青森の中間貯蔵施設 共同
利用の意向表明 電事連

大手電力会社でつくる電気事業連合会は、原子力発電所にたまる使用済み核燃料の対策として、東京電力など2社が青森県に建設中の「中間貯蔵施設」について、他の電力会社との共同利用の検討に着手したい考えを明らかにしました。

青森県むつ市に東京電力と日本原子力発電が建設中の「中間貯蔵施設」は原発の貯蔵プールにたまり続ける使用済み核燃料を一時保管する施設です。

保管の対象は現在2社のみとなっていますが、全国の原発のプールの容量は埋まりつつあり、使用済み核燃料を一時保管する場所の確保が電力各社で共通する課題となっています。

これについて電気事業連合会の池辺和弘会長は17日、梶山経済産業大臣と面会し、「中間貯蔵施設」を他の電力会社との共同利用の検討に着手したい考えを報告しました。

そのうえで、地元の青森県とむつ市の理解が重要だとして、電気事業連合会として18日、地元を訪問して共同利用の検討状況について説明するとしました。

これに対し梶山大臣は「中間貯蔵施設の共同利用という形で新たな選択肢を検討することは、核燃料サイクル政策を推進するうえで大きな意義があると考えている」と述べ、国としても主体的に関わっていく考えを示しました。

使用済み核燃料をめぐっては、関西電力が原発が立地する福井県から県外に搬出する中間貯蔵施設の候補地を年末までに提示するよう求められていて、こうした事情も考慮したとみられます。

使用済み核燃料は各社共通の課題

原発にたまり続ける使用済み核燃料をどうするかは、電力各社の共通する大きな課題となっています。

廃炉になる福島県内の原発を含め、全国の原発の貯蔵プールの容量は合わせて2万1400トン分ありますが、ことし9月時点で、75%に当たる1万6060トンの使用済み核燃料がすでに入っています。

電力各社は、使用済み核燃料を青森県六ヶ所村にある再処理工場に運んで処理する計画ですが、工場の完成時期はトラブルや不祥事などで延期が繰り返され、現在の完成予定は2022年度上期です。

この再処理工場内にある使用済み核燃料の貯蔵プールもすでに99%が埋まっていて、再処理を開始しないと各地の原発から新たに運び込むことが難しい状況です。

原発の貯蔵プールがいっぱいになると原子炉から核燃料を取り出せなくなって、運転を継続できなくなるため、電力各社は対策を検討してきました。

中間貯蔵施設をめぐる動き

対策の1つとして挙げられた保管場所が「中間貯蔵施設」です。

中間貯蔵施設は一定の期間、冷却された使用済み核燃料をプールから取り出し、金属製の容器に入れて一時保管する施設で、東京電力と日本原電は青森県むつ市で、地元の理解を得たうえで、いち早く中間貯蔵施設の建設に乗り出してきました。

一方、ほかの電力会社も貯蔵施設の確保に向けて動いてきました。

より切実さを増しているのが、福島の原発事故のあと原発が再稼働した関西電力と九州電力、それに四国電力の3社です。

このうち関西電力は、原発が立地する福井県から使用済み核燃料を県外に搬出するよう求められていて、今月末までに福井県以外の場所に中間貯蔵施設の候補地を示すとしていました。

候補地の提示は、運転開始から40年を超えた高浜原発と美浜原発の3基の再稼働に、福井県知事が同意するかどうかの議論の前提にもなっているのです。

こうした状況を受けて関係者からは「むつ市にある中間貯蔵施設を共同利用することができれば、福井県からの求めに対応できる」といった声も出ています。

ただ、中間貯蔵施設は東京電力と日本原電の原発から出た使用済み核燃料のみを一時保管することを前提にしていて、地元の青森県とむつ市は2社と協定を結んでいます。

協定を結んでいない別の電力会社の使用済み核燃料を運び込むとなれば、青森県とむつ市の理解が必要となり、電気事業連合会と経済産業省は18日、青森県内を訪問し、共同利用の検討に入りたい考えを伝えることにしています。

中間貯蔵施設の共同利用をめぐる地元との調整や関西電力と福井県の議論が今後どうなるのか、当面の焦点になります。

プルサーマル 目標達成は見通せず

電気事業連合会の新たな目標ではプルサーマル発電を少なくとも12基で実施するとしていますが、目標に達するかは見通せない状況です。

プルサーマル発電は使用済み核燃料を再利用する国の核燃料サイクル政策の柱に位置づけられ、電気事業連合会は1997年に掲げた目標で、「2010年度までに16基から18基」としていました。

しかし、核燃料のデータ不正問題やトラブルなどの影響で進まず、2009年に見直された目標では、5年先送りとなる「2015年度までに16基から18基」と変更されました。

プルサーマル発電は徐々に導入されていきましたが、2011年に起きた福島第一原発の事故のあと稼働する原発は限られ、現在、実施しているのは福井県にある関西電力の高浜原発3号機と4号機、愛媛県にある四国電力の伊方原発3号機、それに佐賀県にある九州電力の玄海原発3号機の4基にとどまっています。

目標は今回、11年ぶりに見直され、「2030年度までに少なくとも12基」とされていますが、再稼働した4基以外に、プルサーマルを前提にした国の審査を受けているのは4基だけです。

複数の電力関係者は「プルサーマルはプルトニウムを含む特殊な核燃料を原発で使うことから、地元自治体などの理解を得る必要がある。まずは再稼働を優先したく、プルサーマルについては慎重な対応が必要だ」と話していて、目標に達するかどうかは不透明な状況です。

大量のプルトニウム

一方、日本はすでに大量のプルトニウムを保有していて、削減が求められています。

去年末の時点で日本のプルトニウムは国内で保管している分が8.9トン、イギリスとフランスでの海外保管分が36.6トンで、合わせておよそ45.5トンとなっています。

日本で実施されているプルサーマルは現在、フランスに保管するプルトニウムを使っていて、総量は微減の傾向が続いていますが、今後、青森県六ヶ所村の再処理工場が本格操業をすれば、新たにプルトニウムが取り出されることになります。

再処理工場の事業者である日本原燃は国の考え方に沿って、取り出すプルトニウムはプルサーマルに必要な量だけとし、日本のプルトニウムの需給バランスを確保するとしていますが、プルサーマルを行う原発が限られている中で、再処理工場が操業すれば海外に保有しているプルトニウムの削減が進みにくくなる可能性も指摘されています。

プルサーマル 新目標少なくとも12基

大手電力会社でつくる電気事業連合会は原子力発電所の使用済み核燃料から出るプルトニウムを再び利用する「プルサーマル発電」について、2030年度までに少なくとも12基の原発で実施するという新たな目標を示しました。

電力各社は原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、特殊な核燃料に加工して再び原発で使う「プルサーマル発電」を進めています。

電気事業連合会はこれまで、2015年度までに16基から18基の原発でプルサーマルを実施する目標を掲げていましたが、福島の原発事故後、稼働する原発は限られ、現在、プルサーマルを行っているのは関西電力の高浜原発など4基にとどまっています。

こうした中、青森県六ヶ所村の再処理工場や核燃料の加工工場が操業に必要な国の審査に合格し、今後、新たにプルトニウムが取り出される見通しとなったことなどから、電気事業連合会は11年ぶりに目標を見直し、2030年度までに少なくとも12基の原発で実施するとしました。

プルトニウムは核兵器の原料にもなることから、日本は利用目的のないプルトニウムを持たないことを国際的に約束していて、具体的な削減策が求められています。

電気事業連合会の池辺和弘会長は「目標を降ろした訳ではなく、16から18基は必要だと思う。2030年度までに12基という計画は当面の目標という位置づけだ」と述べました。

電事連会長「地元理解がいちばんの課題」

梶山大臣との面会のあと、記者団の取材に応じた電気事業連合会の池辺和弘会長は、中間貯蔵施設の共同利用について、「まずは地元にしっかりと説明して、検討に着手させていただくのがいちばんの課題だ」と述べ、国の協力も得ながら、地元への理解を得ることに全力を尽くす考えを示しました。

その一方で、検討に着手することで、原発が立地する福井県から使用済み核燃料を県外に搬出するよう求められている関西電力の支援につなげる考えがあるのか問われたのに対し「共同利用は電気事業連合会全体として柔軟性を高め、選択肢を広げるという意味で行いたいということだ。施設を利用するかどうかは、それぞれの事業者で判断されることだと思う」と述べました。

関西電力「あらゆる可能性を検討」

東京電力など2社が青森県に建設中の「中間貯蔵施設」について、電気事業連合会が共同利用の検討に着手したい考えを明らかにしたことについて、関西電力は「電気事業連合会の一員として内容は承知している。福井県外での中間貯蔵施設の立地地点の確保に向け、あらゆる可能性を検討し、鋭意、取り組んでいる」とコメントしました。

そのうえで「具体的な検討内容は今後の取り組みの支障となるおそれがあるため、回答は差し控える」としています。

むつ市 宮下市長「あす考えを示す」

大手電力会社でつくる電気事業連合会が青森県むつ市にある中間貯蔵施設の共同利用の検討に着手する考えを示したことについて、むつ市の宮下宗一郎市長は、18日、電気事業連合会との面会に応じ、市の考えを伝えるとしています。

むつ市の宮下市長は、17日夕方、市内で報道陣の取材に応じ、17日午後、梶山経済産業大臣から連絡があったことを明らかにしたうえで、「大臣からの直接のお願いということと、国から責任を持って対応するとお話をいただいたので、面会を受けさせていただく」と述べ、これまで断っていた電気事業連合会との面会について、18日応じる考えを示しました。

一方で、「面会に応じることが、必ずしもこのことを前向きに進めるということではない。直ちに、今の共用化のような話を受け入れるということにはならない」と述べました。

そのうえで「地域には自己決定権があり、私たちの決定なくして、前には進まない。受け入れるか受け入れないかも含めて、あす明確にお話しさせていただく」と述べ、18日の面会で市の方針を伝える考えを示しました。

青森県 三村知事「コメント差し控える」

大手電力会社でつくる電気事業連合会が、青森県むつ市にある中間貯蔵施設の共同利用の検討に着手する考えを示したことについて、青森県は、現時点では直接、詳細を把握していないとして、コメントは差し控えるとしています。

三村知事は18日午前、電気事業連合会から説明を受けることになっています。

リサイクル燃料貯蔵「地域からの理解が何より大切」

青森県むつ市の中間貯蔵施設を運営する「リサイクル燃料貯蔵」は、「内容はすべてこれから検討していくことになるが、当社としては、地域の皆様からのご理解が何より大切であると考えている」とコメントしています。