政治資金 収入の不記載
3年で94件 5704万円

政治資金収支報告書への記載が法律で義務づけられている寄付や政治資金パーティーによる収入について、65人の国会議員の関係する政治団体が、去年までの3年間に合わせて90件以上、5700万円余りを収支報告書に記載していなかったことがNHKの取材でわかりました。各団体はいずれも収支報告書を訂正したか、今後訂正するとしています。

政治資金規正法は、政治団体に対し、1年間の収入と支出の総額と一定の条件での内訳の情報を記載するよう義務づけています。

収入のうち、同一の団体や企業、個人からの年間5万円を超える寄付、1回の政治資金パーティーで20万円を超えるパーティー券の代金は、金額と相手の名前などを記載する必要があります。

しかし、不備や過失が原因とされる「不記載」はあとを絶たず、NHKは今回、国会議員関係の政治団体の寄付とパーティーによる去年までの3年間の収入について調査しました。

その結果、9日までに確認できただけで、収入として正しく記載していない「不記載」が、元議員6人を含む65人の国会議員が関係する政治団体で、合わせて94件見つかりました。

不記載の総額は5704万円でした。

議員1人あたりでみると、金額が最も多かったのは620万円、件数が最も多かったのは6件でした。

政党別の人数は自民党が54人、立憲民主党が5人、公明党が2人、日本維新の会が2人、国民民主党が1人、無所属が1人でした。

65人の関係する政治団体はNHKの指摘を受けて、いずれも収支報告書を訂正したか、今後訂正するとしています。

こうした不記載が増えれば、政治団体がどんな団体や企業から資金を得ているかわからず透明性が失われるほか、不透明な資金が政治団体に蓄積される可能性があります。

政治資金の問題に詳しい日本大学法学部の岩井奉信 教授は、「これだけ多くの不記載が見つかったことは、制度の根幹を揺るがす深刻な事態だ。政治の世界の中で収支報告書に事実を正確に記載することを軽視する風潮がまん延しているのではないか。政治とお金に関する記録をすべて残し、第三者がチェックできる仕組みを作る必要がある」と話しています。

不記載額 議員1人あたり最多は620万円

与野党を通じて不記載の額が最も多かったのは、自民党の衆議院比例九州ブロック選出の國場幸之助議員で、代表を務める「コクバ幸之助後援会」が、「宏池政策研究会」から受けた平成29年の3件500万円、去年の2件120万円の寄付、合わせて620万円を記載していませんでした。

収支報告書はすでに訂正され、國場議員の事務所は「当時の担当者が退職し、詳しい経緯は不明です。引き続き政治資金規正法にのっとり、政治資金の適正な処理に取り組んでまいります」とコメントしています。

一方、野党で不記載の額が最も多かったのは日本維新の会の参議院大阪選挙区選出の梅村みずほ議員で、代表を務める「梅村みずほ後援会」が去年、「日本維新の会国会議員団」から受けた寄付100万円を記載していませんでした。

収支報告書はすでに訂正され、梅村議員はNHKの取材に対し「去年初当選し、当初は政治資金を管理する団体を持っていなかった。秘書が急いで口座をつくり、振り込んでもらったが、その秘書が退職し引き継ぎがうまくいかなかった。結果的に管理が行き届かず申し訳ない」と述べました。

不記載件数 議員1人あたり最多は6件 3年連続で不記載見つかる

9日までに不記載を認めた65人のうち件数が最も多かったのは自民党の参議院比例選出の園田修光議員の6件で、園田議員が代表を務める「園田修光後援会」は、「有隣会」と「全国介護福祉政治連盟」から受けた寄付、合わせて200万円を記載していませんでした。

不記載は3年連続で見つかり、園田修光後援会はすでに収支報告書を訂正しています。

園田議員の事務所は、「誤ってすでに解散していた政治団体の名前で領収書を発行したため、実際に寄付を受けた政治団体の収支報告書への記載がもれてしまった。当時の秘書が解散のことを知らなかったため生じたミスで、申し訳ない」としています。

見つかった不記載 専門家「氷山の一角の可能性」

今回NHKが行った調査では、まず、政治資金収支報告書を総務省に提出しているおよそ3000の政治団体すべてを対象に、収支報告書の支出の内容を調べました。

この支出のうち、年間5万円を超える寄付や1回の政治資金パーティーで20万円を超えるパーティー券の代金について、受け取った国会議員側が収支報告書に収入として正しく記載しているか確認しました。

総務省のまとめでは国会議員関係の政治団体はおよそ1900あり、今回の調査では去年までの3年間でおよそ3万件の資金のやり取りを確認しました。

1件1件突合を進めた結果、9日までに確認できただけで、65人の関係する政治団体で94件、5704万円の不記載があることがわかりました。

ただ公開されている資料から検証できる資金の動きは、資金を出した側と受けた側の双方が収支報告書を提出する必要がある政治団体間のやり取りだけで、さらに一定の金額を超えるなどした一部に限られます。

収支報告書を作成しない企業や個人による献金などそのほかの資金の動きは、政治団体側が収支報告書に正しく記載しなければ、表に出なくなります。

日本大学の岩井教授は、「政治団体間の資金のやり取りは政治資金全体の中ではごく一部にすぎない。今回見つかった不記載は氷山の一角で、実際の不記載の総額はもっと多い可能性がある」と指摘しています。

不記載認めた65人の8割はすでに訂正

自身が関係する政治団体の不記載を認めた65人のうち8割は、9日までに収支報告書を訂正し、一部の選挙管理委員会のホームページでは、すでに訂正された収支報告書が公開されています。

620万円の寄付を記載していなかった國場議員が代表を務める「コクバ幸之助後援会」の政治資金収支報告書は、今月1日と4日に訂正され、沖縄県選挙管理委員会のホームページで公開されています。

平成29年分の収支報告書の寄付による収入のページには、「宏池政策研究会」から受けた3件、合わせて500万円の寄付が手書きで追加されていました。

また去年分の収支報告書にも、「宏池政策研究会」から受けた2件、合わせて120万円の寄付が書き加えられています。

この結果、それぞれ年間の収入の総額などが増加し、訂正箇所には二重の取り消し線が引かれて訂正印が押されていました。

永田町の慣習や制度への誤解が背景に

不記載がなぜ起きるのか政治団体の関係者を取材すると永田町の慣習や制度への誤解が背景にあることもわかってきました。

ある議員の事務所の担当者は、「去年12月、所属する派閥の事務所で100万円の寄付を秘書が現金で受け取り、銀行口座に入金しました。その後、別の会計担当者が誤って議員からの『借入金』として処理してしまいました」と明かすなど、いまだに多額の金銭を現金でやり取りする永田町独特の慣習が記載漏れにつながったとみられます。

また年間5万円を超える寄付はすべて収支報告書に記載する必要がありますが、ある議員の政治団体の担当者は、1回につき5万円以下なら記載しなくていいと誤解していたということで、この議員の事務所は「担当者を厳重注意し以後、このようなことがないよう徹底してまいります」と回答しました。

専門家「不記載の問題 技術的には容易に解決」

データの分析と可視化が専門の、日本大学の尾上洋介准教授は現在の技術を活用してデジタル化を進めれば不記載の問題は比較的容易に解決できると指摘しています。

現在、政治資金収支報告書は、ほとんどの政治団体が紙で提出しています。

一部の団体はオンラインで提出していますが、この場合も記載漏れがあることをチェックできるシステムにはなっていません。

尾上准教授によりますと、政治団体ごとにID番号を決めてデータベースを作れば、資金を出した側と受けた側のデータを自動的に突き合わせ、不記載があった場合に担当者に知らせたり、登録できないようにしたりできるということです。

民間の調査会社などでは、国税庁が企業などに対して指定している「法人番号」などを活用して企業間の資金のやり取りを記録するシステムがすでに導入されていて、尾上准教授は政治資金で同じようなシステムを作る場合の費用は、簡易的なものであれば1000万円程度だとしています。

データベース化が進めば、政治家がどんな企業や個人から支援を受けているか、政治資金に関する情報を検索、分析することも可能になるということで、尾上准教授は「政治資金収支報告書をデジタルでデータベース化することは技術的にはそれほど難しいことではない。押印の廃止など行政のデジタル化が議論される中で、政治資金収支報告書は現在、全体として矛盾がないのかが全くチェックができていない。デジタルで資金をやり取りする仕組みを整えていく必要がある」と話しています。