15分ほどあとに、さらに勢いを増した土石流が再び押し寄せた。自宅の裏にある崖の上から消防の人にハシゴを下ろしてもらい、近くにいた10人ほどで10メートルほど登って避難した。そのあとさらにもう一度土石流が来て生きた心地がしなかった」

バキバキと音を立てて…

また、逢初川の上流に位置する集落の上の方に住み、避難所に避難た30代の男性は、土石流の発生当初は自宅にいました。

「午前10時27分ごろに地震のような揺れを感じるとまもなく停電した。続いて、ゴーという音がしたほか、窓から外を見たらバキバキと音を立てて木が折れて近くまで押し寄せてきていた。土砂が崩れているのも見たが、水分をあまり含んでいない土砂に見えた」
「10時40分ごろ、外に出て周りの様子を確認すると、それまでよりも水を含んだ土砂が地面を流れていた。流れの速さは遅くなったり、速くなったりして、流れる土砂の幅も広くなったり狭くなったりしていた。あたりには土のにおいが立ちこめていた」

“盛り土”のリスク

土石流が発生した要因について、地盤工学の専門家は、盛り土のあった場所は地下水が集まりやすい場所で、この場所が土石流の起点になった可能性があると指摘しています。

地盤工学が専門で東京電機大学名誉教授の安田進さんは、静岡県が撮影した土石流の上流部の映像について、崩れた斜面から水が噴き出していることから盛り土によって地下水の流れがふさがれ、大量の雨で水圧が高まって土砂を押し出したと分析しています。

「最上流の現場は水が集まりやすい場所で、えぐられた地面の様子を見るかぎり、この場所が土石流の起点になった可能性がある。崩壊した土砂が谷を下るにつれて両側の斜面の土を削り、土砂の量が一気に増えて被害を大きくしたことが考えられる」
「谷間を埋めて盛り土を行う際は底に排水パイプなどを通して水はけをよくするなどの対策が必要だが、どのような対策がとられていたか、もとの地形はどうだっかなどは今後詳しく検証が必要だ。山の中に土砂や産業廃棄物の処分場などがあるケースはほかの地域にもあり、リスクがあると考えてほしい」