森の中間貯蔵施設
審査に事実上合格

原子力発電所の敷地にたまり続ける使用済み核燃料を一時的に保管するため、東京電力などが青森県に建設中の中間貯蔵施設について、原子力規制委員会は規制基準に適合しているとして、事実上の合格を示す審査書案を取りまとめました。

中間貯蔵施設は原発の敷地内のプールにたまり続ける使用済み核燃料を一時的に保管するための施設で、東京電力と日本原子力発電が青森県むつ市に建設中です。

6年前、操業に必要な審査を原子力規制委員会に申請し、審査の中で、
▽地震の揺れの想定を当初の450ガルから620ガルに引き上げて設備を強化するとしたほか、
▽高さ23メートルの津波を想定したうえで、燃料に影響がでないための対策などを示していました。

そして2日、規制委員会は事業者のまとめた対策で安全性は確保されるとして、審査の事実上の合格を示す審査書案を取りまとめました。

今後、一般からの意見を募るパブリックコメントなどを経て、正式に合格となる見通しです。

この中間貯蔵施設は、使用済み核燃料およそ3000トンを保管する容量があり、東京電力と日本原電は来年度中の操業開始を見込んでいます。

使用済み核燃料を巡っては、この2社以外の電力会社も、原発の貯蔵プールの容量が限界に近づき課題となっていて、九州電力や四国電力などは原発敷地内に新たな貯蔵施設をつくる計画を示すなど、各社対応に追われています。

中間貯蔵施設 経緯と課題は

使用済み核燃料の中間貯蔵施設は、国が進めている核燃料サイクル政策では当初想定されていなかった施設です。

全国各地の原発から発生した使用済み核燃料は青森県六ヶ所村に建設中の再処理工場に運ばれて一時保管されたあとに順次、処理される予定でした。

しかし、再処理工場の完成時期はトラブルや不祥事などで繰り返し延期され、いまだに完成しておらず、各地の原発の貯蔵プールには運び出しができない使用済み核燃料がたまり続ける状態になっています。

廃炉になる福島県内の原発を含めて、全国17の原発の貯蔵プールの容量は合わせて2万1400トンありますが、電気事業連合会の今年3月時点の集計ではおよそ75%に当たる1万6060トンがすでに埋まっています。

原発は、運転したあとに発生する使用済みの核燃料を原子炉から取り出すことができなくなると運転の継続ができなくなります。

このため、使用済み核燃料を一時保管する新たな施設が必要になったのです。

2日事実上の審査合格となった青森県の中間貯蔵施設は東京電力と日本原子力発電の使用済み核燃料が対象になります。

東京電力は、再稼働を目指している新潟県の柏崎刈羽原発からの使用済み核燃料の運び出しを想定しています。

また、日本原電は茨城県にある東海第二原発と、福井県にある敦賀原発2号機からの使用済み核燃料を中間貯蔵施設に運び出す方針です。

ただし、いずれの原発も現時点で再稼働は決まっておらず、中間貯蔵施設が予定どおり来年度に操業してもすぐに運び込みが行われるかどうかは未定です。

また、この中間貯蔵施設は地元の青森県とむつ市との協定にもとづき、保管年数が最長50年と決まっていることから、将来的にはほかの場所に移動させる必要が出てきます。

この2社以外の電力会社のうち、福島の原発事故後止まっていた原発が再稼働している関西電力、九州電力、四国電力は問題がより切実です。

九州電力と四国電力は、原発の敷地内に新しく貯蔵施設を作る計画を示しています。

関西電力は福井県との取り決めで、敷地内ではなく、東京電力などと同様に中間貯蔵施設を県外につくる方針でことし中に候補地を示すとしています。

このほかの電力会社も対応の検討を進めています。

原子力規制委 更田委員長「事業者は着実に運用を」

使用済み核燃料の中間貯蔵施設の審査に事実上の合格を出したことについて、原子力規制委員会の更田豊志委員長は「想定される地震、津波、火山の自然災害に対して、厳正で確実な審査を行った」と述べました。

そのうえで、「中間貯蔵施設は事故のリスクは小さいといえるが、事業者に対しては着実に運用をしてもらいたい」と注文をつけました。

青森県むつ市 宮下市長 「操業開始に向けて前進」

使用済み核燃料の中間貯蔵施設が原子力規制委員会の審査で事実上の合格となったことについて、立地する青森県むつ市の宮下宗一郎市長は「少なくとも理論上は安全だという審査の結論が出たと認識している。これから地域にとっては重要なステップに進むので、約束どおりの操業開始に向けて前進してほしい」と話していました。

反対派 施設に最終貯蔵されること懸念

中間貯蔵施設の建設に反対している市民グループの栗橋伸夫さん(69)は、最長50年としている保管期間が何らかの原因で延び、事実上の最終的な保管場所になってしまうことなど懸念しています。

栗橋さんは「施設から使用済み核燃料を搬出する先が明確になっていない中、施設に『最終貯蔵』されることがいちばんの懸念だ。立地するむつ市には、搬出先が明確になるまでは搬入を認めないよう求めていきたい」と話していました。