拉致被害者5人帰国18年
蓮池薫さん「戦略的交渉を」

北朝鮮に拉致された5人の被害者が帰国して15日で18年です。その1人、蓮池薫さんがNHKの取材に応じ、政府は北朝鮮が置かれている状況を詳細に分析したうえで、拉致問題を解決すれば得るものがあることを段階的に示しながら、戦略的に交渉する必要があると指摘しました。

昭和53年に北朝鮮に拉致された蓮池薫さん、祐木子さん夫妻と地村保志さん、富貴恵さん夫妻、それに曽我ひとみさんの5人は、平成14年10月15日、24年ぶりに帰国を果たしました。

このうち蓮池薫さんは、新潟産業大学の准教授を務めるかたわら、拉致問題の実情などについて伝える活動を続けています。

帰国から18年になるのを前に蓮池さんはNHKのインタビューに応じ、「年月がたつほど憤りや無念さが鮮明になり、強くなっている。まだ帰国できずにいる方々は、将来への不安と耐え難い苦痛の中で、精神的に追い込まれていると思う」と話しました。

そして、すべての被害者の1日も早い帰国を実現するために求められる取り組みについて「今までどおりのやり方では北朝鮮は振り向かない。新型コロナウイルスの影響や自然災害による食糧難といった北朝鮮が置かれている状況、それに、来年1月に予定されている朝鮮労働党の党大会でどんな経済戦略を打ち出そうとしているのかについて、情報収集と分析を行うことが必要だ。そのうえで、『拉致問題を解決すれば得るものがある』ということを段階的に示すことが必要で、人道支援やアメリカとの間の橋渡しなど、日本としてできることを具体化して、メッセージを出すべきだ」と指摘しました。

今後の北朝鮮との交渉については「『条件をつけずに会う』と言っても、信頼関係がない中では解決に結び付かない。お互いが本音を出し合って意見交換し、それがトップに直接通じる交渉ルートを構築することが必要だ」と話し、政府に対して戦略的な取り組みを求めました。