学術会議会長 組織改革へ
井上科学技術相に中間報告

日本学術会議の梶田隆章会長は、所管する井上科学技術担当大臣に面会し、会議の助言機能を強化するためスタッフを充実させるなどの改革の方向性をまとめた中間報告を手渡しました。組織の形態については、現状の国の機関ではなく独立行政法人や公益法人に変えることには慎重な議論が必要だとする認識を示しています。

会員候補を総理大臣が任命しなかったことから議論が行われている日本学術会議については、井上大臣は年内に政府としての考えをまとめる方針で、自民党の作業チームから独立行政法人などの新たな組織にすべきだとする提言を受けています。

日本学術会議も改革のための議論を行っていて、16日中間報告をまとめ井上大臣のもとに訪れました。

梶田会長は報告書を手渡し「急ピッチでやってきたが検討することは残っており、中間報告という形で報告したい」と述べました。

報告書のなかで、学術会議の助言機能を強化するため多様な視点が備わっているか検証する仕組みの導入や、専門職員の雇用などスタッフを充実させることを検討するとしています。

また、会員の選定については選考の各段階で人数や内訳の概要を開示するなど、透明性を向上させるとしています。

さらに組織の形態については、国を代表する学術組織は、国の代表機関としての地位や、国による安定した財政基盤、それに活動面での政府からの独立など5つの要件があるとし、現状の国の機関であればこうした要件がみたされるが、独立行政法人や公益法人などの組織に変わると5つの要件を確保できるか論点となるとして慎重な議論が必要だという認識を示しました。

中間報告の内容

中間報告では、
▽科学的助言機能の強化
▽情報発信力の強化
▽会員選考プロセスの透明性の向上
▽国際活動の強化
▽事務局機能の強化
▽学術会議の設置形態の、
合わせて6つの項目について改革案や認識を示しています。

はじめに、科学的な助言機能の強化として課題の選定や審議などの過程において、多様な視点などが備わっているか検証する仕組みと、こうした方針が継続するためのガバナンスの強化を行うとしています。

具体的には、調査機能を備えた部署の設置や調査員の増員などのスタッフの充実が不可欠としています。

また、情報発信力の強化については、社会の意見を聞き取る努力などが十分とは言えなかったとして、双方向のコミュニケーションを行い政府や立法府、国民への理解を深めるために広報担当部署の強化や、より注目され重要性が認められる助言と社会への浸透が可能となるよう改善したいとしています。

そして会員選考プロセスの透明性の向上では、会員が次の候補者を推薦するなどの現在の方式は海外でも標準的な方法だとしたうえで、選考の各段階において人数や内訳の概要を開示するなど透明性を向上させるとしています。

また報告書では、最後に会議の設置形態について認識を示しています。

その中では、国を代表する学術団体の要件として、
▽学術的に国を代表する機関としての地位
▽そのための公的資格の付与
▽国による安定した財政基盤
▽活動面での政府からの独立
▽会員選考における自主性と独立性の、合わせて5つがあるとし、現状の国の機関であればこうした要件がみたされるとしています。

一方で、
▽独立行政法人や、
▽国立大学のような独自法に基づく法人
▽特殊法人
▽公益法人をあげて、
こうした組織に変わると、5つの要件を確保できるか論点となるなどとして慎重な議論が必要だという認識を示しました。

井上科学技術相「年内に一定の道筋」

日本学術会議を所管する井上科学技術担当大臣は、記者団に対し「実行可能なものは着手し、すぐに着手できるものは遅滞なく取り組んでいくとの話があった。また、学術会議の設置形態については政府から独立させることも含めて検討していくということだった」と述べました。

そのうえで「まずは内容をじっくり読んだうえで、年内には政府として一定の道筋を示していきたい。論点は設置形態だけではないので、広くいろいろな論点についてしっかり考えたうえで、一定の道筋を示していくが、年内もあとわずかしかないので、示すことには一定の限界がある」と述べました。

また、学術会議が推薦した会員候補6人が任命されなかったことについて、梶田会長から、理由を明らかにするとともに、任命を求める要請があったとしたうえで、井上大臣は「『菅総理大臣の権限なので、きょう改めて要請があったことを伝える』と答えた」と述べました。