特措法 受け入れ拒否の
医療機関公表など 論戦

新型コロナウイルス対策の特別措置法などの改正案は、参議院の内閣委員会と厚生労働委員会の連合審査会で質疑が行われ、患者の受け入れを拒否した医療機関名の公表の在り方や、「まん延防止等重点措置」を講じる際の要件などをめぐり論戦が交わされました。

新型コロナウイルス対策の実効性を高めることを目的に、事業者や感染者への罰則を盛り込んだ特別措置法などの改正案は、3日参議院の内閣委員会と厚生労働委員会の連合審査会で質疑が行われています。

自民党の羽生田俊氏は、感染症法の改正案について「患者の受け入れを拒否した医療機関名を公表するとなっているが、医療機関から不安視する声が多々、届いている。適用までの運用について、見解を示してほしい」と質問しました。

これに対し、田村厚生労働大臣は「基本的には協力が前提だ。受け入れてもらえる状況にもかかわらず、受け入れられないとなれば、場合によっては勧告という形になるが、正当な理由があれば、公表までいかない。病床を確保できなければ公表しても何の意味もなく、よほどのことがないと公表に至らない」と述べました。

立憲民主党の打越さく良氏は特別措置法の改正案に盛り込まれている「まん延防止等重点措置」を講じる際の要件について「あいまいで恣意的(しいてき)な運用のおそれがあると、多々指摘されている。早期に示してもらいたいが、いつごろを考えているのか」とただしました。

西村大臣は「基本的には『ステージ3』相当での適用を想定しているが、具体的な基準は、感染の状況や治療薬など、いろんな状況で変わり得るので、できるだけわかりやすく書きたい。『ステージ3』の目安となる指標を念頭にできるだけ早く示したい」と述べました。

また、西村大臣は、緊急事態宣言をさらに延長する可能性について問われたのに対し「3月7日までを期限として、延長させていただいたので、今はそこまでに感染をおさえていくことに全力を挙げるということだ」と述べました。

改正案は、3日午後の内閣委員会で賛成多数で可決される運びで、3日夜開かれる参議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党や立憲民主党などの賛成多数で可決・成立する見通しです。

加藤官房長官「『正当な理由』限定的に解釈されるべき」

加藤官房長官は午後の記者会見で、特別措置法などの改正案で罰則を適用する判断となる「正当な理由」を明確にすべきだという指摘が出ていることについて「特別措置法の改正案の『正当な理由』の解釈は感染拡大を抑える趣旨から、限定的に解釈されるべきものと考えている」と述べました。

また「感染症法についても、患者などの個人の権利、利益と感染症の予防、まん延防止という公共の利益を考慮し、まずは都道府県知事において判断される。個人の人権を尊重し、ご本人の理解と協力を得ながら取り組みを進めていくことが基本だ。罰則の適用の具体例や判断材料などを示し、現場で適切かつ円滑な運用が行われるよう努めていく」と述べました。

また、施行日については「法案が可決したあかつきには、速やかに公布できるよう手続きを進めたい。可決・成立すれば、きょう公布し、今月13日午前0時から施行ということになる」と述べました。

公明 竹内氏「法律施行で宣言解除を早められれば」

公明党の竹内政務調査会長は、記者会見で「早期に成立する見通しとなったことは、非常によかった。法律を施行することにより、緊急事態宣言の解除を早めることができれば望ましい」と述べました。

維新 馬場氏「満点ではないが1歩前進」

日本維新の会の馬場幹事長は記者会見で「100点満点とは言えないが、国民が改正に期待しており、1歩前進した内容なので賛成を決めた。ワクチン接種が始まっても、再び感染が広がるおそれはあると思うので、今回の法改正に盛り込まれなかった事業者への補償の必要性について、引き続き訴えていきたい」と述べました。

共産 小池氏「医療現場からは懸念の声」

共産党の小池書記局長は、記者団に対し「感染症法の改正案から刑事罰が除かれたとはいえ、行政罰が残されていて、医療現場からは『かえって保健所の業務に大変な負荷がかかるのではないか』などという懸念の声があがっている。また、私権制限がなし崩し的に拡大される内容で容認できない」と述べました。

国民 玉木氏「党として反対」

国民民主党の玉木代表は、記者団に対し「党として反対を決めた。補償の部分が極めてあいまいな形で大変残念だ。『十分な補償をしなくてよい』という免罪符を政府に与えることになり、修正案に賛成した政党も含めて責任を負うべきだ。今は影響を受けている個人や事業者への財政的支援にこそ力を入れなければならず、新たに提案していきたい」と述べました。

神奈川 黒岩知事「高く評価」

新型コロナウイルス対策の特別措置法の改正案が成立する見通しとなったことを受けて、神奈川県の黒岩知事が記者団の取材に対し、「全国知事会が要望していた内容が取り入れられていて、高く評価したい」と述べました。

そのうえで、黒岩知事は、営業時間の変更などの命令に応じない事業者に行政罰としての過料が設けられた点について、「罰則ができたからといって、これを振りかざして行使することにはならないが抑止効果はあると思う。今後、命令を出す際や罰則を課す場合の手続きについて国の方でしっかり定めてほしい」と話しました。

また、国や自治体が影響を受けた事業者に対して行う財政的な支援については、「協力金の金額を今のような一律にするのか、事業の規模に応じた金額にするのかなど、具体的な部分がまだ残っている。これも国の方で検討してもらいたい」と述べました。