急事態宣言延長 介護の
現場「経営さらに厳しく」

緊急事態宣言の延長が決まったことを受けて、自主休業や利用自粛の動きが広がっている介護の現場からは、施設の経営がさらに厳しくなると不安の声が上がっています。

デイサービスの現場「大打撃」

緊急事態宣言のあと、利用者の3割が利用を自粛し、収入が減少していた、東京 世田谷区にある「デイサービス博水の郷」の管理者の佐藤朋巳さんは、「期限が6日までなら、その後の頑張り次第で収入の減少をおさえられると思っていたが、さらに延長になると大打撃だ。もともと人手不足の業界なので、働いてくれている人を減らすわけにはいかず、人件費などの支出は変わらない状態が続くので、年間で赤字となり、非常に厳しい経営になる」と話しました。

そのうえで、「収入が減少した分を補助するなど、介護サービス事業所への金銭的な支援がないと、撤退する事業所が出てきて、高齢者がサービスを受けられなくなったり、家族の負担が増えたりするなどの、しわよせが出てしまうおそれがある」と話しました。

訪問介護の現場「悲鳴上がっている」

デイサービスなど通所型の介護事業所で自主休業の動きが広がる中、代わりのサービスとして役割が増している訪問介護の現場では、ヘルパーや事業所への国の支援が不十分なまま、緊急事態宣言が延長されたことに、不安の声が上がっています。

ことし3月、国に改善を求める要望書を提出した、埼玉県のNPO法人「暮らしネット・えん」の小島美里代表は、「訪問介護の需要が高まっている一方で、感染防止のため訪問回数を減らすなど、サービスを縮小せざるをえない事業所も出ている。ぎりぎりの収入で運営している小規模な事業所が多いので、現場では悲鳴が上がっている」と話しました。

そのうえで、「防護服やマスクが十分に確保できない状態で訪問介護を行っているので、本当に早く収束できるのか大変疑問に思っている。新型コロナウイルスの感染拡大がただでさえ厳しかったヘルパーの人手不足に追い打ちをかけているので、このまま国の支援がない状態が続くと、在宅介護の崩壊が加速する気がして、非常に不安です」と話しました。

専門家「夏ごろから事業所の閉鎖や倒産多発のおそれ」

高齢者の介護に詳しい東洋大学の高野龍昭准教授は、「感染が収まっていない中、高齢者の健康を守るためにも、緊急事態宣言の延長は妥当な判断だ。一方で、各地で相次いでいるデイサービスなどの休業や介護事業所のサービス縮小が、さらに拡大していくと考えられ、それに伴って高齢者の心身の機能の低下や認知症のさまざまな症状が悪化することが懸念される」と述べました。

また、最近では高齢者施設での感染も拡大し、新しい入居者の受け入れを見合わせる施設も出ているとしたうえで、「通所型や訪問型の介護サービス事業者だけでなく、特別養護老人ホームなど入所型の施設を運営する事業者にも、経営危機の問題が波及していくおそれがある」と指摘しました。

さらに、「介護の現場では、介護報酬の支払いのルールなどの関係で、ことし3月から4月にかけての収入減少による経営へのダメージが、まだ表面化していないので、政府は経営危機を現実的な問題として感じとっていないと思う。影響が表面化する夏ごろから介護サービス事業所の閉鎖や倒産が多発するおそれがあるので、先手を打って支援策を講じる必要がある」と話しました。