党首討論で菅首相 ワクチン
“希望者10~11月に終了”

菅内閣では初めての党首討論が行われました。
菅総理大臣は、新型コロナウイルスのワクチン接種について、希望する人すべてが、10月から11月にかけて終えられるよう取り組む考えを示しました。

およそ2年ぶりとなる党首討論は、感染対策を取って行われました。

立民 枝野代表

立憲民主党の枝野代表は、新型コロナウイルス対策について「3月の緊急事態宣言の解除が早すぎたと反省したうえで、同じ間違いをしないため、厳しい基準を明確にすべきだ。また、支援策もつぎはぎされたパッチワークのようで30兆円規模の補正予算を、速やかに編成させるべきだ」と求めました。

菅総理大臣は「ワクチン接種こそが切り札だ。ことしの10月から11月にかけて、希望する方すべてを終えることも実現したい。74兆円規模の経済対策を策定したし、昨年度から繰り越している金額がおよそ30兆円ある。景気の動向に最大限の注意を払い、必要な対策は臆せず行っていきたい」と述べました。

また枝野氏は、東京オリンピック・パラリンピックをめぐり「菅総理大臣が開催の前提条件として言う『国民の命と健康を守る』とは、開催を契機として国内で感染が広がり、国民の命と健康を脅かすような事態を招かないことを含むのか」とただしました。

菅総理大臣は「感染対策や水際対策を徹底して安全安心のものにしなければならない。大会関係者も半分以下に絞り、さらに縮小する方向で検討している。世界が新型コロナという大きな困難に立ち向かい、団結して乗り越えることができたことも、日本から世界に発信したい」と述べました。

さらに、枝野氏は、来週16日までとなっている国会の会期について「大幅延長して、国会を挙げて新型コロナウイルスという国家の危機に立ち向かおう。協力できることは協力してきているつもりだし、これから、ますますしていく。国会として国民の期待に応えよう」と求めました。

菅総理大臣は「国会のことは、従来通り、国会で決めていただきたい。いま残っている国会に提出した法案を、会期内に成立させるのが、政府の今の立場だ」と述べました。

維新 片山共同代表

日本維新の会の片山共同代表は、衆議院の解散・総選挙について「選挙を本気でやったら、コロナ対策はどうなるのか。解散をせず、任期満了の選挙はいかがか」とただしました。

菅総理大臣は「『コロナ対策最優先』が、国民がいちばん期待していることだろうと思っており、しっかり対策に取り組むことを優先していきたい」と述べました。

また、東京オリンピック・パラリンピックをめぐり、片山氏は、「菅総理大臣が矢面に立って攻撃されている。本当はもっと、開催都市の東京都の小池知事が出ないといけない」と指摘しました。

菅総理大臣は「筋道としてはそうだと思う。ただ、私も逃げる気持ちはないし、国会でそういう議論になっていることを、大変残念だなと思っている」と述べました。

国民 玉木代表

国民民主党の玉木代表は、新型コロナウイルスの水際対策について「ワクチンパスポートか検査の陰性を含むデジタル証明書を、東京オリンピックで先行的に導入してはどうか」と提案しました。

菅総理大臣は「ワクチン接種をしたという記録について、世界でいろんな動きが出ている。加藤官房長官のもとで検討している」と述べました。

また、経済対策について、玉木氏は、「30兆円規模のものを最低でもやるべきだと打ち出しているが、ワクチン接種が進むこのタイミングで打つべきだ」と求めました。

菅総理大臣は「去年暮れの74兆円規模の経済対策や、それに基づく昨年度の3次補正予算を成立させて、およそ30兆円を今年度に繰り越しているので、そうした状況を見ながら判断する」と述べました。

共産 志位委員長

共産党の志位委員長は、東京オリンピック・パラリンピックについて「政府の分科会の尾身会長は、『開催すれば今より感染リスクが高くなるのが普通だ』と述べている。そうまでして開催しなければならない理由をどう説明するのか」とただしました。

菅総理大臣は「尾身会長とは、西村経済再生担当大臣が、毎日のように緊密に意見交換しており、私も報告を受けている。当然、尾身会長の意見も参考に感染対策の詰めを行っていく」と述べました。

そして「国民の命と安全を守るのは、私の責務で、そうでなければ『できない』ということを、申し上げている。守るのが私の責任で、守れなくなったら、やらないのは当然だ」と述べました。

これに対し志位氏は「国民の命をギャンブルにかけるようなことは、絶対にやるべきでない」と述べ東京大会の中止を重ねて求めました。

各党の党首などの反応です。

維新 片山共同代表「菅首相 やっぱり『答弁風』に」

日本維新の会の片山共同代表は、記者会見で「菅総理大臣は、事前に答弁を用意している部分については、わりと丁寧に答えていたが、やっぱり『答弁風』になってしまっていた。党首討論は自分の考えをぶつけ合う場であり、あれではダメだ」と述べました。

国民 玉木代表「菅首相は正しい現状認識と危機感ない」

国民民主党の玉木代表は、記者団に対し「感染拡大の防止と経済社会活動の再開を、いかに両立させるかという建設的な議論をしたいと討論に臨んだが、菅総理大臣には正しい現状認識と危機感がなく、非常に残念だ」と述べました。

また、内閣不信任決議案の扱いについて「ちゅうちょなく提出すべきだと申し上げてきたが、それが確信に変わった。仮に衆議院の解散を打たれた場合は、経済財政政策の転換を大きな柱にして選挙を戦いたい」と述べました。

共産 志位委員長「菅首相 かみ合った議論から遠く ひどい答弁」

共産党の志位委員長は、記者会見で「率直に言って、菅総理大臣は、真面目にかみ合った議論をしようという姿勢からはほど遠く、ひどい答弁だった。国民の命を危険にさらしてまでオリンピックをやる理由や意義がどこにあるのか聞いたが、一切答えられなかった。大会は中止するしかないということが、はっきりした論戦だった」と述べました。
自民 下村政調会長「野党側の質疑 気迫なかった」
自民党の下村政務調査会長は、記者会見で「菅総理大臣は十分に準備して臨み、質問にしっかり答えている印象だった。野党側の質疑は、菅総理大臣を追い込むような気迫を持ったものではなかった」と指摘しました。

そのうえで、菅総理大臣が、ワクチン接種を希望する人すべてが10月から11月にかけて終えられるよう取り組む考えを示したことについては「1日100万回を超える接種が実績としてでてきている。根拠のある現実可能な発言だ」と述べました。

一方、野党側が内閣不信任決議案を提出した場合の対応について「菅総理大臣が衆議院の解散に打って出る決断をすれば、直ちに決戦に臨む決意は常に持っている」と述べました。

公明 山口代表「菅首相 冷静に落ち着いて語っていた」

公明党の山口代表は国会内で、記者団に対し「菅総理大臣は、冷静に落ち着いて言うべきことをきちんと語っていた。また、生のことばで、前回の東京オリンピックの印象や経験した感動を国民に率直に伝える場面があってよかった」と述べました。

一方「枝野代表は内閣不信任決議案を出すための作文のおさらいをしているように聞こえた。政府・与党としては、国会を会期で閉会したうえで、今後の推移を見極めながら補正予算案を編成するかどうか検討していく姿勢だ。枝野氏の主張には具体的な提案がなく、やや無理がある」と指摘しました。

 菅首相 ワクチン接種「予想よりはるかに早いペース」

菅内閣で初めての党首討論が行われたことを受けて菅総理大臣は9日夜、記者団の取材に応じ「初めての党首討論であり非常に重要な機会だと思った。野党の質問に答え、皆さんが最も関心あるだろうと思っている、新型コロナ対策や東京オリンピック・パラリンピックについて私の考え方を丁寧に説明させていただけたと思っている。これからもしっかり説明したい」と述べました。

また、記者団から東京大会を開催する目的を改めて問われたのに対し「57年前の東京大会で初めてパラリンピックという名称がつき、障害者が社会に出て共生社会を実現していくという大きな契機になったということだ。今のパラリンピックで活躍する皆さんもさまざまな思いがあると思ったので、そうしたことも大事だ」と述べました。

一方、新型コロナウイルスのワクチン接種について菅総理大臣は「どこで1日100万回となったかは分からないが、このところはだいたいその数字になっている。私自身が予想したよりはるかに早いペースでそうなってきている」と述べました。

そのうえで「今月21日から職域接種を始める。きょう夕方の段階で1000を超える会場で接種をやりたいという申し込みがあるようだ。1日も早く接種することで国民の命と健康を守ることができるので、10月、11月には全員の接種を終え、新しい年を迎えたいという思いで発言した。その方向に進んできていると思う」と述べました。