2030年温室効果ガス目標
2013年度比46%削減を

2030年に向けた温室効果ガスの削減目標について、菅総理大臣は、政府の地球温暖化対策推進本部の会合で2013年度に比べて46%削減することを目指すと表明しました。さらに、50%の高みに向けて挑戦を続けていくと強調しました。

政府は、22日夜、総理大臣官邸で、地球温暖化対策推進本部の会合を開き、菅総理大臣のほか、梶山経済産業大臣や小泉環境大臣らが出席しました。

この中で、菅総理大臣は「集中豪雨、森林火災、大雪など、世界各地で異常気象が発生する中、脱炭素化は待ったなしの課題だ。同時に、気候変動への対応は、わが国経済を力強く成長させる原動力になるという思いで『2050年カーボンニュートラル』を宣言し、成長戦略の柱として取り組みを進めてきた」と述べました。

そして、菅総理大臣は、2030年に向けた温室効果ガスの削減目標について、2013年度に比べて46%削減することを目指すと表明し「さらに50%の高みに向けて挑戦を続けていく」と述べました。

そのうえで「46%削減は、これまでの目標を7割以上、引き上げるもので、決して容易なものではない。目標達成に向け、具体的な施策を着実に実行していくことで、経済と環境の好循環を生み出し力強い成長を作り出していくことが重要だ」と述べました。

46%削減は、2013年度に比べて26%削減するとした6年前に決めた現在の目標を大幅に引き上げることになります。

また、菅総理大臣は、▽再生可能エネルギーなど脱炭素電源の最大限の活用や、▽投資を促すための刺激策、▽地域の脱炭素化への支援、それに、▽3000兆円とも言われる世界の資金を呼び込むための「グリーン国際金融センター」創設や、▽アジア諸国をはじめとする世界の脱炭素移行への支援など、あらゆる分野で、できるかぎりの取り組みを進め、経済と社会に変革をもたらしていく考えを強調し、各閣僚に検討を加速するよう指示しました。

菅総理大臣は、アメリカが主催して、22日からオンラインで開催される気候変動サミットで、こうした方針を説明することにしており、従来の目標から大幅に引き上げた野心的な目標を掲げることで、世界の脱炭素化をリードしていきたいというねらいがあるとみられます。

再生可能エネルギー活用優先 大胆に対策を講じる考え

2030年に向けた温室効果ガスの削減目標について、2013年度に比べて46%削減することを目指すと表明したことを受けて、菅総理大臣は、再生可能エネルギーの活用を優先し、大胆に対策を講じていく考えを示しました。

菅総理大臣は22日夜、総理大臣官邸で、記者団に対し「気候変動サミットにおいて、国際社会に表明したい。これまでの目標を70%以上引き上げるトップレベルの野心的な目標を実現し、世界の世論をリードしていきたい」と述べました。

そのうえで、記者団が「目標達成のため、原発を再稼働することについてどう考えるのか」と質問したのに対し「省エネ、再エネを中心に大胆に対策を行っていきたい。まずは再エネを優先して行いたい」と述べました。

また、再生可能エネルギーの中で特に力を入れたい分野を問われたのに対し、菅総理大臣は「海上風力だと考えている。さらに太陽光も含め、住宅などについて、徹底した再エネを考えている」と述べました。

一方、記者団が「46%削減は現実的なのか」と質問したのに対し「これは積み重ねてきている政府としての数字だ。ここは全力でやり遂げたい」と述べました。

小泉環境相「まず必要なのは再生可能エネルギー導入」

温室効果ガスの新たな削減目標について小泉環境大臣は22日夜、記者団に対し「46%の削減が限界というわけではなく、50%という高みに向けて挑戦を続けていく。まず必要なのは再生可能エネルギーの導入だ。再エネの採用比率や省エネをどの分野でどの程度行うのかといった具体的な数字については、これからしっかりとプロセスを踏んでいく」と述べました。

経済界の反応

菅総理大臣が2030年に向けた温室効果ガスの削減目標として2013年度に比べて46%削減することを目指すと表明したことについて、経団連の中西会長は「日本のリーダーシップで、世界における2050年までのカーボンニュートラル実現に向けた動きが一層加速することを期待したい」と評価しています。そのうえで「日本の国際的な競争力強化につなげる形で、再生可能エネルギーを大量導入していくとともに、政治の強いリーダーシップで安全性が確認された原子力発電所の着実な再稼働や新増設などを実現しなければならない。経団連としても、主体的な取り組みを強力に推進したい」とするコメントを発表しました。

日本商工会議所の三村会頭は「新たな目標を、わずか9年という短期間で達成することは容易ではない。日本のエネルギー政策における原子力発電の位置づけを明確し、安全対策を徹底したうえで、早期の再稼働、新増設などを進めることが急務だ」と指摘しています。そのうえで「政府には、民間による取り組みを力強く促すあらゆる施策を総動員するとともに、諸外国に見劣りしない大規模かつ積極的な財政支援を期待したい」とするコメントを発表しました。

専門家「目標 今までの延長線上では達成できない」

温室効果ガスの新たな削減目標について、気候変動対策をめぐる政府の有識者会議のメンバーで、地球温暖化対策に詳しい、東京大学未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授は「2050年までの脱炭素社会の実現に向けて通るべき道筋を意識した目標で、今までの削減努力の延長線上では決して達成できない。企業にとっては、経営基盤を『脱炭素社会』に対応したものに変える、そして国民にとっては生活の中で温室効果ガスを排出しない選択をするきっかけになると思う。そして政府は、この目標を現実のものにするための具体的な政策を打ち出すことが次の課題だ」と話していました。