東京都243人の
感染確認 最多に

東京都は10日、都内で新たに1歳から80代の男女合わせて243人が、新型コロナウイルスに感染していることを確認したと発表しました。都内で1日に確認された数としては、9日の224人を上回り、これまでで最も多くなりました。また、2日連続で200人を超えるのは初めてです。

243人のうち、20代は126人、30代は60人で、それぞれの年代をあわせると186人となり、全体のおよそ8割近くを占めています。

また、243人のうち142人はこれまでに感染が確認された人の濃厚接触者で、101人は今のところ感染経路がわかっていません。

都によりますと、243人のうち110人はホストクラブやキャバクラ店など近い距離での接客を伴う店の従業員や客で、地域別に見ると、新宿エリアが93人、池袋エリアが1人だということです。

このほか、家庭内の感染が17人、友人や職場の同僚との飲み会を通じての感染が12人となっています。

また、10人は先月30日から今月5日に行われた舞台公演の客や関係者で、この公演では、これまでに出演者も含めて合わせて14人の感染が確認されています。

また、243人の中には重症の人はおらず、症状のない人は48人だということです。

これで、都内で感染が確認されたのは合わせて7515人になりました。一方、10日都内で死亡が確認された人はいませんでした。

板橋区と葛飾区では児童2人が感染

東京 板橋区と葛飾区では、小学生合わせて2人が新型コロナウイルスへの感染が確認されました。

板橋区によりますと、新たに感染が確認されたのは10代の小学生で、8日、同居する家族の感染が判明したため学校を早退し、9日、PCR検査を受けた結果、10日、感染が確認されました。

区は、マスクを外して15分以上話した同級生数人について濃厚接触者としてPCR検査を行うことにしています。

区によりますと、ほかに濃厚接触者はいないと見られるということですが、念のため11日と12日、土日の校庭開放などを取りやめることにしています。

一方、葛飾区によりますと、新たに感染が確認されたのは10歳未満の小学生で、9日、同居する家族の感染が判明し、検査の結果、10日、感染が確認されました。

区はこの小学生のクラスを今月22日まで学級閉鎖にするとともに、クラス内で濃厚接触者が確認された場合はPCR検査を実施したうえで、23日まで自宅待機を求めることにしています。

練馬区の学童クラブ 30代職員感染 児童らにPCR検査

東京 練馬区の区立の学童クラブで、30代の女性職員が新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。職員は8日、発熱があったため、病院を受診してPCR検査を受け、10日、感染が確認されました。詳しい感染経路は分かっていないということです。

女性職員は発熱したあとは出勤していませんでしたが、区は発熱する前に同じ部屋で過ごした児童と職員、合わせて58人を濃厚接触者として検査を実施することにしています。

施設内の消毒は時間外に実施することにしていて、休業の措置は取らないということです。

小池都知事「新しい日常の徹底を」

東京都の小池知事は、記者会見で、「きのうの都内の新規陽性者数は224人とこれまでで最多で、都民は大変心配していると思う。1日あたり3000件を超えるPCR検査が実施されていることや、陽性者が出た接待を伴う飲食店の事業者の協力を得て、従業員が集団で検査を受けるケースがあることなどによって全体の陽性者数が増えている。更なる警戒が必要な段階だ」と述べました。

また、「おかしいなと思った方々が検査を受けられるようになった。みずからの健康状況を知ったうえで、感染しないさせないことが広がることは、むしろ是として受け止めるべきではないか。ちょっとでもおかしいなと思った人は、できるだけ早めに検査を受けて頂きたい」と呼びかけました。

そのうえで、「都民や事業者には感染拡大防止の基本となる手洗いの徹底やマスクの着用、『3つの密』を避けた行動、都や業界団体が策定したガイドラインの実践など、『新しい日常』の徹底について改めて協力をお願いする」と呼びかけました。

そして、このあと行う埼玉・千葉・神奈川の各県知事とのテレビ会議について、「1都3県は日々多くの人々が往来している。ここ最近の新規感染者数の増加を受け、改めて現状について意見交換する」と述べました。

さらに、小池知事は10日夜、新宿区の吉住区長や豊島区の高野区長とともに西村経済再生担当大臣と面会し、専門家も交えて、いわゆる夜の街対策などについて意見交換を行う予定だとして、引き続き、国や区市町村などと連携して対策を進めていく考えを示しました。

西村経済再生相と小池都知事が会談

東京都で、2日続けて200人を超える新型コロナウイルスの感染が確認されたことを受けて、西村経済再生担当大臣と東京都の小池知事が10日夜会談しました。会談は9日に続いて行われ、新宿区の吉住区長や豊島区の高野区長らも同席し、東京都の感染状況をめぐって意見を交わしました。

このあとの記者会見で西村大臣は、30代以下の感染者が7割を占めているほか、PCR検査は1日当たり3000件以上行われ、陽性率も5%程度と、緊急事態宣言が出された、ことし4月に比べて大幅に低下していることなどを説明しました。

そして、クラブなど接待を伴う飲食店での感染を防ぐため、PCR検査を幅広く実施することや、ガイドラインの徹底を促し、利用者にも守っていない店の利用は控えるよう呼びかけること、それに、保健師を増員するなど保健所の機能を強化するとした対策をまとめたことを明らかにしました。

一方、西村大臣は、店舗への休業要請については「万が一、感染が拡大した場合に備え、特別措置法による要請も検討するが、基本は事業者による前向きな取り組みをサポートしていきたい」と述べ、慎重な考えを示しました。

小池知事と西村経済再生担当大臣は、会談のあと、そろって記者会見しました。

この中で小池知事は「検査を受けてこなかった無症状の方なども検査を受けることでみずからが陽性であることを自覚していただく。医療提供体制を整えているので対応をしっかり行う」と述べました。

そのうえで、「飲食店の従業員が事業者の協力を得て集団で検査を受けるケースがこのところ続いている。事業者が自分の店は安心で働く方々が健康だということを確認する流れはこれからも続けていくべきで、戦略的なPCR検査などの実施はさらに今後も進めていく」と述べました。

そして「検査を行うことで、より多くの陽性者が出てくるかもしれないが、積極的な疫学調査をさらに進めていくことが、皆様の不安を抑えることになるのではないか。見えざる敵とのたたかいはそう簡単ではないが、国や東京都などが連携しながら進めることによって何とか打ち勝っていきたい」と述べました。

西村経済再生担当大臣は記者会見で「国と都と区が連携し、専門家のアドバイスのもとで、対策の全体像を示して迅速に実行することが何より大事だ。一人ひとりの取り組みや、事業者の取り組みを全力でサポートし、ウイルスを封じ込めていきたい」と述べました。

経済再生相「感染防止の徹底を」知事会長「法整備を」

西村経済再生担当大臣は、全国知事会の飯泉会長と会談し、10日からイベントの開催制限が緩和されたことを受けて、参加者などへの感染防止策の徹底に協力を求めました。

この中で、西村経済再生担当大臣は、東京都で2日連続で200人を超える新型コロナウイルスの感染が確認されたことについて、「警戒感を強めているが、重症者の数は非常に少なく、医療提供体制もしっかり確保されている」と述べ、緊急事態宣言が出された、ことし4月とは状況が異なるという認識を改めて示しました。

そのうえで、10日からイベントの開催制限が緩和されたことについて「感染防止策を講じてもらうことが大事で、換気や消毒、マスクの着用を徹底してもらいたい。体調が悪い人は、外出やイベントへの参加も控えるようお願いしたい」と述べ、参加者や主催者への感染防止策の徹底に協力を求めました。

これに対し、全国知事会の飯泉会長は、イベントの開催で都道府県をまたぐ移動が増え、感染が広がるおそれがあるため、対策を徹底する必要があると応じたうえで「食中毒などと同じように、感染が確認された店舗に対し、営業停止や店名を公表できるような法整備を前向きに検討してもらいたい」と要請しました。

菅官房長官「警戒感持って注視」

菅官房長官は午後の記者会見で、東京都で10日、新たに243人の感染が確認されたことについて、「クラブなど接待を伴う飲食店の協力を得つつ、濃厚接触者などに積極的に検査を受けていただいた結果が含まれており、39歳以下の若い方が約8割を占めている。医療提供体制については、ひっ迫している状況ではない」と述べました。

そして、直ちに緊急事態宣言を出す状況にはなく、イベントなどの開催制限も緩和するとしたうえで、「感染経路の不明な割合も一定程度あり、中高年の感染者も増加しつつあることも含めて、引き続き警戒感を持って注視していきたい」と述べ、10日夜、西村経済再生担当大臣が東京都の小池知事らと会談し、対応を協議することを明らかにしました。

与野党「感染拡大防止に万全を」

東京都で新型コロナウイルスの感染確認が相次いでいることを受けて、政府と与野党の連絡協議会では、与野党双方から、感染拡大防止に万全を期すよう求める意見などが出されました。

連絡協議会には、政府から西村官房副長官が、与野党から政策責任者らが出席しました。

この中では、東京都で新型コロナウイルスの新たな感染の確認が相次いでいることについて、与党側から、「検査した数や地域などを具体的に示すべきだ」という意見が出されました。

また、立憲民主党など野党側は、感染拡大防止に万全を期すとともに、再び休業要請を行う場合の基準など、政府の対応方針を明確に示すよう求めました。

立憲民主党の逢坂政務調査会長は、記者団に対し、「国は、検査や医療体制の構築は自治体任せ、『夜の街』は業界任せで、主体的に対応しているように見えない。しっかりと考え方を示し、検査体制も早急に確立する必要がある」と述べました。

共産 田村氏「制限緩和に危機感」

共産党の田村政策委員長は、記者会見で、「東京都の感染状況について詳しい分析がない中で、イベントの開催制限を緩和することに危機感を持っている。業種や地域を限った上での休業要請や補償を検討することも選択肢として出てくると思う」と述べました。

東京都医師会長「感染拡大地域限定の集中的対策が必要」

都内で新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、東京都医師会の尾崎治夫会長は10日の会見で、都内で市中感染が広がりつつあるという認識を示したうえで、「感染が拡大している地域に限定した集中的な対策が必要で、国に要望していきたい」と述べました。

会見で尾崎会長は、都内でこれまでで最も多い243人の感染が明らかになったことについて「新宿区の歌舞伎町や豊島区の池袋に端を発して市中感染が起きているのはおそらく間違いない」と述べました。

そのうえで「感染が拡大している地域に限定して、ホストクラブなどのすべての関係者がPCR検査を受け、補償を伴う休業要請を行っていくことが必要だ。国に対して要望していきたい」と述べました。

具体的には、医師会として所有するPCR専用車を感染拡大地域に派遣し集中的な検査を実施することや、接待を伴う飲食店などの関係者向けの感染予防のための講習会を実施していくことなど、対策に取り組んでいく考えを示しました。

また、一人一人ができる対策として「マスクを外して飲酒・飲食する、だ液が飛び交う状態が最も危険だ。2週間、できれば4週間は、そのような空間に行くことを控えてほしい。厚生労働省の接触アプリは60%の人がダウンロードしないと効果がでないので、多くの人に協力をお願いしたい」と呼びかけました。

専門家「院内感染対策を早急に」

東京都内で新たに243人の感染が確認されたことについて、新型コロナウイルスの治療の中核を担う、国立国際医療研究センターの忽那賢志医師は「都内でも感染が多く確認されている地域では、いつ、どこで感染してもおかしくないような状況になってきていると思う。医療現場でも先週辺りから目に見えて患者の数が増えてきた。今の時点では軽症者が多いが、1週間から2週間たってから重症化する人もいるため、安心はできない状況だ」と指摘しました。

そのうえで、今後求められる対策として「市中での感染が広がってくると、新型コロナウイルス以外の病気やけがで入院する人たちの中にも感染者がいるという状態になってくる。そうした患者を通じて、気付かない間に病院内で感染が広がり、クラスターが発生してしまうことが心配だ。特に東京では入院患者になるべく早めに検査を行うなどして、感染している人に適切な対応がとれる体制を整える必要があるのではないか」と話していました。

西浦氏が山中氏と対談 “市中感染が広がり始めている認識”

新型コロナウイルス対策について国のクラスター対策班のメンバーで北海道大学大学院の西浦博教授が京都大学の山中伸弥教授と対談し西浦教授は現在の感染状況について「社会全体で接触を削減しなければならない状況になるか、その分水嶺(ぶんすいれい)にさしかかっている」と述べ、地域の感染状況に応じた対策をすみやかに行う必要性を強調しました。

対談は日本循環器学会が今月27日から開く学術集会に合わせて企画され、西浦教授は政府の有識者会議のメンバーの山中教授と意見を交わしました。

対談は今月6日に収録され、西浦教授はこのところの感染者の増加の背景には、接待を伴う飲食店に関わる人たちなどに対して、積極的な検査が行われていることがあるとした一方で「背後で地域の中で広がり始めているように見えるデータがある」と述べ、市中で感染が広がり始めているという認識を示しました。

そのうえで「対策を待ちすぎると手遅れになって、社会全体で接触を削減しなければならない状況になるおそれがある。いま、分水嶺にさしかかっている状態ではないかと心配している」と述べ、地域の感染状況に応じた対策をすみやかに行う必要性を強調しました。

対談では、山中教授が日本でも対策を取らないと、欧米のように多くの人が亡くなるおそれがあると指摘したのに対し、西浦教授は感染した人の致死率は日本も欧米も変わらず、重症化する頻度は変わらないと説明しました。

そして西浦教授は流行の収束について「ピュアに科学的に理解しているところからするとあまり明るい希望を抱いていない。流行を繰り返しながらウイルスが弱毒化するかどうか観察していく」と述べました。

そのうえで「野球で言うと、まだ2回表で新型コロナウイルス側が攻撃している」と述べ、世界各国の状況を見ながら、複数年にわたる対策が求められるという認識を示しました。