川検事長の人事に
影響なし」官房長官

今の国会での成立が見送られた検察庁法の改正案をめぐり、菅官房長官は、国民の声に十分耳を傾け、引き続き法務省が法案の意義を丁寧に説明していくという認識を示しました。また法案の見送りは、定年を延長した東京高等検察庁の黒川検事長の人事には影響しないと強調しました。

今の国会での成立が見送られた検察庁法の改正案をめぐり、菅官房長官は午前の記者会見で「検察庁法の改正部分についてはさまざまな意見がある。国民の声に十分耳を傾け、引き続き法務省で丁寧に対応、説明していくものと承知している」と述べました。

そのうえで、記者団が「今後、国家公務員法の改正案と検察庁法の改正案を切り離して審議を要請する考えはあるか」と質問したのに対し、「いずれにしろ、国会のことは国会にお任せしている」と述べるにとどめました。

また、菅官房長官は、法案の見送りが定年を延長した東京高等検察庁の黒川検事長の今後の人事に影響するかどうかについて、「全く影響はない」と述べました。

さらに記者団から、黒川検事長の定年延長をめぐり法解釈を変更したことを国民に周知する必要があったのではないかと問われたのに対し、「必要に応じて周知が行われることはあるが、一概に答えることはできない。この解釈変更は検察官の人事制度に関わることなので、周知の必要はなかったものと考える」と述べました。

また、菅官房長官は午後の記者会見で記者団が、東京高等検察庁の黒川検事長の定年を延長する理由について「東京高検管内で遂行している重大かつ複雑、困難な事件の捜査や公判に対応するためには、黒川検事長の検察官としての豊富な経験、知識などにもとづく指揮、監督が必要不可欠であり、当分の間、引き続き検事長の職務を遂行させる必要がある」と述べました。

記者団から「重大かつ複雑、困難な事件」とは何を指すのかと問われたのに対し、「個別の人事に関することであり、捜査機関の活動内容や体制に関わる事柄でもあるので、答えを差し控えたい」と述べました。

さらに、記者団から政府として黒川検事長を次期検事総長の、有力な候補者の1人と考えているのかと問われたのに対し、「これからの人事について答えることは控える」と述べました。

武田 国家公務員制度相「国民の理解得るべく説明」

武田国家公務員制度担当大臣は閣議のあとの記者会見で「継続審議となったが、法案の提出者として、国民の皆さんから法案の意義を理解していただけるよう、丁寧な説明をしていきたい」と述べました。

また記者団が「今後、国家公務員法の改正案と、検察庁法の改正案を切り離して審議する考えはあるか」と質問したのに対し、「私の責任のもとで、パッケージにして提出したわけであり、私の方で切り離すことは考えていない」と述べました。

自民 鈴木氏「優先順位考えやむをえず」

自民党の鈴木総務会長は記者会見で、検察庁法の改正案について、「政府の思いが伝わりきらなかった。新型コロナウイルス対策に全力を傾けないといけない中、優先順位を考えれば、今の国会で見送るのは、やむをえない選択だ。次に向けて、改正案は変えなくても、委員会の審議で答えられなかったところをしっかりと明らかにして理解をいただき、安心してもらうことはできるのではないか」と述べました。

自民 世耕氏「公務員の定年延長を検討」

自民党の世耕参議院幹事長は記者会見で「新型コロナウイルスの影響を受けて、これだけ経済が苦しくなり、雇用環境が厳しくなっている中で、国家公務員や地方公務員だけ給料も下がらないまま5年も定年延長していいのか。法案が継続審議となったことをきっかけに、立ち止まって、国民の理解を得られるのかどうか、考えていくべきだ」と述べました。

公明 山口氏「新型コロナへの対応最優先で」

公明党の山口代表は記者会見で、検察庁法の改正案について「与党としては継続審議にして、今後、取り扱いを検討していくことになる。大事なのは、新型コロナウイルスへの対応を最優先に、経済対策などをスピード感を持って仕上げることだ。今回SNSを通じた発信が一種の世論を形成していったことは、真摯(しんし)に受け止めなければならない。分析して、今後、政治判断をしていくための資料とすべきだ」と述べました。