川氏処分経緯「内閣と
協議し検事総長に伝えた」

緊急事態宣言の中、賭けマージャンをした問題で辞職した東京高等検察庁の黒川検事長を訓告処分にした経緯について、森法務大臣は、内閣とも協議したうえで、法務省として検察側に訓告が相当だと考えると伝え、検察側からも、同様に判断したという連絡があり決定したと説明しました。

参議院決算委員会で、立憲民主党の勝部賢志氏は、辞職した黒川検事長を訓告の処分とした経緯をただしました。

これに対し、森法務大臣は、「法務省で協議し、任命権者の内閣とも並行して協議を行った結果、監督上の措置として最も重い訓告が相当と考えた。法務省としては訓告が相当と考える旨を検事総長に伝えた」と述べました。

そして、「検事総長において訓告が相当だと判断したという連絡をいただき、内閣にも報告して異論がなく、訓告の処分を行った」と説明しました。

また、先週の衆議院厚生労働委員会で安倍総理大臣が、「検事総長が事案の内容など諸般の事情を考慮して適正に処分を行ったと承知している」と答弁した内容と矛盾するのではないかと問われ、森大臣は、「矛盾はない。処分の主体は検事総長で、法務省として、意見を申し上げた」と述べました。

首相「報告を了承した」

安倍総理大臣は記者会見で、緊急事態宣言の中、賭けマージャンをした問題で辞職した東京高等検察庁の黒川検事長について、「法務省・検察庁の人事案を最終的に内閣として認めたが、責任は内閣総理大臣たる私にある。批判を真摯に受け止めながらしっかり職責を果たしていきたい。森法務大臣には、検察や法務省の士気をしっかり高め、信頼回復のために全力をつくしてもらいたい」と述べました。

また、黒川検事長の処分について、「先週21日に法務省から検事総長に対して調査結果に基づき、訓告が相当と考える旨を伝え、検事総長も訓告が相当と判断して処分した。私自身は、森法務大臣から『事実関係の調査結果を踏まえて処分を行ったうえで、黒川氏本人より辞意の表明があったので認めることとしたい』との報告があり了承した」と述べました。

そのうえで、「総理大臣として責任を持っている。国民の批判に対しては、真摯に受け止めなければならない。法務省・検察庁で信頼回復に全力を尽くさなければならない。私も全力を尽くしていきたい」と述べました。

一方、安倍総理大臣は、黒川氏の退職金は、処分に応じて減額されることを明らかにしました。

菅官房長官「訓告処分は法務省と検事総長が決定」

菅官房長官は、午前の記者会見で、「処分については、法務省が、今月21日に検事総長に対し、訓告が相当と考える旨を伝え、検事総長においても訓告が相当であると判断し、処分したと承知している。同じ日に、法務省から内閣に報告があり、決定について異論が無い旨を回答した」と述べました。

そのうえで、「法務省の調査結果や黒川氏の処分内容については、あくまでも法務省と検事総長で決定したものだ」と述べ、安倍総理大臣やみずからは、その後、決定について報告を受けたと説明しました。

立民“集中審議を” 自民は否定的

自民党の森山国会対策委員長と、立憲民主党の安住国会対策委員長は、25日午前、国会内で会談しました。

この中で、安住氏は、辞職した東京高等検察庁の黒川検事長を訓告の処分とした経緯などを安倍総理大臣に直接ただす必要があるとして、衆議院予算委員会で集中審議を行うよう求めました。

これに対し、森山氏は、まずは法務委員会や内閣委員会で質疑を行うべきだとして、否定的な考えを示しました。

また、安住氏は、検察官なども含めた国家公務員の定年を段階的に引き上げる法案について速やかに取り扱いを明確にするよう求めました。

立民 安住氏「事実ならうその答弁」

立憲民主党の安住国会対策委員長は「法務省が懲戒処分が相当だとしたにもかかわらず、安倍総理大臣や官邸が『だめだ』と処分を軽くしたことが事実なら、安倍総理大臣は国会で、うその答弁をしたことになる。お手盛りで処分し、黒川氏に退職金を支払って無罪放免というのは、時代劇でも許される話ではなく徹底的に追及する」と述べました。

自民 森山氏「しっかり説明する必要がある」

自民党の森山国会対策委員長は記者団に対し、黒川氏の処分について「政府の説明を聞くかぎり何ら問題はないように思うが、国民の関心も高いので、よく理解してもらえるよう、しっかり説明する必要がある。今週、法務委員会や内閣委員会で政府から答弁してもらうことが大事だ」と述べました。

自民 二階氏「法務省が責任持って対応したこと」

自民党の二階幹事長は、記者会見で、「法務省が責任を持って対応したことだろうから、私の口から論評するのは適当ではない。今後こうしたことのないよう努力を願いたい。今回の一連のことで、いきなり安倍総理大臣の責任に及ぶわけがない」と述べました。

公明 斎藤氏「国民目線で政策決定 支持率回復を」

公明党の斉藤幹事長は、記者団に対し、「法務省と検事総長の間で十分な検討を行ったうえでの判断だと聞いている。許されないことなので、辞職し、処分を受けたと認識している」と述べました。

また、「内閣支持率が各種の調査で落ちていることは知っている。国民目線で政策を決定していくことで支持率が少しずつ回復していくと思う」と述べました。

立民 枝野氏「事実なら法の下の平等に反する」

立憲民主党の枝野代表は、記者団に対し、「黒川氏に対する訓告の処分が官邸主導だったとの報道がされているが、事実ならば、法の下の平等に反するし、国会での答弁が虚偽だったということになる。事実関係を厳しく追及していかざるをえない」と述べました。

国民 玉木氏「さかのぼって重い処分に」

国民民主党の玉木代表は、記者団に対し、「訓告では退職金に何の影響もなく甘すぎる。内閣の胸先三寸で定年延長が決まる検察庁法改正はやってはいけないことの証左だ。また、賭けマージャンは刑法上の罪にあたるので、捜査を行って、必要であれば立件し、さかのぼって重い処分にするべきで、検察は独立性の見せどころだ」と述べました。

維新 馬場氏「人事院の指針に基づき処分行うべき」

日本維新の会の馬場幹事長は、記者会見で、「黒川氏は内閣が任命し、天皇が認証したので、内閣のトップの安倍総理大臣が処分の判断を行うのが筋だ。検事長は認証官ではあるが、国家公務員であることに変わりないので、人事院の指針に基づいた処分を行うべきだ」と述べました。

共産 小池氏「法務官僚や検察 黙っていていいのか」

共産党の小池書記局長は、記者会見で、「法務省や検察庁が懲戒処分を求めたのに官邸がひっくり返したという報道が事実であれば、極めて重大な問題だ。安倍総理大臣や森法務大臣の答弁が虚偽であった疑いがある。官邸と法務省との事前協議の経過を明らかにするべきだ。心ある法務官僚や検察関係者は黙っていていいのか。声をあげてほしい」と述べました。

黒川氏の後任 名古屋高検の林検事長が就任へ

緊急事態宣言の中、賭けマージャンをした問題で辞職した東京高等検察庁の黒川検事長の後任に、名古屋高等検察庁の林眞琴検事長が就任することになりました。

東京高等検察庁の検事長に26日付けで就任する林眞琴氏は62歳。

仙台地方検察庁の検事正や法務省の刑事局長などを経て、おととし1月から名古屋高等検察庁の検事長を務めています。

林氏は法務省の刑事局長当時、「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法の国会審議で、政府側の答弁の中心的な役割を果たしました。

一方、法務省は、検察に対する信頼回復を図るため、裁判官や弁護士に加え有識者も参加した新たな会議を設け、対応策を検討していくことになりました。

今回の黒川氏の問題をめぐって野党側は、黒川氏を訓告の処分とした経緯などを安倍総理大臣に直接ただす必要があるとして、衆参両院の予算委員会で集中審議を行うよう求めています。

これに対し与党側は、まずは26日の法務委員会などで質疑を行うべきだとして、予算委員会の集中審議の開催には否定的で、与野党で引き続き協議が行われる見通しです。

林氏は愛知県出身。

昭和58年に検事に任官したあと東京地検特捜部ではリクルート事件などの捜査を担当し、平成3年から3年間はフランス大使館で1等書記官を務めました。

平成15年からは法務省矯正局の総務課長として名古屋刑務所で起きた集団暴行事件の対応に当たり、明治時代に制定された「監獄法」の抜本的な見直しに尽力しました。

その後も、刑事局の総務課長や人事課長などの要職を歴任し、平成26年からは法務省の刑事局長を務め、「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法の国会審議では政府側の答弁の中心的な役割を担いました。

罪を犯した人の再犯防止や社会復帰支援に積極的に取り組んできたことでも知られています。

おととし1月、名古屋高等検察庁の検事長に就任した際の記者会見では「しなやかで、強く、頼りがいのある検察を構築していきたい」と抱負を述べていました。

賭けマージャンの問題で辞職した東京高等検察庁の黒川弘務前検事長とは任官同期で、林検事長は次の検事総長の有力候補とみられていました。

しかし、ことし1月、政府の法解釈の変更で黒川前検事長の定年が延長されたことで、検察関係者の間で、次の検事総長には黒川前検事長が就任し、林検事長はことし7月の定年までに退官するという見方が出ていました。