任命見送られた3教授
政府の説明求める

「日本学術会議」の新たな会員候補の一部の任命が見送られたことをめぐり、野党側は、任命が見送られた3人の大学教授から個別に意見を聞きました。教授からは、「学問・研究活動が阻害される」などとして、政府側に説明を求める声などが出されました。

立憲民主党など野党側は、任命が見送られた6人の教授のうち、3人と個別に面会し、意見を聞きました。

小澤隆一教授「学問・研究活動が阻害される」

このうち、憲法学が専門の東京慈恵会医科大学の小澤隆一教授は、「任命の拒否は、『日本学術会議法』にもとるやり方だ。その理由が明らかにされなければ、いつ何時、このようなことがまかり通るかわからず、研究者の学問・研究活動が阻害される」と指摘しました。

このあと小澤氏は、記者団に対し、「もし仮に私が、専門家の立場からかつて衆議院の中央公聴会で安保法制について、『憲法に違反する』と言ったことが、実質的な理由になっているとすれば受け入れがたく、学問の自由の重大な侵害だ」と述べました。

松宮孝明教授「学術会議の存在意義に関わる大問題」

刑事法が専門の立命館大学大学院の松宮孝明教授は「この任命拒否の問題は、まさに学術会議の存在意義に関わる大問題だ。しかし、政府側が全く理由を説明しておらず、菅総理大臣は記者会見すら開いていない。ちゃんと会見を開いてもらいたい。政府の対応は、法律を理解しているとはとても思えないと感じている」と述べました。

岡田正則教授「萎縮効果、当然働く」

行政法が専門の早稲田大学の岡田正則教授は、「日本の学術自身が攻撃され、外堀を埋められているような状態だ。6人が排除されたことが、日本の学術に今後、どういう影響をもたらすかだが、やはり萎縮効果のようなものは、当然働く」と指摘しました。

野党側は、5日のヒアリングなども踏まえて、国会などで政府への追及を強める方針です。

加藤官房長官「推薦どおり任命しなければならないわけではない」

加藤官房長官は、午後の記者会見で、「日本学術会議の会員は特別職の国家公務員だ。任命権のある総理大臣が、その責任において任命するということは、これまでも変わっていない。法律上、学術会議からの推薦に基づいて会員を任命するという構図の中で、憲法との関係を踏まえ、これまでも対応してきた」と述べました。

そのうえで、「公務員の選定任命権が国民固有の権利であるという考え方からすれば、任命権者たる総理大臣が、推薦のとおり、任命しなければならないというわけではないという趣旨の整理が2018年になされた」と述べました。

共産 小池氏「問題解明と6人の任命を求める」

共産党の小池書記局長は、記者会見で、「これまでの国会答弁と全く違うことをやった以上、法解釈を変えたとしか言えない。学問の自由や法治国家としての在り方にも関わる極めて重大な問題だ。閉会中審査も含め、徹底的にこの問題を解明するとともに、拒否された6人の任命を求めていきたい」と述べました。

映画監督らが撤回求める抗議声明

この問題で、映画に携わる監督や脚本家などの有志が、「表現の自由への侵害であり、言論の自由への明確な挑戦だ」などとして撤回を求める抗議声明を出しました。

この抗議声明は、映画監督の是枝裕和さんや脚本家の井上淳一さんなど、映画に携わる22人が5日、連名で出しました。

声明では「日本学術会議が推薦した候補を首相が拒否するのは本来あってはならないことです」としたうえで、「この問題は、学問の自由への侵害のみに止まりません。これは、表現の自由への侵害であり、言論の自由への明確な挑戦です」と記しています。

そして「私たちはこの問題を深く憂慮し、怒り、また自分たちの問題と捉え、ここに抗議の声を上げます。私たちは、日本学術会議への人事介入に強く抗議し、その撤回とこの決定に至る経緯を説明することを強く求めます」と結んでいます。