水素ステーション補助事業
廃止へ 五輪・パラ関連施策

東京オリンピック・パラリンピックの関連施策として、環境省は、太陽光などの再生可能エネルギーで作った水素を燃料電池車に供給する「水素ステーション」の設置費用を補助する事業を進めてきましたが、補助を受けた8割以上の施設で、実際は再生可能エネルギー以外の電力が使われていたことが会計検査院の調査でわかりました。環境省は事業の継続は困難と判断し、廃止を決めたということです。

東京オリンピック・パラリンピックの大会組織委員会は、温暖化の原因となる二酸化炭素を出さない「水素社会」の構築をオリンピックの遺産=レガシーとして掲げています。

この関連施策として、環境省は、燃料電池で走る車に水素を供給する「水素ステーション」を設置した自治体や民間団体に費用の一部を補助する事業を進め、その要件として、水素を製造する際の電力は、すべて太陽光や風力といった再生可能エネルギーで賄うよう求めていました。

しかし、会計検査院が調べたところ、少なくとも平成29年度までに設置・運営が始まったおよそ20か所のうち8割以上で、実際は再生可能エネルギー以外の電力も使われていたことがわかりました。

指摘を受けた環境省は事業の継続は困難と判断し、廃止を決めたということです。

取材に対し環境省は「再生可能エネルギーを用いた水素ステーションは先端技術が必要な施設で、地域によってまかなえる電力に差があるなど当初予期していなかった事態が生じた」としたうえで、「もっと丁寧に制度設計すべきだったと反省している。

これまでに集めたデータや知見は今後の水素関連の事業に生かしたい」と話しています。

神奈川県 水素製造の電力 すべて再生可能エネルギーは困難

神奈川県は、今回、会計検査院の指摘の対象となった環境省の補助金を受けていました。

おととし3月に横浜市内に「水素ステーション」を設置。

太陽光パネルで発電した電力を使って水素を作っていましたが、天候が悪い日や夜間は発電量が不足することがあったということです。

また、常に一定の電力を水素ステーションに供給し続けていないと不具合が起こるおそれもあったことから、太陽光発電以外の電力で必要な分をまかなってきたということです。

水素の製造に必要な電力すべてを再生可能エネルギーに頼るのは難しかったと言います。

神奈川県産業部エネルギー課の武川晴俊課長は「大容量の蓄電池が必要になるなどコストがかかるほか、技術的にも、昼夜を問わず安定した電力を供給するエネルギーのマネジメントが必要になる。

太陽光発電の電力だけでまかなえというのは、なかなか現実的ではなかった」と話しています。