元高官「アジア政策の
重要なパートナー」

アメリカのオバマ前政権でアジア政策を担ったラッセル元国務次官補は、NHKの取材に対して安倍総理大臣によるTPP=環太平洋パートナーシップ協定への参加を「勇気ある決断だ」と振り返り、「アメリカのアジア政策の重要なパートナーだった」と高く評価しました。

この中でラッセル氏は、「安倍総理大臣は、積極的な外交で日本の国際的な影響力を拡大し、自由で開かれたインド太平洋地域の概念を打ち出した。当時のオバマ政権はアジア重視政策を掲げ、安倍総理大臣は非常に重要なパートナーだった」と高く評価しました。

そのうえで「安倍総理大臣による日本の防衛力の強化は日米同盟の強化やアジア地域の安全保障にも貢献した」と述べるとともに、「安倍総理大臣のTPP=環太平洋パートナーシップ協定への参加の決定は、非常に勇気ある、重要で歴史的な決断だった」と振り返りました。

また、当時のオバマ大統領は、慰安婦の問題など歴史観をめぐって安倍総理大臣と意見の違いがあったものの、オバマ大統領が被爆地の広島を訪問し、安倍総理大臣がパールハーバー=真珠湾を訪問したことで両国の和解が実現し、新たな日米関係が築かれたという認識を示しました。

さらに、ラッセル氏は、安倍総理大臣の後継について、「与党の自民党には経験豊かな政治家たちが大勢いる。日米同盟の重要性と日本が世界の中で果たす役割の重要性を理解している人たちだ」と述べました。

そして、日本の次の政権でも日米同盟重視という基本方針は変わらないだろうと指摘したうえで「トランプ政権は安倍総理大臣の辞任の意向に悲しんでいるかもしれないが、日米の行方に懸念は抱いていないだろう」という見方を示しました。

専門家「トランプ大統領は失望するだろう」

アメリカの政治学者で、日米交流の団体「ジャパン・ソサエティー」の理事長を務めるジョシュア・ウォーカー氏は、NHKの取材に対して「トランプ大統領は安倍総理大臣の辞任に失望するだろう」と述べる一方、中国の脅威を前にアメリカにとって日本の重要性は変わらないという見方を示しました。

この中でウォーカー氏は、「アメリカの一般市民は、通常、日本の総理大臣を知らないが、安倍総理大臣は例外だ。在任期間が長く、日本を訪問したトランプ大統領と相撲を見に行ったり、ゴルフ外交を行ったりして個人的な関係を築いた」と指摘しました。

そのうえで「トランプ大統領は個人的な関係を重視する外交だ。それだけに、トランプ大統領は安倍総理大臣が辞任することに非常に失望するだろう」と述べました。

その一方で、「日米には中国という共通の脅威がある。トランプ政権は、日本の新たな総理大臣が誰になろうとも協力していく」と述べ、中国の脅威を前にアメリカにとって日本の重要性は変わらないという見方を示しました。

米有力紙 主要なニュース項目で取り上げ

アメリカの有力な新聞はいずれも28日の電子版で主要なニュース項目として取り上げ、特に後継者選びに大きな関心を示しています。

このうちニューヨーク・タイムズは、共和党大会や新型コロナウイルスの感染状況に続く主要なニュースとして取り上げ、「シンゾー・アベのレガシー」というタイトルで安倍総理大臣の外交や内政、経済面での実績を紹介しています。

この中で、最も影響が長く続く功績はアベノミクスだろうと指摘したうえで、女性の活躍推進をめざした約束は果たすことができなかったと伝えています。

またニューヨーク・タイムズは「激しい後継者争いに道を開くことになる」として後任選びの行方に関心を示し、自民党総裁選挙の仕組みを詳しく紹介しています。

そして、国の内外で急速に情勢が変化する中で権力基盤を固めるのは難しいとして「誰が総理大臣になっても今よりも弱い政権になるだろう」とするアメリカ人専門家の見方を伝えています。

また、ウォール・ストリート・ジャーナルも後継者選びについての記事で、岸田政務調査会長や石破・元幹事長、菅官房長官などが候補としてあがっていることを写真付きで伝え、どの候補者も政治のスタイルに違いはあっても安倍総理大臣の政策を大きく変えることはないだろうという見方を示しています。