英大手新聞“五輪中止”報道
「事実は全くない」政府

東京オリンピック・パラリンピックについて、イギリスの大手新聞が、日本政府が非公式に中止せざるをえないと結論づけたと報じたことを受け、日本政府は22日「そのような事実は全くない」と否定するコメントを発表しました。

イギリスの大手新聞「タイムズ」は、現地時間の21日、夏の東京大会について、日本政府が、新型コロナウイルス感染症のため非公式に中止せざるをえないと結論づけたなどと報じました。

これに対し日本政府は22日「そのような事実は全くない」と否定するコメントを発表しました。

コメントでは「東京大会については、競技スケジュールと会場が決定されており、夏からの大会の成功に向けて、関係者が一丸となって準備に取り組んでいる」としています。

そのうえで「政府としては、感染症対策を万全に、安全・安心な大会の開催に向けて、引き続き、IOC=国際オリンピック委員会や大会組織委員会、東京都などと緊密に連携して、準備をしっかりと進めていく」としています。

組織委「開催に完全に注力」

イギリスの大手新聞が報じたことを受け、大会組織委員会はコメントを発表しました。

この中で組織委員会は「政府、東京都、組織委員会、IOC、IPCなどすべての関係機関が、ことしの夏の大会の開催に完全に注力している。組織委員会としては、一日も早い社会の回復を願い、ことしの夏の安全で安心な大会開催実現に向けて、引き続き、関係団体と緊密に連携し、準備に尽力していきたい」としています。

小池都知事も報道を否定「抗議すべき」

東京オリンピック・パラリンピックについて、イギリスの大手新聞が日本政府が非公式に中止せざるをえないと結論づけたと報じたことについて、東京都の小池知事は「私は一切聞いていない。むしろ抗議を出すべきではないかと思っている。これまでも国と組織委員会、そしてIOCとしっかり詰めてきていて、その中からは中止や延期という話は出てきていないのが事実だ」と述べ、報道を否定しました。

IOC調整委員長や各国の五輪委も否定

イギリスの大手新聞が報じたことを受け、東京大会の準備状況を監督するIOC=国際オリンピック委員会のコーツ調整委員長や選手団を派遣する各国のオリンピック委員会は報道の内容を否定するコメントを出しています。

IOCの副会長も務めるコーツ調整委員長は、地元オーストラリアのメディアの取材に対して「大会の中止に関する議論は何も行われていない。われわれは菅総理大臣や大会組織委員会の森会長からこの記事のようなメッセージを受け取っていない」と述べて報道の内容を否定しました。

また、オーストラリアオリンピック委員会は「東京大会に関するうわさについて」と題するコメントを発表し、「オーストラリア選手団が東京大会に出場し、ウイルスに感染することなく帰国することを確実にするための計画を続行する」などと述べ、東京大会に予定どおり選手団を派遣する意向を表明しました。

USOPC=アメリカオリンピック・パラリンピック委員会も声明を発表し、「公式の連絡はすべてIOCや大会組織委員会、そして日本政府から入る。大会が予定どおり行われないことを示す情報は受け取っていない。われわれはこれまでどおりこの夏の大会に向けてアメリカの代表選手の健康と準備に集中していく」とコメントしました。

このほか、カナダオリンピック委員会のシューメーカーCEOは、SNSを通じて「われわれは報道されているような何らかの決断を日本政府が行ったとは認識していない。カナダオリンピック委員会は東京大会の安全な開催が可能だと自信を持っている」とコメントしています。

橋本担当相「開催の方針に変わりはない」

橋本担当大臣は「海外メディアの話は政府の見解ではない。政府の方針は変わらず、今までどおり、IOC=国際オリンピック委員会や組織委員会、東京都と一丸となって開催に向けて準備を進めている」と述べました。

また、橋本大臣は、坂井官房副長官が「海外の状況などもあり、どこかの段階で実際に開催するかどうか判断を行う」と述べたことについて、「政府の方針とは全く異なり、この夏の開催はすでに決定している。IOCのバッハ会長から、事実確認の電話があったので、これまでの方針に何ら変わりのないことをお伝えした」と述べました。

日本医師会会長 「最大の支援 患者減らすことに尽きる」

日本医師会の中川会長は、都内で講演し「現時点で、オリンピック・パラリンピックの開催が可能かどうか言及するつもりはないが、選手団だけでも大変な数だ。もし新たな新型コロナウイルスの患者が発生すれば、今の医療崩壊が頻発している状況のもとで受け入れ可能かというと、可能ではない」と述べました。

そのうえで「ワクチンが劇的に効力をもたらしたり、特効薬が急にできるなど、神がかり的な出来事があれば別だが、今の状態で患者の受け入れがこれ以上増えると、どうなるかと思う。医療従事者は心身ともに疲弊しており、最大の支援は患者を減らすことに尽きる」と述べました。