「女性が多い理事会は時間が
かかる」五輪組織委 森会長

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長がJOC=日本オリンピック委員会の評議員会で女性の理事を増やす目標に対して「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと発言しました。

JOCは、3日午後、臨時の評議員会を開きオンラインも含めて51人が参加するなかで、ことし6月の役員改選に向けた規定の改正が報告され、女性の理事の割合を40%以上にする目標も示されました。

評議員会に出席した東京大会組織委員会の森会長は、会合の最後にあいさつし、女性の理事を増やす目標に対して「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言しました。

その上で、自身が会長や名誉会長を歴任した日本ラグビー協会で女性の理事が増えていることを例にあげ「今までの倍、時間がかかる。女性というのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげて言うと自分も言わなきゃいけないと思うのだろう。それでみんな発言する」などと述べました。

JOCの評議員会はふだん報道各社に公開されていますが緊急事態宣言が出されている中で、きょうの会合は各社に映像が配信され、森会長の発言に対しては出席者から指摘などは出ませんでした。

全柔連 溝口紀子さん「森氏にはジェンダーバイアス解消を」

バルセロナオリンピック、柔道女子52キロ級で銀メダルを獲得し、現在は全日本柔道連盟で評議員を務める溝口紀子さんは森会長の発言についてインターネット上にコメントを書き込みました。

この中で溝口さんは「女性理事の『発言の時間をある程度、規制をしていかないとなかなか終わらない』のは、女性理事の問題ではなく、会議進行役の手腕によるものだと思います」とコメントしました。

そのうえでみずから所属する柔道の連盟を例にあげ「かつての全柔連は、これまで男性中心のトップのイエスマンで構成され、閉塞(へいそく)的な『内輪のルール』のみによって運営されていました。法令遵守よりも組織内の慣習や人間関係への配慮が優先され、選手選考や公金不正などガバナンスに問題があると指摘されました」と紹介しました。

そして「現在、再発防止策として、スポーツ界ではスポーツ団体ガバナンスコードの実務的な運用がされています。とりわけ『女性理事の目標割合を40%以上』を設定することで、会議を活性化することが求められています。森氏には五輪組織委員会のトップとしてジェンダーバイアスを解消し、オリンピズムの実現、スポーツガバナンスの模範となるべく、発信力を発揮してほしいと思います」と締めくくりました。

公明 北側氏「発言は不適切 早く釈明を」

公明党の北側副代表は、記者会見で「発言は不適切と言わざるをえない。森会長自身に、早く釈明してもらいたい」と述べました。

国民 玉木氏「時代錯誤 辞任含めて検討を」

国民民主党の玉木代表は、記者会見で「時代錯誤の発言だ。オリンピックの開催にみずから逆風を吹かせるもので、状況はさらに厳しくなるのではないか。国際的にも問題となっており、円滑な開催に向けて障害となるなら、会長辞任も含めて検討すべきだ」と述べました。

小池都知事「女性の声生かすのはあたり前」

東京都の小池知事は「真意のほどはご本人から聞いていただきたい」と述べました。

そのうえで「都にはたくさんの審議会があるが、私自身知事になって女性の比率を大幅にあげている。優秀な女性はたくさんいるので都政をより層をあつく、多様性に富んだものにするため参加してもらっている。女性の声を生かすというのは、これはもうあたり前の話で、話が長いのは人によるのではないか」と述べました。

海外メディアも報道「女性の制限を示唆」

森会長の発言についてアメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズは「東京オリンピックの会長が会議での女性の制限を示唆」という見出しで「東京大会組織委員会の会長が会議で女性は話しすぎると示唆したあと、東京オリンピックの主催側は開催反対論やコストに加え新たな怒りに直面している」と伝えました。

記事では、ツイッター上で森会長の辞任を求める声が出ているとした上で『森氏の発言は女性に対する差別にほかならない』とか『問題は誰も彼に異を唱えなかったことだ』という投稿を引用しています。

フランスのAFP通信は「東京2020の会長が会議で性差別発言との報道」との見出しで、日本のメディアの報道内容を紹介した上で、各国の男女の格差を示す世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数で去年、日本の順位が153か国中121位だったと指摘しています。

森会長「コロナがどんな形でも開催」発言で
田村淳さん 聖火ランナー辞退

東京オリンピックの聖火リレーについて、お笑いコンビ、「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳さんが愛知県犬山市で走る予定だった聖火ランナーを辞退すると発表しました。

これは田村淳さんが、3日、自身の公式ユーチューブチャンネルで明らかにしました。

愛知県犬山市の観光特使を務める田村淳さんは、東京オリンピックを前に行われる予定だった去年4月の聖火リレーでランナーとして犬山市を走ることになっていました。

延期となったオリンピックの聖火リレーでは、去年、内定していたランナーが走る予定となっています。

こうした中、田村淳さんは「大会組織委員会の森喜朗会長が『東京オリンピックは新型コロナウイルスがどんな形でも開催するんだ』という理解不能な発言をされた」などとして聖火ランナーを辞退すると表明しました。

また「五輪開催を願っているが、延期派だ。またいずれ五輪が東京で開催されることを強く願っている」と述べました。

これについて、犬山市の山田拓郎市長はNHKの取材に対し、田村さん側から市に連絡があったとしたうえで「聖火ランナーとして走られることを楽しみにしていたが、辞退は田村淳さんなりの判断だったと尊重したい」と述べました。