【記者解説】安倍前首相
任意聴取で求められた説明は

「桜を見る会」の前日夜に開催された懇親会をめぐる問題で、東京地検特捜部が21日、安倍前総理大臣本人から任意で事情を聴いたことが関係者への取材で分かりました。特捜部は安倍氏にどのような説明を求めたとみられるのか、また、安倍氏本人が刑事責任を問われる可能性はあるのか、社会部・横井悠記者が解説します。

Q.特捜部が説明を求めたのは主にどんな点か?

(記者)
懇親会の収支を政治資金収支報告書に記載していなかったことへの安倍氏本人の認識です。

懇親会を主催したみずからの後援会の収支報告書の記載内容を把握していたのかどうか、そして、不記載の事実をいつ知ったのかなどについて、安倍氏から説明を求めたものとみられます。

Q.国会答弁の経緯についても説明を求められたのか?

(記者)
政治資金規正法では、あくまで「収支報告書に記載しなかった段階」での安倍氏の認識や関わりが問われますので、その後の国会答弁の内容は、今回の容疑と直接関係はありません。

安倍氏は「後援会の収支は一切ない」と国会で答弁していました。

しかし、安倍氏周辺の関係者は「担当者が事実と異なる内容を安倍氏に答弁してもらうしかないと判断した」と説明しています。

事実と異なる国会答弁を繰り返した経緯は、収支報告書の記載への認識の有無にもつながります。

このため特捜部は、こうした経緯についても安倍氏から説明を求めたものとみられます。

Q.安倍氏本人が刑事責任を問われる可能性は?

(記者)
安倍氏本人の刑事責任を問うには高いハードルがあると言えると思います。

政治資金規正法は、政治団体がイベントなどを主催した場合、その収入や支出を収支報告書に記載することを義務づけています。

しかし、報告書への記載義務があるのは、政治団体の会計責任者やそれを補佐する人が対象になっていて、政治家本人は、不記載を具体的に指示するなど「共謀」した事実が認められた場合に限って罪に問われます。

安倍氏周辺の関係者は、去年の年末に、安倍氏本人が事務所の秘書に会費以上の支出がないか尋ねた際、担当者が「5000円以上の支出はない」と事実と異なる説明をしていたとしています。

安倍氏本人も不記載への関与を否定しているとみられ、特捜部は刑事責任を問うのは難しいと判断しているものとみられます。