旧帝国大所属が45%は
「偏り」と菅首相

参議院本会議では、29日に続いて菅総理大臣の所信表明演説に対する代表質問が行われ、午後は、国民民主党、共産党、立憲民主党、自民党が質問しました。

「雇用調整助成金」

国民民主党の小林参議院議員会長は、雇用や労働対策について、「新型コロナウイルスの影響で仕事を失った人は、厚生労働省の調べでは、全国で6万6000人を超えている」と指摘し、12月末までとなっている雇用調整助成金の特例措置の延長などを求めました。

これに対し、菅総理大臣は、「経済が大きな影響を受けた中にあり、雇用調整助成金について、これまでに例のない特例措置を講じるなどの対応を行ってきた。今後の雇用情勢などを踏まえ、適切に判断していく。コロナ禍も一つの転機として、テレワークなどの新しい働き方を進めていくことが重要で、労働者それぞれの事情に応じた多様で柔軟な働き方を推進していく」と述べました。

「日本学術会議」

共産党の小池書記局長は、「日本学術会議」の会員候補6人が任命されなかったことをめぐり、「学術会議の改革努力で、特定大学への集中も是正されてきている。人文科学系の研究者だけ任命拒否したのは、『総合的・ふかん的な観点』に反するのではないか」とただしました。

これに対し、菅総理大臣は、「民間出身者や若手が少なく出身や大学にも偏りが見られる。いわゆる『旧帝国大学』と言われる7つの国立大学に所属する会員が45%を占めている。それ以外の173の、国立大学・公立大学は、合わせて17%で、615ある私立大学は24%にとどまっている。産業界に所属する会員や、49歳以下の会員は、それぞれ3%にすぎない。特定の分野の研究者であることをもって、任命を判断したことはない」と述べました。

「教育のデジタル化」

立憲民主党の水岡参議院議員会長は、教育のデジタル化をめぐり、「コロナ禍において、IT端末を普及させることは支援策に違いはないが、運用面やオンライン教材の作成など、大きな負担にもなりかねない」として、見解を示すよう求めました。

これに対し、菅総理大臣は、「デジタル社会の進展を見据え、1人1台のIT端末を活用し、オンラインと対面による教育のよさを組み合わせながら、それぞれの子どもに最適な教育を実現することが重要であり、教育再生実行会議において議論を深めている。運用を円滑に進め、教員の負担を軽減するため、『ICT活用教育アドバイザー』を派遣するなど、支援している」と述べました。

自民党の磯崎仁彦氏は、アメリカと中国の対立が激しさを増していることに関連し、「日本は、米中の関係で極めて難しい状況に置かれている。アメリカにとって日本が不可欠な存在であることを、宇宙開発を含め、さまざまな領域で示す必要がある」と指摘しました。

これに対し、菅総理大臣は、「日米同盟を基軸とした外交・安全保障政策を展開していくとともに、中国と、安定的な関係を築いていく。安全保障や経済社会にとっての宇宙空間の重要性が高まる中、日米協力の推進も喫緊の課題だ。安全保障、民生利用、科学探査などの、あらゆる分野で連携していく。宇宙を含むさまざまな分野について、日米協力を強化し、同盟関係を一層強固にしていく」と述べました。

自民 世耕氏「菅総理大臣らしい答弁」

自民党の世耕参議院幹事長は、記者会見で「菅総理大臣らしい、たんたんとした答弁だった。菅総理大臣の世界観や政治哲学が答弁を通じて明らかになってきたのではないか。来週は予算委員会が開かれるので、菅政権の取り組みや政策が国民の理解につながるような建設的な議論を期待したい」と述べました。

共産 小池氏「説明すればするほど矛盾が広がる」

共産党の小池書記局長は、記者会見で「答弁に驚がくした。『旧帝国大学』に所属する会員の比率が高いから見直す判断をしたと言いながら、任命を拒否した6人のうち、3人は私立大学の教授だ。説明すればするほど、矛盾がどんどん広がってきている。これからの国会の審議が成り立つのか、心配になるようなやりとりだった」と述べました。