北陸新幹線 金沢~敦賀間の
開業時期を再提示へ 国交省

国土交通省は、北陸新幹線の金沢と福井県の敦賀を結ぶ区間の工事が遅れ、2023年春としてきた開業が1年半遅れる見通しを与党のプロジェクトチームに報告しました。議員からは了承できないという意見が相次いだため、国土交通省は専門家による検証を経て、来月中旬までに開業の時期などを改めて示すことになりました。

北陸新幹線の金沢と敦賀の区間は、2023年春の開業を目指して、工事が進められてきました。

しかし、石川と福井の県境にあるトンネルの内部で地盤にひびが生じたことや、高架橋の工事の入札が不調となっていることなどから国土交通省は、11日開かれた与党のプロジェクトチームの会合で、開業の時期が1年半遅れるという見通しを報告しました。

また、トンネル工事の安全対策などの費用がかさんで、全体の総事業費が当初の見込みの1兆4000億円余りからおよそ2880億円膨らむ見通しも示しました。

これに対し、出席した議員からは了承できないという意見が相次いだということです。

このため国土交通省は、土木の専門家などによる検証委員会を設置して工期の短縮が可能かどうかなどを検討し、開業時期や事業費の見通しを来月中旬までに改めて示すことになりました。

会合のあと、与党プロジェクトチームの細田博之座長は「地元の議員から怒りの声が多く上がり、今回の報告は了承できないと申し上げた。追加工事費の地元の負担についても知恵を出すべきだ」と述べました。

開業延期の理由 大きく3つ 国交省

鉄道・運輸機構によりますと、北陸新幹線の金沢・敦賀間の工事の進捗率は、先月1日の時点で90%で、トンネルはすべて貫通し、ことし4月からは線路の敷設工事も始まっています。

こうした中で、国土交通省が開業延期の理由として挙げている事情は大きく3つあります。

1つめは、石川と福井の県境にある加賀トンネルで、トンネル内の地盤にひび割れが生じたことです。

ことし8月から地中にボルトを打ち込む追加の対策工事が行われています。

鉄道・運輸機構によりますと、8か所のひび割れに1400本のボルトを1日1本から2本のペースで打ち込む計画ですが、これまでに完了したのは、およそ200本にとどまっているということです。

2つめは、敦賀駅の周辺で、駅と車両基地を結ぶ高架橋の工事などの入札不調が相次いだ影響で、人員や資材が不足し、工期がひっ迫していることです。

3つめは、敦賀駅の新幹線駅舎の設計を変更したため、本体工事の開始時期がまだ決まっていないことです。

開業が遅れた場合 福井県内の影響大

新幹線の開業が遅れた場合、福井県内ではさまざまな影響が懸念されています。

まず、新幹線の開業に伴ってJRから経営が切り離される北陸本線の石川県境から敦賀までの区間を引き継ぐ並行在来線です。

開業へ向けた準備会社がすでに設立されています。

開業時には、JRからの出向者と3年に分けて新規採用を行う社員100人の合わせて300人ほどで始動する予定で、すでにことし4月に入社した社員など45人が働いています。

福井県によりますと、開業が遅れた場合、運賃収入がない状態で人件費などの負担が続くことになります。

それによって、県や、福井市など沿線の7つの市と町、それに民間企業などが拠出する資金が底をついて、追加の資金が必要になるおそれがあるということです。

このため、福井県は再来年に予定している30人ほどの新規採用の縮小や延期を検討する可能性があるとしています。

影響は、観光産業にも及びます。

福井県は新幹線の開業にあわせた観光客の誘致に向けて、戦国時代の城下町の遺構が残る福井市の一乗谷朝倉氏遺跡に新たな博物館を整備中です。

また、勝山市の恐竜博物館でもリニューアルが進められていますが、新幹線の開業が遅れれば収入の目減りが懸念されます。

さらに、開業後の開催を検討していたフルマラソン大会などの催しも、時期の変更などの影響が出る見込みだということです。

また、沿線の7つの市と町に対する固定資産税の支払いが遅れる可能性があり、その場合は、自治体があてこんでいた収入が得られないことになります。