【専門家・海外などの反応】
森会長 女性めぐる発言

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長の発言をめぐっては、その他、各方面から反応が寄せられています。

識者「わきまえたら意味がない」

政治とジェンダーに詳しい上智大学法学部の三浦まり教授は「女性が発言し、意思決定のプロセスに入るのを歓迎していないことがあからさまに感じられ、公の場でそうした発言が出たことに驚いている」としたうえで「女性や、若者、障害者、外国人など、多様な人が意思決定に入ることで、同質の人だけでは気付かない視点を発見できる。どの組織も意思決定のプロセスにさまざまな人が関われるよう努力しており、発言はこうした時代の潮流に真っ向から反するものだ」と指摘します。

そのうえで「森会長の発言を本来は組織の内部の人が正すべきなのに、外部から指摘されるまで気付かなかったことも問題だ。自浄効果がなかった組織の責任も問われる」としています。

また、森会長が「組織委員会にも女性がいるがみんなわきまえている」と述べたことについて「世界中の女性がセクハラ被害を訴えた#MeToo運動のように、沈黙せず痛みを訴えていいのだという認識が浸透し、うるさいと思われても男性中心の社会に挑戦し、行動しようという連帯の輪が広がっている。女性が議論に参加しても、『わきまえた』発言しかしないのであれば、多様な人が意思決定に関わる意味がない。多様な意見を取り入れることはまさに『わきまえない人』を参加させていくことだと認識すべきだ」としています。

学会が緊急声明「性差別改善の具体策求める」

スポーツとジェンダーに関する学会、「日本スポーツとジェンダー学会」は、緊急の声明を出しました。

声明では「森氏の発言とその場の関係者の反応は、性差別が、日本のスポーツ界をリードすべき組織にまん延していることの現れだと判断されてもやむを得ないものだ」と指摘しています。

そのうえで、発言は客観的な証拠に基づかず女性の特性を恣意的(しいてき)に作り上げ、社会進出を否定するものだと受け止めたとして、性差別的な認識の改善に向けた明確な方針と具体策の提示を求めました。さらに「おわびと撤回だけではなく、真にこの問題と向き合い、よりよい方向にむかうためのことばがスポーツ組織のリーダーに求められている」としています。

学会の会長を務める、中京大学の來田享子教授は「オリンピック憲章では性差別などあらゆる差別を禁止していて、それに基づいて世界で差別をなくしていこうと具体的な取り組みを始めているところで、憲章に違反している」と批判しています。

また、評議員会の出席者から発言時に異論が出なかったことについて「国際オリンピック委員会はセクシャルハラスメントについて、何もせず傍観することも加害者だとしている。出席した評議員も指摘する必要があった」と指摘しています。

日商三村会頭「大きな影響 極めて残念」

日本商工会議所の三村会頭は「本人は反省しているが、立場上、国際的なものも含めて、大きな影響があったことは極めて残念だ。最後までオリンピックの開催については希望を持ちながら進めるという、森会長のことばにわれわれは全面的に賛同しているが、今回の発言が水を差さなければいいと思う」と述べました。

海外メディアの反応

海外メディアは批判的に伝えています。

このうち、AP通信は「女性を蔑視するコメント」としたうえで、「政界や経済界で女性が占める人数が非常に少ない日本において彼の発言は騒動を呼んでいる」と伝えています。

また、イギリスの公共放送BBCは、森会長について「首相としての在任期間中には思慮のない言動で知られている」などと報じています。

このほか、ロイター通信は、森会長の発言を「性差別的な発言」と批判したうえで、日本のソーシャルメディア上で森会長の辞任を求める投稿などが相次いでいると伝えています。

さらにロイター通信は、森会長が4日午後、報道陣の取材に応じて謝罪したものの、辞任は否定したことなどを紹介したうえで「国民の批判を和らげる可能性は低く、新型ウイルスの感染が広がり、多くの人がオリンピックの開催に慎重になるなか、国民の気持ちをさらに遠ざける可能性がある」と報じています。