「持続化給付金」
委託先が再委託 問題は?
「持続化給付金」をめぐる野党側のヒアリングで、出席した議員が国から業務を委託された社団法人が再委託している理由をただしたのに対し、経済産業省は、社団法人が給付金の振り込みを行い、再委託先が申請の審査などを担っていると説明しました。
新型コロナウイルスの影響で売り上げが大幅に落ち込んだ中小企業などに給付される「持続化給付金」をめぐって、立憲民主党など野党側は、2日国会内で、経済産業省などからヒアリングを行いました。
この中で、出席した議員は競争入札の結果、国から業務の委託を受けた、一般社団法人の「サービスデザイン推進協議会」が、業務のほとんどを大手広告代理店の電通に再委託した理由をただしました。
これに対し、経済産業省の担当者は、社団法人は給付金を実際に振り込む業務を行い、再委託先の電通は、申請の受付や審査、広報などを担っていると説明しました。
一方、議員が社団法人の業務体制などを確認する必要があるとして、入札の際に作成された実施計画書を示すよう求めたのに対し、経済産業省の担当者は「企業秘密に関わることもあり、公開できるかどうか検討が必要だ」と述べました。
「サービスデザイン推進協議会」の事務所は
「持続化給付金」の事業を国から委託されているのは、一般社団法人の「サービスデザイン推進協議会」です。
先月28日の午後2時ごろ、NHKの記者が東京・中央区のビルの中にある事務所を訪れたところ、部屋に明かりはついておらず、呼び出し用の内線電話で問い合わせても、応答はありませんでした。
入り口のドアには「ご来訪の皆様」と書かれた紙が貼られていて、「当協議会では持続化給付金についてのお問い合わせ、相談への対応はできかねます」としたうえで、コールセンターに電話するよう促しています。
登記簿によりますと、この法人は4年前の2016年に設立され、市場の調査や分析、コンサルティングなどを行うとしていて、理事には大手広告代理店の関連会社や人材派遣会社の幹部が就任しています。
また、経済産業省の資料によりますと、企業へのIT導入を支援する事業や、女性起業家を支援する事業など、これまでに合わせて14件の事業について経済産業省から委託を受けていて、契約金額は合わせて1576億円に上っています。
代表理事「説明が足りていない部分」
サービスデザイン推進協議会の笠原英一代表理事は、NHKの取材に対し、「持続化給付金に関する業務はきちんと行っている。新型コロナウイルスの感染拡大という国難の中で、短期間に事業を立ち上げ、給付も相当進んでいると思うし、実態が不透明ということはない」と話しています。
そのうえで「広報がぜい弱で、説明が足りていない部分があったかもしれない。今後、数字もしっかり示しながら、誤解を一つ一つ解いていきたいと考えている」と話していました。
「80万件分の給付終える」
サービスデザイン推進協議会は、ホームページ上で「十分な情報提供ができず、深くお詫び申し上げます」としています。
そのうえで「事業の執行は中小企業庁の監督のもと、適切なご指導をいただきながら進めており、協議会や再委託先が不当な利益を得るようなことは一切ございません」としています。
また、手続きが始まった先月1日には申請が殺到し、一時的にサーバーがつながりにくくなったものの、システムはその後改善し、先月29日の時点で1兆500億円、80万件分の給付を終えていると説明しています。
専門家「公費入っており説明義務」再委託は直ちに不適切と言えず
財務省での勤務経験があり、公共経済に詳しい、法政大学の小黒一正教授は「今回、危機的な状況の中で予算が執行されたわけだが、どさくさに紛れて、おかしな予算の使い方だという疑念を持たれる可能性がある。納税者のお金、公費が入っているので、経済産業省がきちんと説明する義務があると思う」と話しています。
一方、一般競争入札において業務を再委託するケースはこれまでもあり、再委託自体が直ちに不適切だとは言えないとしていて、「再委託する際に、20億円の差額が出て、このうち1億2000万円を人件費としているが、これが適切かどうかについては、金額ではなく業務の内容によって判断すべきだ」と話しています。