“首相に獣医学部説明”文書
「国会要請で提出」中村知事

加計学園の獣医学部新設をめぐる問題で、愛媛県は、3年前に柳瀬元総理大臣秘書官が官邸で学園側と面会したことに関連する県の新たな文書を21日に国会に提出しました。文書には、学園側からの報告内容として「3年前の2月末、加計理事長が安倍総理大臣と面談し、獣医学部の構想を説明した」などと記載されています。

加計学園の獣医学部新設をめぐる問題で、柳瀬元総理大臣秘書官は、今月行われた衆参両院の参考人質疑で、愛媛県今治市が国家戦略特区に提案する2か月前の平成27年4月2日に官邸で学園側と面会したことを認めました。

愛媛県は、担当者がこの面会に同行したと説明していて、参考人質疑を行った参議院予算委員会が、県に対して、面会の内容や経緯が把握できる文書を提出するよう求めていました。

これを受けて、愛媛県は、当時の資料を調べ直した結果、平成27年2月から3月にかけて作成した新たな文書が見つかったとして、21日午後、参議院事務局に提出しました。

愛媛県は内容を明らかにしていませんが、NHKが入手した文書には、当時、県が学園側から受けた報告の内容として、「平成27年2月25日、理事長が首相と15分程度面談。

理事長から獣医師養成系大学空白地帯の今治市に設置予定の獣医学部では、国際水準の獣医学教育を目指すことなどを説明。首相からは『そういう新しい獣医大学の考えはいいね』とのコメントあり」と記載されています。

さらに、同じ年の3月に、学園と今治市が協議した結果の報告として「加計理事長と安倍総理大臣の面談を受けて柳瀬氏から資料を提出するよう指示があった」と記載されています。

このほか、4月2日に総理大臣官邸で面会した際の柳瀬氏の発言をまとめたとするメモには、柳瀬氏が「獣医学部新設の話は総理案件になっている。なんとか実現を、と考えているので、今回内閣府にも話を聞きに行ってもらった」と発言したと記載されています。

今回、新たな文書を提出したことについて、中村知事は午後5時半すぎに取材に応じ、「国権の最高機関の国会から、与野党合意のうえ、関連文書を出してほしいと要請があったので提出した」と述べ、文書の今後の扱いは国会に委ねる考えを示しました。

安倍首相の説明

安倍総理大臣は、加計学園の獣医学部新設の計画について初めて知ったのは、学園が国家戦略特区の事業者に選定された去年1月20日だと国会で繰り返し説明してきました。

また、去年7月の衆議院の予算委員会で、加計学園の理事長が長年の友人であることを問われると、安倍総理大臣は「『時代のニーズにあわせて新しい学部や学科の新設に挑戦していきたい』という趣旨の話は聞いたことがあるが、『獣医学部をつくりたい』、さらには『今治市に』といった話は一切無かった」と述べました。

さらに、今月14日の衆参両院の予算委員会で、柳瀬氏が獣医学部新設をめぐり3年前に学園側と3回面会したことを問われると、「柳瀬氏から報告は受けていない」と述べました。

柳瀬元秘書官の説明

柳瀬元総理大臣秘書官は、今月10日に行われた衆参両院の参考人質疑で、3年前の4月2日に総理大臣官邸で加計学園の関係者と面会したことを認めました。

しかし、面会した一行の中に愛媛県と今治市の担当者がいたかについては、「会った記憶はない」、「10人近くの随行者の中にいたのかもしれない」と述べていました。

一方で、学園の関係者とは、詳しい日付は覚えていないとしたうえで、3年前の4月2日以外にも同じ年の2月か3月に1回と、今治市が国家戦略特区に提案する6月4日の前後に1回の合わせて3回、総理大臣官邸で面会したことを明らかにしました。

自民 二階幹事長「疑念残らないよう対応を」

自民党の二階幹事長は記者会見で、「機会を得て、報告を聞いてみたいと思っており、これからの国会審議でも、疑問や疑念が残らないようにしっかり対応していきたい。疑問があれば、しかるべき時に尋ねてもらえれば、安倍総理大臣が納得のいく答弁をすると思う」と述べました。

また、愛媛県の中村知事の国会招致について「それぞれの委員会が判断して、お越しを願いたい時には、そういう意見を言ってもらえばいい。われわれの側から直接、意見を申し述べるべきではない」と述べました。

立民 辻元国対委員長「柳瀬氏の証言がうその濃厚な証拠」

立憲民主党の辻元国会対策委員長は国会内で記者団に対し、「『柳瀬元総理大臣秘書官の証言がうそだった』という濃厚な証拠が出てきたと思うし、『1国の総理大臣が国会や国民に対し、うそをつき通してきたのではないか』ということにつながると思う。『うそをうそで上書きして、書き直そうとしても無理だ』ということだ」と述べました。

国民 玉木共同代表「核心的な疑惑出てきた」

国民民主党の玉木共同代表は国会内でNHKの取材に対し、「『加計ありき』がより鮮明になったし、『一連のストーリーは安倍総理大臣の指示から始まったのではないか』という極めて核心的な疑惑が出てきた。この疑惑を明らかにすることなく、ほかの重要法案の審議は到底できない。安倍総理大臣、加計理事長、愛媛県の中村知事ら関係者に一堂に予算委員会の集中審議に集まってもらい、真実をしっかり話してもらわなければならない」と述べました。

公明 石田政調会長「国会審議の中で議論に」

公明党の石田政務調査会長は記者団に対し、「詳しく把握していないので、これから精査をしないといけない。文書自体が、どういうものなのか、よくわからないので、国会審議の中で議論をしっかりしていくことになるのではないか。国民の中ではふに落ちていないと思うので、国会でしっかり説明していかなければならない」と述べました。

共産 小池書記局長「総理の進退に関わる重大な文書」

共産党の小池書記局長は国会内で記者団に対し、「安倍総理大臣の進退に関わる重大な文書だ。文書を見ると、安倍総理大臣と学園の加計孝太郎理事長の会談がすべてのスタート台で、安倍総理大臣が『いいね』と答えたことで、すべての話が始まった。『加計ありき』どころか『安倍ありき』だ。国会で虚偽答弁を続けてきた安倍総理大臣の責任は極めて重大で、解明なしでは何も進まない」と述べました。

維新 馬場幹事長「特別委で集中審議を」

日本維新の会の馬場幹事長は国会内でNHKの取材に対し、「資料の事実関係は確認していないが、事実であれば、今までの安倍総理大臣の説明が違っていることになる。説明の場を作り、きちんと真相究明していくことが必要で、国会に特別委員会を設置して集中的に審議すべきだ」と述べました。

加計学園 首相との面会否定

加計学園は「一部報道で伝えられているような、理事長が2015年2月に総理とお会いしたことはございません。今治市の国家戦略特区申請にかかる手続き及び、本学園の獣医学部開設設置認可手続きが適正に行われ、その結果、昨年11月14日に設置が認可され、今年4月3日に晴れて入学式を迎えることができました」とするコメントを出しました。