発事故で避難 東電に
490万円余の賠償命令

東京電力福島第一原子力発電所の事故で、福岡県などに避難した50人余りが起こした集団訴訟で、福岡地方裁判所は、東京電力に対し原告のうち24人に総額490万円余りを賠償するよう命じました。一方、国に対する訴えは退けました。

福島第一原発の事故で、福岡や佐賀、熊本、鹿児島の各県に避難した18世帯53人は、経済的、精神的な損害を受けたとして、国と東京電力に対して、総額2億9700万円の賠償を求めました。

24日の判決で福岡地方裁判所の徳地淳裁判長は、避難指示が出された地域の周辺にある「自主的避難等対象区域」に住んでいた原告について「原発事故後に放射線量の明らかな増加が見られた地域で、避難の相当性が認められる」として賠償の対象になると認め、7世帯24人に総額490万円余りを支払うよう東京電力に命じました。

一方で、それより離れた地域に住んでいた原告については「被ばくした放射線量もより低く、避難の相当性は容易に認められない」として、訴えを退けました。

また、国の責任については「津波が到来する切迫した危険性があると認識することは困難であり、国が東京電力に対策をとるよう義務づけなかったことが合理性を欠くとはいえない」として原告の訴えを退けました。

原発事故の避難者が、国と東京電力を訴えた集団訴訟の1審判決は12件目で、このうち国の責任を認めなかったのは5件目です。

原告「国の責任を問い続ける」

原告の橋本希和さんは判決後、取材に対し「国の責任が認められず、がっかりしましたが、このまま終わってはいけないと思うので、諦めず、今後も国の責任を問い続けていきたい。福島への思いをもちつつ、今後も長男と福岡で安心して暮らしていきたい」と話していました。

東京電力「判決内容を精査 対応を検討」

東京電力は「原発事故により、福島県民のみなさまをはじめ、広く社会のみなさまに大変なご迷惑とご心配をおかけしていることについて、改めて心からおわび申し上げます。今後、判決内容を精査し、対応を検討します」というコメントを出しました。

原子力規制庁「適切な規制行っていきたい」

国の原子力規制庁は「司法の判断については論評する立場にはないのでコメントは差し控えるが、原発事故以降に策定された新たな規制基準をもとに、適切な規制を行っていきたい」としています。