五輪・パラ組織委が会見
森会長辞任表明受け

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長がみずからの女性蔑視と取れる発言の責任を取って辞任する考えを明らかにした会合のあと組織委員会の武藤事務総長は記者会見を開き「後任の会長は早急に決める必要があり透明性を高めるためアスリートを中心とした選考のための委員会を設置した」と述べました。
大会組織委員会の森会長は「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」といった発言を巡り、12日、組織委員会の理事と評議員による緊急の会合で責任を取って辞任する考えを明らかにしました。
会合のあとの記者会見を開いた組織委員会の武藤事務総長は「会長の選任は国民にとって透明性のあるプロセスでなければならず選考の説明責任を果たすべきだ」と述べました。
そのうえで「後任の会長は早急に決める必要があり透明性を高めるためアスリートを中心とした選考のための委員会を設置した」と述べました。
3点について意見交換

この中で武藤事務総長は「いろいろ濃密な意見交換が行われた。議題の1つは冒頭の森会長の辞意表明、そのあと参加者のみな様からのご意見を伺うセッションがあった。第2の議題はジェンダーの平等についてどのような取り組みをすればよいか、第3の議題が後任会長の選任手続き、この3点について意見交換をした」と述べました。
会合で「発言はオリンピック憲章に反し不適切」などの意見
武藤事務総長は「会合ではかなり大勢の方がいろいろなことをおっしゃいました。『発言はオリンピック憲章に反するもので不適切なものだ』とか『どう見ても適切ではない』などという意見が出ていました」と述べました。
IOCは評価
森会長については「これまで大会組織委員会の会長として7年余り、大会準備に尽力してきた。IOCによると今までの大会と比べて順調に進んでいたという評価をされていた。これは森会長の尽力だ」と述べました。
「意思を受け継ぎ成功を」「構造的な問題ある」など様々な意見
「森会長は政治家として、これまでスポーツ界の発展に貢献してきた。そのことについて触れる方もいた。この段階で会長辞任、そういうご判断は尊重するが、われわれは意思を受け継いで成功させなければいけないという意見もあった。会長の発言が不適切だとしたうえで、より構造的な問題もあり、退任だけですべてが解決するわけではないという意見があった」と述べました。
ジェンダーバランスを配慮 世界にもっと発信すべき
「参加者からはジェンダーの平等にいかに貢献するか熱心な協議が行われたことを具体的な形で見える化をするスピード感が大事という指摘があった。さらに、これまでジェンダーバランスを配慮した大会にするよう進めてきたが、そのようなことを世界にもっと発信すべきだ」と述べました。
「プロジェクトチームを作っては」という声も
「会合では理事会の幹部、副会長以上には女性がいないという指摘もあった。他方でジェンダーの平等でできることの限界があるので、プロジェクトチームを組織委員会内に作ってはどうかという声もあった」と述べました。
具体的な人選はこれから
「メンバーは理事会のメンバー、ひと桁くらいの人数にして男女ほぼ半々、アスリート中心とし、国や都、JOCの関係者にも入ってもらう必要がある。具体的な人選はこれから行うこととする」と述べました。
後任の会長 候補者の検討委員会を設置
後任の会長について「早急に決める必要がある。透明性の高いプロセスでないといけない。候補者の検討委員会を設置することにする」と述べました。
川淵氏は「辞退」ということばを

武藤事務総長は「川淵さんからは『自分が会長の後任という報道があって、それをご覧になり不愉快な思いをした方もいらっしゃるのではないか。そういう意味ではおわびしたい』という話があった。会長になることは考えていないと言いますか、指名されても辞退する、『辞退』ということばを使っておられた」と述べました。
後任 できるだけ早く決めたい
後任の会長を決める期限についての質問で「何日という数字は言えないができるだけ早く決めたい」と答えました。
辞意の引き止め 個人的な意見述べたつもりはない
自身が森会長を慰留したと言われていることについて「2人の間のやり取りなので、具体的なことを申し上げるのは差し控える」としたうえで「会長の辞意を引き止めたと言われているが、個人的な意見を述べたつもりはない。私のもとには多くの関係者から、『ここで会長が辞めることになると準備の支障になる』と、会長の経験や人脈が国際的、国内政治的関係者の人脈が大事であって続投が望ましいという意見が寄せられていた。そういうことを私は申し上げた」と述べました。
川淵氏の辞退 行き違いもあったかも
川淵氏が会長への就任の要請を断った経緯について「多少の誤解と言いますか、行き違いもあったかもしれないが、どうしてそういう結論に至ったのか不透明だ」と述べました。
個人的な意見 言う立場ではない
報道陣からの「森会長が辞任する必要はないと思ったか」という質問に対して「大勢の意見を伝えるのが私の使命で個人的に辞めるべきだとか辞めるべきではないと個人的な意見を言う立場ではない。大勢の意見を申し上げた」と答えました。
女性の比率増 できるだけ早く
武藤事務総長は、女性の比率を増やすことについて「女性比率を増やすということは方向としては正しいご意見だ。組織委員会が判断して行動すればできることだ。具体的に何日までと申し上げることは困難だが、できるだけ早く行いたい。次の理事会は3月22日に予定されているので、できればそれに間に合うように行動していくことが望ましいと思っている」と述べました。
森会長の役職就任 現時点で話は出ていない
森会長が今後、何らかの役職に就くかどうかについて「現時点ではそういう話は出ていない」と述べました。
候補者の名前 全くあがっていない
会合で後任会長の候補者の名前が出たかについて「全くあがっていない。きょうはそういう話をせず、あくまでも手続きを決める日だった」と述べました。
会長の選考 性別を議論する必要 全くない
新会長に女性がふさわしいかを問われ「私は会長の選考にあたって、性別を議論する必要は全くないと考えている。適任者を選ぶことにつきる」と述べました。
組織委の問題も指摘 重く受け止めたい
武藤事務総長は、組織のガバナンスや意思決定の透明性について「森会長の発言に関連して組織委員会の問題も指摘された。それは重く受け止めたい。組織委員会のガバナンスは非常に重要であり、この7年余り組織委員会のマネジメントを重要な点としてやってきた。引き続き、そうした観点から注意深く運営していきたい」と述べました。
森会長は発言を問題だという認識
森会長の辞任が自身の発言が理由ではないという認識かどうかを問われ、「森会長が『大変ご迷惑をかけた』と言っているのは何度もお聞きした。それは解釈のしすぎではないか。反省して撤回するとまで言っている。発言が問題だという認識を十分持ったうえで、オリンピックの準備に悪影響があってはいけないと考えていると素直に解釈している」と述べました。
日本 多様性まだ十分ではない
武藤事務総長は、記者会見の最後に「東京大会のビジョンを作るときに、多様性を認めたうえで調和をどのようにするかという設定をした。日本は、多様性についてある程度寛容のある近代社会になっているとは思うが、世界のスタンダードで見るとまだ十分ではない。オリンピックだけで解決するとは思っていないが、与えられた範囲で貢献をしていくと考えてプロジェクトチームを立ち上げていきたい」と述べました。