急事態宣言
全国で解除を正式決定

緊急事態宣言をめぐり政府は25日夜、対策本部を開き、東京など首都圏の1都3県と北海道を解除することを決め、安倍総理大臣が解除宣言を行いました。先月7日に出された宣言はおよそ1か月半ぶりに全国で解除されることになりました。

諮問委員会 解除は妥当との見解

緊急事態宣言の解除に向けて、政府が感染症の専門家などに意見を聴く「諮問委員会」が午前9時半から開かれました。

冒頭、西村経済再生担当大臣は、「感染状況等について、改めて分析・評価を行い、総合的に判断した結果、すべての都道府県において、緊急事態宣言を実施する必要がなくなったと認められ、緊急事態の解除宣言を行うことを諮問したい」と述べました。

また、基本的対処方針を改定し、▽解除のあと、新しい生活様式が定着するまでおおむね3週間ごとに地域の感染状況を評価しながら、外出の自粛やイベントの開催制限などを段階的に緩和することや、▽都道府県をまたぐ移動は、今月末までは避けることなどを盛り込む方針も諮問しました。

一方、加藤厚生労働大臣は、「長期戦、あるいは再度の感染拡大の可能性も想定しつつ、引き続き治療薬やワクチンの開発促進、また検査体制の強化、医療提供体制の整備など国民の暮らしと生命を守るべく全力を尽くしていきたい」と述べました。

諮問委員会のあと、西村大臣は東京など首都圏の1都3県と北海道で解除し、全国の解除宣言を行う方針は妥当だとする見解が示されたことを明らかにしました。

一方、西村大臣は神奈川と北海道で、依然として直近1週間の新規感染者数が解除の目安を上回っていることや、東京の新規感染者数が24日、14人だったことを踏まえ、諮問委員会の尾身茂会長から、東京、神奈川、北海道の状況を引き続き調査・分析するよう求められたことを明らかにしました。

また、「感染の大きな波は収束させることができたが、このあとも、感染はところどころで起こる。引き続き感染防止策をしっかり講じ、新しい生活様式を定着させながら、段階的に経済活動を広げていくことが大事だ」と述べ、外出自粛の段階的な緩和などを基本的対処方針に盛り込むことも妥当と判断されたと説明しました。

官房長官「国民の協力に感謝」

菅官房長官は、午前の記者会見で「先月、緊急事態を宣言した際と比較し、新規感染者の数は大幅に減少し医療提供体制のひっ迫状態も改善されている。欧米のような強制的な外出規制ができない中で、極力8割の接触削減に向けて国民に協力をいただいたことや感染リスクと隣り合わせの中で献身的な取り組みを続けていただいている医療従事者の努力のたまものだと考えており、改めて感謝したい」と述べました。

そのうえで「引き続き、3つの密を避けるなど、新しい生活様式の定着を図っていけるよう、政府としても周知、広報に努めたい。外出の自粛やイベントなどの開催制限などの今後の方針については、地域の感染状況を踏まえ、段階的に緩和したい」と述べました。

小池知事「緩和進めるも感染への備え重要」

東京など首都圏の1都3県と北海道で継続している緊急事態宣言が解除される見通しになったことについて、東京都の小池知事は記者団に対して「都としても専門家の意見を踏まえて、国の結論を受け止めたい。一方、きのうも陽性者が多く、大型連休明けの数字もこれから入ってくる。感染状況についてのモニタリングの結果を確認してステップを前に進めたい」と述べて、感染状況の確認を進めながら休業などの要請の段階的な緩和を進める考えを示しました。

そのうえで「感染症の拡大防止のため『ステイホーム』で1都3県の皆様に力を出していただいたことは本当にありがたい。第2波、第3波などもあるが、引き続き、都民の協力をお願いしないといけない。『ゼロリスク』はないが、いろいろ備えをしておくことで安心して日々の生活を送る環境づくりをやっていきたい」と述べ、次の感染拡大に備えることが重要だという考えを示しました。

経済の専門家「医療体制の充実で不安の軽減が経済に重要」

経済の専門家として諮問委員会の委員を務めている東京財団政策研究所の小林慶一郎研究主幹は、記者団に対し「この先、感染拡大の第2波、第3波が来て、インフルエンザが流行する時期に再び緊急事態が宣言される事態は避けたい。感染の不安が残ると、自発的な自粛が続く可能性があり、医療提供体制や検査体制を拡充して、不安を減らすことが経済にとっていちばん重要だ」と述べました。

経済の専門家「今は生活や企業を支える政策を」

経済の専門家で、諮問委員会の委員を務めている慶應義塾大学の竹森俊平教授は「全体としてみれば、赤信号から青信号に変わったというよりは、あとちょっとで黄色に変わるくらいの青信号という感覚で生活していただきたい」と述べました。

そのうえで「人出が増えて経済の歯車が回ると、感染のリスクが高まってしまうので、歯車が回り出すのをできるだけゆっくりコントロールする必要がある。今は、人出を増やすことになる景気刺激策ではなく、生活や企業の仕事を支える政策を行うべきだ」と指摘しました。

衆参議運委で質疑

西村大臣は、国会への事前報告と質疑のため、25日午後開かれた衆参両院の議院運営委員会に出席しました。

この中で西村大臣は「現時点までの感染の状況、医療提供体制、監視体制などを総合的に勘案し、緊急事態宣言を実施する必要がなくなったと認められることから、緊急事態の解除宣言を行うこととした」と述べました。

そのうえで、全国で解除する方針について、諮問委員会から妥当だとする見解が示されたとして、今夜対策本部で正式に決定する考えを示しました。

また、解除後は一定の移行期間を設けながら、外出自粛やイベントの開催制限などの要請を段階的に緩和する一方、再び感染拡大の傾向が認められる場合には、迅速に対策を講じる方針を説明しました。

そして「今回の大きな流行は収束へと向かっている。今後は、感染拡大の防止と社会経済活動の維持の両立を図り、再度、感染が拡大した場合に備えるべく、都道府県とも緊密に連携しながら、全力で取り組んでいく」と述べました。

一方、西村大臣は、ことし2月1日以降に予定されていたものの、延期や中止になったコンサートや演劇、歌舞伎などについて、改めて開催する場合の費用や海外に発信する際の動画の制作などにかかる費用の2分の1を、5000万円を上限に支援する考えを示しました。

また、新型コロナウイルス対策による財政支出を補填(ほてん)するため、消費税率を引き上げる考えはないか問われ「今は財政再建などを言っている場合ではない。国民の生活や雇用、事業を守るために必要な予算を確保することが何より大事で、私の頭に引き上げなどは一切ない」と述べました。

さらに医療機関への支援について「経営が大変厳しくなっていることを伺っている。医療機関を支援していくために必要な予算も含めて第2次補正予算案でしっかりと対応していきたい」と述べました。

各党の質疑で自民党の武部新氏は、「解除宣言を受けて、引き続き、感染防止を行いながら、社会経済活動の再起動を進めていくことが重要だ。どのような行動を国民にお願いするのか」と質問しました。

これに対し、西村大臣は、「『3つの密』の防止に加え、事業者にはアクリル板の活用や席と席の間を離すなど、感染防止策をとりながら、活動を拡大してもらいたい。元に戻すのではなく、テレワークやキャッシュレス化などで感染リスクを下げながら、質の高い成長と、誰1人取り残すことのない包摂的な社会をつくり上げたい」と述べました。

立憲民主党の手塚仁雄氏は、休業の要請が続くライブハウスやスポーツジムなど4つの業種について、「今後の見通しが全くつかず政府として対応が必要だ」とただしました。

これに対し、西村大臣は、「カラオケとスポーツジムは、今月中にガイドラインができれば、来月から休業要請を解除していく。ライブハウスは、業界団体と専門家によるさらなる検討の場を設け、一定の感染防止策が確保されれば、来月の中下旬ごろから休業要請を解除していく」と述べました。

国民民主党の谷田川元氏は、「医療体制と感染動向のモニタリング強化が必要だ。第1次補正予算で計上された交付金だけでは足りず第2次補正予算案で大規模に計上することが必要だ」とただしました。

これに対し、西村大臣は、「医療提供体制をしっかり確保することは大事な視点だ。政府は、今月21日時点で、3万1000床を確保しているところだが、いざというときに備えて、こうした対応の強化は大事だ。第2次補正予算案では全額国費とするとともに、大幅な積み増しを考えているところだ」と述べました。

公明党の平木大作氏は、政府が導入を予定している濃厚接触者を把握するためのスマートフォン向けのアプリについて、「通知を受けた人がPCR検査を受けられるようにすることが何よりも重要だ」と指摘しました。

これに対し、西村大臣は、「個人情報をしっかり保護しようと思っており、電話番号や位置情報を取らないし、陽性になったかどうかも誰にも伝えない。そして、PCR検査をスムーズに受けることは何より大事なことなので、そういう体制を整えていきながら、より多くの人に、導入していただきたい」と述べました。

日本維新の会の石井章氏は、「新型コロナウイルスのワクチン開発について、中国では破格の予算を充当するということだが、わが国は、どのように考えているか」と質問しました。

これに対し、西村大臣は、「短期間に大量に生産できるワクチンなど、国内でもさまざまな機関が開発を急いでいるところだ。第1次補正予算で100億円の予算を確保しているが、第2次補正予算案でも、日本全体でワクチンの開発・生産を進めていくために必要な予算を確保していきたい」と述べました。

共産党の倉林明子氏は、「第2波に備えた体制をいかにつくるかが求められているが、PCR検査の可能件数は増加している一方、検査実施件数は増えていない。実施件数をどこまで増やそうと考えているのか」とただしました。

これに対し、西村大臣は、「実施目標をつくるというのは患者を増やせということになるので、そういうことは考えていない。いざ患者が増えてきた時に確実に検査を受けられるよう、当初予算と補正予算、合わせて72億円の予算も活用し、必要であれば、さらに拡充して体制を整えていきたい」と述べました。

「基本的対処方針」変更 3週間ごとに緩和

緊急事態宣言の全面的な解除にあわせて、政府は、「基本的対処方針」を変更しました。

それによりますと、全国で宣言が解除されることを受けて、法律に基づいた「緊急事態解除宣言」を行うとしています。

そして、今後は、感染拡大を予防する「新しい生活様式」を定着させることや、事業者が業種ごとに策定する感染拡大予防のガイドラインを実践することを前提に、段階的に社会経済の活動レベルを引き上げていくとしています。

外出の自粛やイベントの開催制限、それに休業要請などについては、各都道府県が、おおむね3週間ごとに地域の感染状況や感染拡大のリスクなどを評価して、段階的に緩和するとしています。

また、感染が再び拡大する場合に備えて、医療提供体制の維持に向けて万全の準備を進めるほか、検査体制の強化などに取り組むとしています。

そのうえで、「こうした取り組みを実施することによって、感染拡大の防止と社会経済活動の維持の両立を持続的に可能としていく」としています。

一方、感染拡大の傾向が見られる場合は、改めて、都道府県が特別措置法に基づいた外出の自粛や休業要請をすることとし、判断基準をあらかじめ設けておくよう求めています。

個別の感染防止対策を見てみます。

▽都道府県をまたぐ移動については、5月末までは不要不急の帰省や旅行などは避けるよう促しています。その後、6月18日までの3週間程度は、最後まで宣言が継続された東京など首都圏の1都3県や北海道との間の移動は慎重に対応するよう促しています。また、自治体などが行う観光振興については、6月18日までの3週間程度は県内観光の振興から取り組むとしていて、その状況を踏まえたうえで、その後、県外からの人の呼び込みを実施するよう求めています。

▽繁華街の接待を伴う飲食店やライブハウスなど、これまでに感染者の集団=クラスターが発生したことのある施設への外出も5月末までは避けるよう促しています。その後は、感染防止策が徹底されれば、一定の安全性が確保できると考えられる業種については、自粛要請の緩和を検討するとしています。一方で、現段階で一定の安全性を確保することが難しいと考えられる業種については、感染防止策を検討したうえで、6月19日以降に緩和を検討するよう求めています。

こうした施設や、「3つの密」がある施設の管理者などに対しては、引き続き、地域の感染状況を踏まえて、必要な協力を依頼するとしています。

▽イベントは、おおむね3週間ごとに地域の感染状況などを評価して、段階的に、参加人数の上限を緩和するとしています。ただし、屋内のイベントは、上限を収容定員の半分程度以内に抑えるよう求めています。

またスポーツの試合など、全国的な人の移動を伴う大規模イベントは、6月19日以降、まずは無観客での開催を求めるとしています。

そして、イベントの主催者に対し、「3つの密」が発生しない座席の配置などの対策や、参加者名簿を作成して連絡先を把握することを働きかけ、リスクへの対応が整わない場合は、中止や延期など慎重な対応をとるよう求めています。

▽職場への出勤は、在宅勤務や時差出勤など人との接触を減らす取り組みを続けるよう求めています。

首相 宣言解除の方針を伝える 自民党役員会

自民党の役員会で安倍総理大臣は「緊急事態宣言を全国で解除したい。感染リスクをコントロールしながら段階的に社会経済活動を再開させていきたい」と述べました。

そのうえで「コンサートなどのイベントや観光旅行なども日常を少しずつ取り戻していく。今月中は県をまたぐ移動は避けてもらい、来月から段階的に解除し、来月19日以降、全国的に移動制限を解除する方針だ」と明らかにしました。

また、「夜の繁華街の接待を伴う飲食店などについては、来月中旬をめどに感染防止対策を講じるためのガイドラインを策定していく」と述べました。一方、「中小企業はもとより、大企業も事業存続の正念場を迎えることになる。対策を講じ、日本経済を守り抜いていく決意だ」と述べ、第2次補正予算案を、27日閣議決定し、事業規模は第1次補正予算と合わせて200兆円を超えることを明らかにしました。

緊急事態宣言 全国で解除を正式決定 政府対策本部

政府は午後7時すぎから総理大臣官邸で対策本部を開きました。

安倍総理大臣は「きょう緊急事態措置を解除することとした。これによって全都道府県で緊急事態措置を実施する必要がなくなったと認められることから、特別措置法に基づき緊急事態の解除を宣言する」と述べ、全国の解除宣言を行いました。

先月7日に出された宣言はおよそ1か月半ぶりに全国で解除されることになりました。

そして安倍総理大臣は「コロナの時代の新たな日常を作り上げていく。緊急事態の解除後でも感染拡大のリスクをゼロにすることはできない」と述べ、おおむね3週間ごとに地域の感染状況や感染拡大のリスクを評価しながら、外出自粛やイベントの自粛、それに施設の使用制限などについて段階的に緩和していく考えを示しました。

さらに「段階的な緩和には、新しい生活様式や、感染拡大防止に向けた業種別ガイドラインの実践が前提となる。引き続き『3密』の回避や、人と人との距離の確保、マスクの着用をはじめとした基本的な感染対策の継続の徹底をお願いしたい」と呼びかけるとともに、医療提供体制や検査体制の強化に取り組む考えを示しました。

また安倍総理大臣は、水際対策の強化として、入国拒否の措置の対象にインドなど11か国を追加するとともに、水際対策の期間を来月末まで延長すると決めたことを明らかにしました。

最後に、これから災害が多発する時期を迎えることを踏まえ「避難所における感染拡大防止にも十分留意する必要がある。地方自治体はホテルや旅館などの積極的な活用も含めた可能なかぎり多くの避難所の開設、マスクの備蓄など必要な対策を講じてもらいたい」と述べました。

緊急事態宣言 全国で解除 首相が表明

安倍総理大臣は記者会見で、緊急事態宣言について、「世界的にも極めて厳しいレベルで定めた解除基準を全国的にクリアしたと判断した」と述べ、全国での解除を正式に表明しました。

そのうえで、「罰則を伴う強制的な外出規制などを実施できない日本ならではのやり方で、わずか1か月半で、今回の流行をほぼ収束させることができ、『日本モデル』の力を示した」と述べ、国民の協力に謝意を示しました。

また、今後の対応について、「目指すは、『新たな日常』を作り上げることだ。社会経済活動を厳しく制限するやり方では、仕事や暮らしそのものが立ち行かなくなる。これからは、『感染リスクをコントロールしながら、どうすれば実施できるか』という発想が重要だ」と述べました。

そして、来月始まるプロ野球の観客やコンサートなどのイベントの参加人数を徐々に増加させるなどとした具体例を挙げ、段階的に社会経済活動を再開していく方針を示しました。

また、安倍総理大臣は、今年度の第2次補正予算案を、27日閣議決定し、事業規模が第1次補正予算と合わせて200兆円を超えることを明らかにしました。

そして、「GDPの4割にのぼる空前絶後の規模、世界最大の対策で、100年に1度の危機から日本経済を守り抜く」と強調しました。さらに、事業の継続に向けて、「オールジャパンで、圧倒的な量の資金を投入する」と述べ、総額130兆円を超える資金繰り支援を実施する考えを示しました。

そのうえで、
▽店舗の賃料の負担軽減のため、最大600万円の新たな給付金を創設することや、
▽中小企業などに対する「持続化給付金」の対象に、ことし創業したベンチャー企業も加えること、
それに、
▽「地方創生臨時交付金」を2兆円増額することを明らかにしました。

一方、安倍総理大臣は、感染の再拡大を防ぐため、手洗いやマスクの着用など基本的な感染防止策や、いわゆる「3つの密」の回避など「新しい生活様式」に取り組むよう求めました。

また、繁華街の接待を伴う飲食店やライブハウスへの出入りも緩和するため、来月中旬をめどにガイドラインを策定し、上限200万円の補助金で、感染防止対策を講じるための支援を行う考えを示しました。

さらに、感染再拡大の兆候を速やかに把握するため、
▽濃厚接触者を確認するスマートフォン向けのアプリを来月中旬をめどに導入するほか、
▽PCR検査の一層の拡充を進める方針を示しました。

一方、医療提供体制の強化に向けて、2兆円を超える予算を積み増し、全国で「新型コロナ重点医療機関」を指定して、十分な専用病床を確保するとともに、医師や看護師、介護施設の職員などを対象に最大20万円を支給することを明らかにしました。

また、安倍総理大臣は、香港や台湾に対する中国政府の対応などを念頭に、「内向きな発想では、この世界的課題を根本的に解決することはできない。世界の政治経済をリードしてきた国々の多くが国内の対応で手いっぱいとなっており、そこに隙が生まれる事態は決してあってはならない」と指摘しました。

そして、「自由や民主主義などの価値を共有する国々と手を携え、自由かつ開かれた形で世界の感染症対策をリードしていく」と述べ、治療薬やワクチンを途上国を含めた世界各国に普及させるため、特許を管理する国際的な枠組みの創設を、来月予定されるG7サミット=主要7か国首脳会議で提案する考えを明らかにしました。

首相の主な発言

宣言解除の判断は
安倍総理大臣は、緊急事態宣言を解除した判断について、「関東の1都3県と北海道は、先週21日の段階でも、新規の感染者数は減少しており医療のひっ迫状況も改善傾向にあった。この傾向が継続していけば、解除することも可能だと申し上げていたが、こんにちまでその傾向が続いてきた」と述べました。

そのうえで、「東京では、『直近1週間の10万人当たりの新規感染者が0.5人』という世界でも厳しいレベルの基準もクリアしている。神奈川県では、この基準を超えているが、1人以下で、多くはリンクが追えており、専門家から、『解除すべきである』という答申をいただいた」と述べました。

また記者団から「新しい日常生活」をいつまで続ける必要があるのか質問されたのに対し、「治療薬、ワクチンの実現が極めて重要だ。世界的に感染が収束しなければならない中で、治療薬やワクチンの存在が極めて重要だ」と述べました。

「解除の基準に経済状況は考慮せず」
安倍総理大臣は、宣言の解除にあたり、経済状況も考慮したか問われたのに対し、「解除の基準の中に入れたわけではなく、解除は地域の感染状況、医療提供体制、監視体制の3つに注目したうえで、総合的に判断をした」と述べました。

一方で、「経済の状況、国民生活の状況、経営上ギリギリの困難に直面している皆様のことについては、常に私の頭にある。事業の継続と雇用、そして、暮らしを守り抜いていくためにしっかりと下支えしていきたい」と述べました。

テレワーク「コロナ後も働き方の大きな柱に」
安倍総理大臣は、「テレワークが新しいスタイルの1つになってきている。これはコロナ後の世界においても一つの大きな働き方の柱になっていく」と述べました。

外国人の入国拒否措置「慎重に検討 総合的に判断」
安倍総理大臣は、水際対策の一環として、外国人の入国を拒否する措置について、「将来的には、わが国や内外の感染状況などを踏まえながら、国際的な人の往来の再開に向けた検討を行っていくことも重要であろうと考えている」と述べました。

そのうえで、「感染再拡大の防止と両立する形でどのように国際的な人の往来を部分的・段階的に再開できるかについて、慎重に検討したうえで、政府として適切なタイミングで総合的に判断をしていく考えだ。国民の健康と命を守り抜いていくことを最優先に考えていきたい」と述べました。

布マスク「再利用可能 需要抑制に大きな効果が期待」
安倍総理大臣は、全国すべての世帯への布マスクの配布について、「検品の強化によって、配布が予想より遅れているのは事実だ。マスクが手に入らず、到着を待っている皆様に、1日も早く、お届けできるように全力を尽くしていきたい」と述べました。

そのうえで、「国民の皆様には、常時、マスクの着用をお願いをしているところで、仮に全員が毎日、使い捨てマスクを利用するとなると、需要は月30億枚を超えてしまう。需要の拡大に見合うだけの十分な供給量を確保することは引き続き、難しい状況にある。洗うことで再利用が可能な布マスクは、需要の増大を抑えて、需給バランスを回復することに、大きな効果が期待できる」と述べました。

災害発生時の感染防止「“3密”回避へ多くの避難所を開設」
安倍総理大臣は、災害が発生した場合の感染防止の対策について、「これから本格的な台風シーズン、集中豪雨が来襲する時期にあたるが、国民には、新型コロナウイルス感染症が完全に収束していない中にあっても、災害時に危険な場所にいる場合には、避難所に避難するよう心がけていただきたい」と述べました。

そのうえで、「その際、3つの密を回避するなど感染拡大の防止にわれわれも十分に対応していかなければならない。ホテルや旅館などの積極的な活用も含め、可能なかぎり多くの避難所を開設し、マスクなど必要な物資をプッシュ型でこれまで以上に迅速に支援していくことができるよう準備に万全を期していく」と述べました。

9月入学「慎重に検討していく」
安倍総理大臣は「9月入学」について、「学校休業が長期化する中で、いろいろな議論がなされており私は選択肢の1つだと考えているが、与党、自民党でもいろいろな議論があり、極めて慎重な議論もある」と述べました。

そのうえで、「学校再開の状況や、子どもたちや保護者はもとより社会全体への影響を見極めつつ慎重に検討していきたい。拙速は避けなければならない」と述べ、慎重に検討する考えを示しました。

来月のG7サミット「事情が許せば参加したい」
安倍総理大臣は、来月予定されるG7サミット=主要7か国首脳会議に出席するかどうかについて、「アメリカで実際に開催することも含めて、今、調整していると承知している。調整が整い、諸般の事情が許せば、私も参加したいと考えている」と述べました。

世論調査での支持率の低下「与えられた使命に全力尽くす」
安倍総理大臣は、各種の世論調査で、内閣支持率が下がっていることについて、「日々の支持率に一喜一憂することなく、与えられた使命に全力を尽くしていきたい」と述べました。

新型コロナへの対応「米と協力し国際的な課題に取り組む」
安倍総理大臣は、新型コロナウイルスへの対応をめぐり、米中関係の対立が深まっていることに関連し、「新型コロナウイルスは、中国から世界に広がったのは事実だと考えている。アメリカは、日本にとって唯一の同盟国であり、アメリカと協力しながら、さまざまな国際的な課題に取り組んでいきたい」と述べました。

そのうえで、「中国も、世界の中で、極めて重要な国で、国際社会で期待されているのは、地域の平和と安定・繁栄に責任ある対応をとっていくことだ。中国がそういう対応をとってくれることを期待したい」と述べました。

自民 二階氏「国民全体の勝利だ」

自民党の二階幹事長は、記者会見で、「国民全体の勝利だと思う。このことを忘れずに、しっかりと今後の日常においても、国民が一致団結して協力しあっていくことが大事だ。社会経済活動を段階的に再開させていくにあたっては、第2波、第3波の襲来を想定した上で、その被害や期間を小さくしていくことが肝要だ。 当面は、第2次補正予算案を迅速に仕上げていくことが大事だ」と述べました。

自民 岸田氏「関係者の尽力に感謝と敬意」

自民党の岸田政務調査会長は、記者会見で、「国民の皆様の多大なご協力や医療従事者をはじめとする関係者の尽力に感謝と敬意を表する。第2波への警戒を怠ることなく、国民の生活を支え、経済を一刻も早く平時の状態に戻せるよう全力で取り組みたい。国民の皆様にも新しい社会や生活のあり方について考えてもらいたい」と述べました。

公明 斉藤氏「日常活動取り戻す新たなステージに立った」

公明党の斉藤幹事長は、記者団に対し、「1つの区切りとなった。自粛要請に応えた国民に心から感謝を申し上げたい。感染拡大防止を図りながら、日常活動をいかに取り戻していくかという新たなステージに立った。日本が世界経済の新しい姿を提示して引っ張っていくような対策をしなくてはいけない」と述べました。

立民 枝野氏「経済支援 感染再拡大阻止の提案していく」

立憲民主党の枝野代表は、記者団に対し、「長期の慣れない自粛生活から、よい方向に進む1つのけじめで、歓迎したい。しかし、感染リスクがなくなる訳ではないので、監視・治療体制について、政府はしっかりと整備にあたってほしい。今後も経済的な支援策や感染の再拡大阻止の対応策について具体的な提案をしながら、厳しく指摘していく」と述べました。

立民 安住氏「安倍内閣 政治生命かけた対応必要」

立憲民主党の安住国会対策委員長は、「ウイルス検査の数がもともと少ないのに、感染者数が少ないことをもって解除を判断することには一抹の不安がある。車の運転と一緒で、アクセルとブレーキの踏み方を一歩間違えば、また感染者が増えたり、経済が落ちていったりするので、政治生命をかけた対応が安倍内閣には必要だ」と述べました。

国民 玉木氏「100兆円規模の対策求める」

国民民主党の玉木代表は、記者団に対し、「定量的・定性的な判断で、妥当だが、緩みは禁物だ。放っておいて経済が回復することはないので『真水』の財政出動で100兆円規模の対策を求めたい。『喉元過ぎれば熱さを忘れる』となってはならないので、水際対策などについて検証が必要だ」と述べました。

国民 原口氏「宣言解除の根拠が示されていない」

国民民主党の原口国会対策委員長は、記者会見で、「解除の根拠が示されていない『数字無き解除』だ。国民に不安があれば、消費活動などでさまざまな支障が出るので、目安を満たしていない神奈川なども解除する理由について、安倍総理大臣は、記者会見などで答えるべきだ」と述べました。

維新 馬場氏「ダメージ受けた個人事業主などへの対応必要」

日本維新の会の馬場幹事長は、記者会見で、「すべての国民の協力で対策がうまくいったのではないか。ただし、次の流行に向けて、関東と関西にICU=集中治療室を備えた国立のセンターを設置するなどの対策に努めなければならない。一方で、経済の命を守ることも大事で、ダメージを受けた個人事業主などへの対策も必要だ」と述べました。

共産 小池氏「今の時期にPCR検査拡充 医療体制構築を」

共産党の小池書記局長は、記者会見で、「多くの国民が休業や自粛の要請に応え、大変な努力をした結果だ。さらなる感染の波をいち早くキャッチし、適切な対応をとるためにも今の時期にPCR検査を抜本的に拡充することや、医療体制の構築のための財政支援を行うことが必要だ。解除されたからといって終わりではなく、一層の補償が必要になる」と述べました。

経団連 中西会長「感染予防と経済活動の再開を両立すべき」

緊急事態宣言が全国で解除されることについて、経団連の中西会長は25日の記者会見で、解除後も新型コロナウイルスの感染予防と経済活動の再開を両立すべきだとの考えを示しました。

この中で、中西会長は「緊急事態宣言そのものは解除されても感染予防策は、きっちりやらなければならない。また、経済への影響も大きくなっているので、両方をにらみながらしっかり対応しなければいけない」と述べ、新型コロナウイルスの感染予防と経済活動の再開を両立すべきだとの考えを示しました。

また中西会長は、企業の間で進んだテレワークなどの取り組みは、今後も継続すべきだとしたうえで「在宅勤務では、勤務時間が厳密にはわからず、期待する成果が出せたかどうかという方向にどんどん行くだろう。こういう流れは元に戻してはいけないと強く思う」と述べ、多様な働き方を進めるため勤務時間の長さではなく、達成された成果で業務を評価すべきだとの認識を示しました。

尾身会長 “再宣言”基準を数値で示す考え

新型コロナウイルスの感染が再び拡大した地域に改めて緊急事態宣言を出す際の判断基準について、政府の諮問委員会の尾身茂会長は、検査体制などを見極めたうえで具体的な数値で示す考えを示しました。

緊急事態宣言が全国で解除されたことを受けて、諮問委員会の尾身茂会長は25日夜、西村経済再生担当大臣とそろって記者会見しました。

この中で尾身会長は、再び緊急事態宣言を出す際の判断基準について「感染拡大が再び起こる前に必ず具体的な数値を出さなければならない。いま検査体制や治療の状況が変わっているところなので、その状況がもう少し分かってくれば、より根拠をもって示すことができる」と述べました。

また「これまでの国の対策のどこを改善すべきなのか、また、われわれ専門家の情報発信に課題はあったのか、客観的な中間評価を行うことが専門家の責務だ」と述べ、これまでの政府や専門家会議の一連の対応について検証する考えを示しました。