千葉の原発避難者の集団訴訟
国にも賠償命じる 東京高裁

福島第一原子力発電所の事故で千葉県に避難した人たちが訴えた集団訴訟の2審の判決で、東京高等裁判所は、国の責任を認めなかった1審判決とは逆に、国にも賠償を命じました。

原発事故で千葉県に避難した40人余りが国と東京電力に慰謝料などを求める訴えを起こし、1審の千葉地方裁判所は津波対策をとっても原発事故は避けられなかったとして国の責任を認めませんでした。

19日の2審の判決で東京高等裁判所の白井幸夫裁判長は「平成14年に国の地震調査研究推進本部が公表した長期評価に基づいて津波の評価をしていれば、原発の敷地の高さを大きく超える津波が来る危険性があることを認識できた。防潮堤の設置などの対策をとれば、すべての電源を喪失する事態にならなかったと認めるべきだ」と指摘し、1審とは逆に国の責任を認めました。

また「元の居住地へ帰るために暫定的な生活を続けるか、帰るのを断念するかといった、意思決定をしなければいけない状況に置かれること自体が精神的な損害だ」として、避難生活に対する慰謝料だけでなく、生活の基盤が大きく変わったことについても賠償すべきだという判断を示しました。

そのうえで、東京電力と国に対しておよそ2億7800万円の賠償を命じました。

原発事故で避難した人たちなどが国に賠償を求めた集団訴訟の高裁判決は全国で3件目で、国の責任を認める判決は去年9月の仙台高裁に次いで2件目となります。

原告「希望を持てる判決」

判決後の会見で、福島県南相馬市から千葉県君津市に避難した、原告の南原聖寿さんは「昨夜は寝付けなかったが、いい判決が聞けたのでうれしく思います。希望を持てる判決で、びっくりしています」と話していました。

東京電力と原子力規制委がコメント

東京電力は「原発事故により、福島県民のみなさまをはじめ、広く社会のみなさまに大変なご迷惑とご心配をおかけしていることについて、改めて心からお詫び申し上げます。今後、判決内容を精査し、対応を検討してまいります」とコメントしています。

また、原子力規制委員会は「事故を踏まえて策定された新規制基準への適合性審査を厳格に進めていくことにより、適切な規制を行ってまいりたい」とコメントしています。