森会長辞任表明 組織委
緊急会合 【発言詳細】

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の緊急の会合が開かれこの中で森会長は「きょうをもちまして会長を辞任いたそうと思います」と述べてみずからの女性蔑視と取れる発言の責任を取って会長の職を辞任する考えを明らかにしました。

大会組織委員会の森会長の「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」といった発言を巡っては、本人が発言を撤回して謝罪したあとも国内外から批判が続きました。

12日は組織委員会の理事と評議員による緊急の会合が開かれ、この中で森会長があいさつし「きょうをもちまして会長を辞任いたそうと思っています。大事なことは、オリンピックをきちんと7月に開催することで、私がいることで準備の妨げになってはならない」と述べて、会長の職を辞任する考えを明らかにしました。

そのうえで「私自身は女性を蔑視するとかそういう気持ちは毛頭ありませんし、これまでも障害のある人、ない人、すべて同じように扱って議論してきました」と釈明し「このひと言でこうなったことは私自身の不注意もあったが、長い83年の歴史の中で本当に情けないことを言ったもので、皆様に大変、ご迷惑をおかけした」と悔しさをにじませました。

最後に森会長は「会合では後継者の選定をどうするか、率直な意見をいただいて会長として最後の意味のある会であったと心に残るようにしたい」と述べました。

会合には森会長に後任の会長への就任を打診され引き受ける意向を示した川淵三郎氏も出席していますが、川淵氏は会合の中で会長への就任を要請されても一転して断る考えを示しているということです。

IOCの関係者や一部の理事からは透明性の確保が重要だという指摘が出ていて、会合では組織委員会の中にアスリートを入れた選考のための委員会を新たに設置することなど後任の会長の選定方法を巡っても意見が交わされるとみられます。

東京大会は、開催まであと5か月余りとなる中、運営を担う組織委員会のトップが交代する異例の事態となりました。

森会長 冒頭発言

森会長は「今回、私の不適切な発言が原因で大変混乱させてしまいました。理事の皆さん評議員の皆さん、多くの皆様に大変ご迷惑をかけて誠に申し訳ない」と述べました。

そして「すでに報道されているとおり、きょうをもちまして会長を辞任いたそうと思っております」と述べました。

「私がいることが妨げになる」

さらに森会長は「オリンピックを開催するための準備に私がいることが妨げになる」と述べました。

「会長である私がよけいなことを申し上げた」

また森会長は「オリンピックとパラリンピックを開催するという強い方針で準備を進めていたやさき、会長である私がよけいなことを申し上げた。解釈のしかただと思うが、こういうことを言うと悪口を書かれる。女性の皆さんを支えてきたし、男性よりも女性に発言してもらうよう絶えずすすめてきた」と話しました。

「女性を蔑視するとかは毛頭ない」

そのうえで「女性と男性の比率はほぼ完璧な仕上がりができたと思っております。女性を蔑視するとかは毛頭ない。このひと言でこうなったことは私自身の83年の歴史の中で情けないことを言ったものだ」と述べました。

「IOC会長らからねぎらいのことばいただいた」

また「IOCのバッハ会長らと電話会談をしてねぎらいのことばをいただいた。『ここまでしっかりやってくれた。東京オリンピック・パラリンピックの大きな成果だ』と称賛をいただいた」と述べました。

「老人が悪いように言われるのは極めて不愉快」

そして森会長は「誰かが老害といったが、老人も世界のため、日本のために頑張ってきた。老人が悪いように言われるのは極めて不愉快。そんな愚痴を言ってもしかたがない」と述べました。

「命あるかぎりスポーツ振興のためにさらに研さんしたい」

さらに「最後は後継者の選定をどうするか、取り計らいがあると思うが、率直な意見をいただいて意味のある会であったと会長として最後の会として心に残るようにしたい。命あるかぎりスポーツ振興のためにさらに研さんをしていきたい」と述べました。

IOCバッハ会長が声明「辞任の決断 全面的に尊重」

森会長の辞任表明を受け、IOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長は声明を発表し、「森会長の辞任の決断を全面的に尊重し、その理由を理解しています。同時に過去数年間に渡る森会長の組織委員会での多大な貢献に感謝しています。IOCは、ことし、安全で安心な東京大会を実現するために、森会長の後継者と手を携えて努力を続けていきます」とコメントしました。

そのうえで後任の会長の選出に向けては「組織委員会から新会長を決定するために適切なプロセスを踏むと連絡を受けており、これを歓迎する」としています。

開幕まで半年切る中でのトップ交代 組織委は正念場に

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会が発足した7年前から会長職を務めてきた森会長は、総理大臣経験者としての幅広い人脈やきめこまやかな調整力を生かし、国家的なイベントの準備の旗振り役を担ってきました。

IOC=国際オリンピック委員会や東京都、政府、それに国際競技団体などとの間で複雑な調整を行いながら、経費削減を図るための競技会場の見直しや大会の延期に伴うスポンサー企業との契約の延長を実現させるなど、難しい課題を克服することができたのは森会長の功績だと大会関係者は口をそろえて指摘します。

東京大会に向けては来月下旬にオリンピックの聖火リレーがスタートし、4月には新型コロナウイルスの対策を踏まえたテスト大会が再開されます。

さらに春までには観客の数や海外からの受け入れをどうするか決めるという重大な局面を迎えます。

そして森会長の発言とそれをめぐる組織委員会の対応をきっかけに、新型コロナウイルスの感染拡大によって開催への賛否が分かれていた世論はさらに厳しくなり、ボランティアやスポンサー企業といった大会を支える人たちにも不信感が広がっています。

後任の会長選定をめぐっても森会長に就任を打診された川淵三郎氏が引き受ける意向を示していましたが、IOCの関係者や一部の理事から透明性の確保が重要だという指摘が出て、組織委員会の中にアスリートを入れた選考のための委員会を新設する方向で調整しています。

実務的な課題を解決しながら、大会が掲げる「多様性と調和」に沿って国内外の理解を得ることができるのか、開幕まで半年を切る中でトップの交代という異例の事態を迎え、東京大会に向けて組織委員会は正念場を迎えています。

後任会長には「若い世代」「女性」望む声も

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長の後任の選定に向けては、IOCの関係者や一部の理事からは透明性の確保が重要だという指摘が出ていて、組織委員会では、アスリートを入れた選考のための委員会を新たに設置して選定する方向で調整が進められていることが分かっています。

こうした中、新しい会長については理事などの中から「若く活発なかたに会長になってほしい。理事をないがしろに新会長の名前が挙がってはいけないと思う」とか、女性にすべきではないかという若い世代や女性の会長を望む声も上がっています。

会合行われたビルの周囲には大会中止求める人なども

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の理事と評議員による緊急の会合が行われた東京・中央区にあるビルの周囲には東京大会の中止を求める人や森会長の発言に抗議する人たちなど、およそ30人が集まっていました。

集まった人たちは「東京オリンピックは中止に」とか「森会長の発言を許さない」、「会長の後任を決める資格はない」と書かれたプラカードなどを掲げながら「オリンピックはどこにも要らない」と拡声機を使って繰り返し呼びかけていました。