急事態宣言 延長決定
全国対象に5月31日まで

6日期限を迎える「緊急事態宣言」について、政府は4日夕方、対策本部を開き、対象地域を全国としたまま、今月31日まで延長することを正式に決めました。安倍総理大臣は、今月14日をめどに専門家に感染者数の動向などを分析してもらい、可能だと判断すれば、31日を待たずに宣言を解除する考えを示しました。

専門家会議 「指標や新しい生活様式の提案を」要請

午前8時半ごろから政府の専門家会議が開かれました。

冒頭、西村経済再生担当大臣は、緊急事態宣言について、「宣言の対象地域の判断にあたって考慮すべき指標や、感染症への対策が長丁場となることに備え、一人ひとりが感染拡大防止と社会経済活動の両立を図るための新しい生活様式の実践例を提案してもらいたい」と要請しました。

また、事業活動の再開に向け、「各事業者が感染対策を講じるにあたって、業種ごとの基本的な考え方も議論してもらいたい」と述べました。

加藤厚生労働大臣は、「まずは、都道府県別の感染状況や医療提供体制について分析・評価を加えてもらい、社会経済の活動レベルをどう維持し、感染拡大防止をどのように進めていくのか議論してほしい」と述べました。

会議では、先月7日に宣言が出されて以降の各地の感染状況や医療提供体制を検証するとともに、今後必要な対応をめぐっても意見を交わしたものと見られます。

諮問委員会 “延長は妥当”の見解

感染症の専門家などに意見を聴く「諮問委員会」は、午前10時半ごろ始まりました。

冒頭、西村経済再生担当大臣は「新規の感染者の数は減少傾向に転じているが、感染者の減少の水準は目標のレベルには残念ながら達していない。依然として医療現場のひっ迫も続いており、国民の引き続きの協力が必要だ」と述べ、対象地域を全国としたまま、今月31日まで延長する方針を諮問しました。

合わせて基本的対処方針の変更も諮問し、特に重点的な取り組みが必要な「特定警戒都道府県」は追加せず、引き続き東京、大阪など13の都道府県で、これまでと同様の取り組みを継続する一方、それ以外の県では、地域の実情に応じて、感染拡大の防止と社会経済活動の両立に配慮した取り組みに移行する方針を示しました。

また、加藤厚生労働大臣は「感染の状況に応じて、それぞれの地域で対策を移行していくにあたり、社会経済の活動レベルの維持と感染拡大防止をどのように戦略的に行っていくのか、基本的対処方針の改定を議論してもらいたい」と述べました。

西村大臣は、諮問委員会の終了後、記者団に対し「緊急事態宣言の期間と区域、それに基本的対処方針について諮問した。実施すべき期間は今月31日まで、区域は全都道府県にするということで、了承いただいた」と述べ、政府の方針は妥当だとする見解が示されたことを明らかにしました。そのうえで「基本的対処方針案は、若干の微修正があるが、会長に一任ということで了承いただいた。このあと、夕方に予定されている対策本部で正式決定すべく、国会に報告するなどの手続きを進めたい」と述べました。

諮問委会長代理「今後1、2週間で取り組み結果を評価」
諮問委員会の会長代理を務める川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「感染者数が落ち着きつつあるからと言って取り組みを元に戻してしまうとこれまでの努力が水泡に帰すことになる。もう一度やり直すことは、医学的にも経済的にもとても大変なことなので、われわれとしては、『すみません。もう少し我慢してください』ということだ。今後1、2週間程度で、取り組みの結果を評価する予定だ」と述べました。

神奈川 黒岩知事「速やかに出口戦略を」
諮問委員会に出席した神奈川県の黒岩知事は、「これまで住民に対し、『1か月間だから、息を止めて我慢してくれ』と言ってきたが、『もう1か月我慢してくれ』と言うのは、そう簡単ではない。今後、緊急事態宣言がどのように解除に向かうのかがわからないと人々は不安になってしまうので政府は速やかに出口戦略を示す必要がある」と述べました。

国対委員長会談 「衆参予算委で集中審議」合意

緊急事態宣言の延長をめぐり、自民党の森山国会対策委員長と立憲民主党の安住国会対策委員長が、4日午前、国会内で会談しました。

そして、午後に衆参両院で議院運営委員会を開き、西村経済再生担当大臣から報告を受けて各党の質疑を行うことを改めて確認しました。そのうえで、安倍総理大臣らに出席を求め、来週11日に衆参両院の予算委員会で集中審議を行うことで合意しました。

会談のあと、森山氏は記者団に対し、「宣言の延長から、あまり時間をおかずに予算委員会の集中審議をやる。宣言の期間が延びるので、安倍総理大臣の考えを直接聞き、質疑することは大事なことだ」と述べました。

また安住氏は、「今月31日まで延長するのであれば、政府には、どういう過程を経て終息に向かうシナリオを持っているのかについて、根拠を確認し、足らざる点は提言をしたい」と述べました。

予算委筆頭理事会談 “11日に3時間の集中審議”合意

衆議院予算委員会の与野党の筆頭理事は、4日昼前、国会内で会談し、来週11日の午前に安倍総理大臣らに出席を求め、緊急事態宣言の延長をテーマに3時間の集中審議を行うことで合意しました。

衆参議運委 「休業応じぬ事業者 罰則を含めて検討」

緊急事態宣言の延長決定を前に、西村大臣は、事前の報告と質疑のため、午後開かれた衆参両院の議院運営委員会にそれぞれ出席しました。

西村大臣は、「全国的に新規感染者数は減少傾向に転じることができたが、依然として数は多く、医療提供体制へのさらなる負荷を避けるためにも引き続き感染拡大の防止に取り組む必要がある」と述べました。

そのうえで、宣言の対象地域を全国としたまま、今月31日まで延長する方針について、諮問委員会から妥当だとする見解が示されたとして、このあとの対策本部で正式に決定する考えを示しました。

また、このあとの質疑で、西村大臣は、宣言の解除について直近2、3週間の新規感染者の数や医療提供体制などを踏まえて、総合的に判断する考えを示し、「特定警戒都道府県以外では、社会経済の活動レベルを段階的に引き上げることにしており、今回の延長は、解除に向けた段階的な移行の1段階とも位置づけられる」と述べました。

さらに、西村大臣は、都道府県知事による、より強い措置を可能とする法改正について、「知事の休業要請や指示に応じない事業者がいて、そこに人が集まって感染リスクが高まっているのはあってはならないことだ。必要とあらば罰則をかけることを含めて検討せざるをえない」と述べました。そのうえで、「他方、ロックダウンのような外出規制に対して罰則をかけるのは、かなりの程度、私権を制約することになるのでこういった議論は憲法上の整理が必要になってくる」と述べました。

このほか、質疑では自民党の赤澤亮正氏が、「緊急事態宣言の延長に多くの国民が大きな不安を抱えている。宣言はいつ解除されるのか」と質問しました。

これに対し、西村経済再生担当大臣は、直近2、3週間の新規感染者の数や医療提供体制、近隣の都道府県の感染状況などを踏まえ、総合的に判断する考えを示しました。そのうえで、「おおむね1週間後や2週間後に、専門家に分析していただく。急激に新規感染者が増えていれば、いわゆる『特定警戒都道府県』に移行することも考えられるし、一定の条件を満たせば、緊急事態措置の対象区域の解除も考えられる」と述べました。

立憲民主党の岡島一正氏は、「PCR検査が進まず国民の不安が拡大している。政府が検査を抑制してきた結果院内感染などが増えているのではないか。なぜ増やさないのか」とただしました。

これに対し、西村大臣は、「PCR検査は、専門家会議の提言でも、保健所の体制などを強化するよう指摘されている。看護師、保健師などの専門職などの協力で体制を強化し、現時点で全国で1万6000件以上の検査能力を確保しているが、交付金などを活用し、2万件の目標に向けて取り組みを加速させていきたい」と述べました。

国民民主党の泉健太氏は、「ことし4月から6月のGDPは20%マイナスになるかもしれないと言われており、第2次補正予算案を組む際には100兆円規模を目指してもらいたい」と述べました。

これに対し、西村大臣は、「まずは第1次補正予算の中身を、できるだけ早く届けたいと思っているが、さらに状況が長引けば、当然、いろいろな影響が出てくる。GDPにも、かなりの影響があるのは間違いなく、しっかりと状況を踏まえながら時期を逸することなく対応していきたい」と述べました。

公明党の佐藤英道氏は、「各種給付金の申請、融資や雇用調整助成金の相談窓口が異なっている。極力、ワンストップで対応できる体制を整えるためにポータルサイトや電話相談窓口の設置を進めるべきだ」と指摘しました。

これに対し、西村大臣は、「1人10万円の給付も、オンラインでの申請を可能としているが、さらに郵送での申請も行おうとしている。電話相談窓口については、それぞれ設けているが、ワンストップになってない部分があるかと思うので、できるかぎり改善していきたい」と述べました。

日本維新の会の東徹氏は「感染者の数がどこまで減れば、宣言を解除できるのかなど、具体的な数字を示さなければ、多くの国民は納得できない」とただしました。

これに対し、西村大臣は、「感染者数などの指標をどう分析・評価するか、専門家にお願いしており、しっかりと基準や目安を考えていきたい。1人の感染者が何人にうつすのかを示す『実効再生産数』は、来週にも、全県のできるだけ直近の数字を示し、それぞれの県の評価や分析を、できるかぎり示していきたい」と述べました。

共産党の倉林明子氏は、「1日当たりの死亡者数が、増加傾向にあるのではないか」と指摘し、感染状況の把握のために、PCR検査の体制を一層強化するよう求めました。

これに対し、西村大臣は、「死亡者の数は感染者の数よりも少し遅れて出てくる。いまは感染者の数は下がり始めているが、亡くなる方は残念だが少し増えている。それでも世界に比べて、10万人当たりの死亡率は非常に低く、しっかりと必要な方には検査をしてきた証しではないか」と述べました。

自民役員会 首相が宣言延長の方針を伝える

自民党の役員会で、安倍総理大臣は、「先週、補正予算が成立した。一日も早く国民に支援を届け、事業や雇用を必ずや守り抜いていきたい」と述べました。

その上で、「緊急事態宣言からまもなく1か月となる。欧米のような爆発的な感染拡大を回避し、減少へと転じさせることができた。さらに、全国各地へ協力をお願いするために、宣言を、全国を対象に5月末まで延長する」と伝えました。

一方、「経済活動において、段階的に日常を取り戻していくために、今後2週間をめどに、専門家の協力を得て、詳細な感染予防策のガイドラインを業態ごとに策定し、段階的に営業可能となる環境を作っていきたい」と述べました。

また、治療薬をめぐって、「『レムデシビル』はまもなく日本で薬事承認となる。世界から期待が寄せられている『アビガン』も今月中をめどに承認したい」と述べました。

そして、「国民や事業者には引き続きつらい忍耐と努力をお願いすることになるが、その先の出口に向けた準備期間として、国民一丸となって一歩一歩歩みを進めていきたい」と述べました。

政府対策本部 “31日まで宣言延長 対象は全国”決定

政府は、午後5時前から、総理大臣官邸で対策本部を開きました。

安倍総理大臣は、「わが国は、諸外国のような爆発的な感染拡大には至っておらず、全国の『実効再生産数』も1を下回るなど一定の成果があらわれ始めているものの、現時点では、いまだかなりの数の新規感染者数があり、感染者の減少も十分なレベルとはいえない。引き続き医療提供体制がひっ迫している地域も見られることから現在の取り組みを継続する必要があるというのが専門家の見解だ」と述べ、緊急事態宣言の対象地域を全国としたまま、今月31日まで延長することを決定したと明らかにしました。

そのうえで、10日後の今月14日をめどに、専門家に感染者数の動向や医療提供体制の状況などを分析してもらい、可能だと判断すれば、31日を待たずに宣言を解除する考えを示しました。

そして、特に重点的に感染拡大防止の取り組みが必要な13の「特定警戒都道府県」では引き続き、人との接触の8割削減を目指すなどこれまでと同様の取り組みを求める考えを示しました。

一方、それ以外の34の県では、感染拡大の防止と、社会経済活動の維持の両立に配慮した取り組みに段階的に移行するよう求めました。

さらに、3つの「密」を回避できる施設については、感染防止対策を徹底し、休業要請の解除や緩和を検討してもらいたいとするとともに、引き続き、不要不急の帰省や旅行など、都道府県をまたいだ移動は極力避けるようよびかけました。

そして、「これからの1か月は、緊急事態の収束のための1か月であり、次なるステップに向けた準備期間だ」と述べました。

首相が記者会見 「可能な場合 31日待たずに宣言解除」

緊急事態宣言の延長決定を受け、安倍総理大臣は4日夜、記者会見しました。今月14日をめどに専門家から意見を聴き、可能な場合は、今月31日の期限を待たずに、宣言を解除する考えを示しました。また、「コロナの時代の『新たな日常』を作り上げなければならない」と述べ、感染防止策を講じた新たな生活様式に取り組むよう呼びかけました。

この中で、安倍総理大臣は、先月7日に緊急事態宣言を出して以降、ピーク時と比べ全国の感染者数が3分の1まで減少したとして、「収束に向けた道を着実に前進している」と述べました。

一方で、感染者の減少が十分なレベルと言えず、医療現場が過酷な状況にあるとして、「もうしばらく努力を続けていかなければならないと率直に伝えたい」と述べました。

そして、重症者治療をさらに強化するとともに、1日当たり100人を超える回復者数を下回るレベルまで新規感染者を減らし、地方への人の流れを抑制するための対策を講じる必要があることから、対象地域を全国としたまま、宣言を延長する決定を行ったと説明しました。

また、期限を今月31日までとした理由について、患者の平均的な在院期間が2週間から3週間とされており、新規感染者数を低い水準におさえながら、退院を進め、医療現場のひっ迫した状況を改善するために、1か月程度の期間が必要と判断したと述べました。

さらに、安倍総理大臣は、今月14日をめどに、改めて専門家から、地域ごとの感染者数の動向や医療提供体制のひっ迫状況などの分析を聴き、可能な場合は、今月31日の期限を待たずに、宣言を解除する考えを示しました。

そして、「当初予定していた1か月で、宣言を終えることができず、おわびを申し上げる。中小・小規模事業者がこれまでになく厳しい経営環境に置かれている苦しみは、痛いほど分かっている。さらに1か月続ける判断をしなければならなかったことは断腸の思いだ」と陳謝しました。

そのうえで、経済対策を盛り込んだ補正予算の成立を受けて、給付金の支給を急ぐとともに、賃料の支払いが困難な事業者の負担軽減や、雇用調整助成金のさらなる拡充、それに、生活が厳しい学生への支援について、与党内での検討を踏まえて、追加的な対策を講じる考えを明らかにしました。

一方で、経済や社会活動の本格的な再開について、「この1か月で、現在の流行を収束させなければならない。5月は収束のための1か月で、次なるステップに向けた準備期間だ」と述べました。

また、「ある程度の長期戦を覚悟する必要があり、経済社会活動の厳しい制限を続けていけば、暮らし自体が立ち行かなくなりコロナの時代の『新たな日常』を1日も早く作り上げなければならない」と指摘しました。

そして、専門家会議が策定した「新しい生活様式」を指針として学校生活の段階的な再開をはじめ商店やレストランの営業、小規模イベントの開催などは、感染防止策を十分に講じたうえで実施するよう呼びかけました。

また、医療提供体制について、PCR検査の体制拡充や、感染者の病状に応じた医療機関や宿泊施設への受け入れ支援、それに、医療用のガウンやマスクの生産や輸入の強化を図る考えを改めて示しました。

さらに、治療薬の開発については、アメリカ政府が使用を認めた「レムデシビル」の承認手続きを急ぐとともに、インフルエンザ治療薬の「アビガン」についても、臨床研究で有効性が確認されれば今月中の承認を目指す考えを示しました。

そして、安倍総理大臣は、感染者や医療従事者への差別や偏見が問題となっていることについて、「ウイルスよりも、もっと大きな悪影響を私たちの社会に与えかねない。誰にでも感染リスクはあり、支えあいの気持ちを持ってほしい。強い使命感で頑張っている医療従事者や家族への差別など決してあってはならない」と訴えました。

そのうえで、大型連休中の外出や帰省の自粛に改めて協力を求めたうえで、「国立感染症研究所によれば、中国経由の第一波の流行は抑え込むことに成功したと推測される。欧米経由の第二波も、感染者の増加はピークアウトし収束への道を進んでいる。みんなで前を向いて頑張れば、きっと困難も乗り越えられる」と呼びかけました。

首相 宣言延長に「責任を痛感」

首安倍総理大臣は記者会見で、「残念ながら1か月延長するに至ったことに内閣総理大臣として責任を痛感している。実現できなかったことに改めておわび申し上げたい」と述べました。そのうえで、「この5月は現在の流行を収束させること、そして、次なる流行に備える1か月であり、その備えを万全に固めるための1か月であると考えている。その目標に向かって先頭に立って努力をしていく考えだ」と述べました。

また、現金10万円の一律給付をめぐり追加の給付を行うかどうかについて、「すでに800を超える自治体がオンラインでの申請受付を開始した。自治体と協力して一日も早くこの現金を手元に届けたい。その先については、事態の推移や状況などを十分に見極めながら判断したい」と述べました。

さらに、都道府県知事による、より強い措置を可能とする法改正について、「どうしても必要な事態が生じる場合については、当然検討されるべきと考えているが、いまは緊急事態のさなかであり引き続き、国民の協力をいただきながら、都道府県としっかりと協力をして進めていきたい」と述べました。

PCR検査については、「専門家会議の分析・提言では、検査件数がなかなか増加しなかった要因として、各自治体の保健所の業務過多などが挙げられている。現在はこうした状況を踏まえて地域の医師会にも協力をいただきながら、PCR検査体制の強化が図られてきた。東京などの大都市圏を中心に対策を徹底していきたい」と述べました。

また安倍総理大臣は、憲法改正をめぐって3日、緊急事態への対応を憲法にどう位置づけるか、国会で議論すべきだという考えを示したことについて、「自民党は4項目のイメージ案を提案し、その中に緊急事態条項がある。今の事態だから申し上げているのではなく、ずっと申し上げている」と述べました。

休校の長期化に伴う学習機会の確保について、「1人1台のIT端末の実現に向けて予算を確保するなど、さまざまな対策をしているが、感染予防に最大限配慮したうえで、分散登校を受け入れるなどの段階的な学校再開に向けた工夫も提示している。子どもたちの学習機会の確保に向けて、地方自治体や学校現場と一体となって全力を尽くしていきたい。さまざまなアイデアを取り入れていきたい」と述べました。

抗体検査について、「感染状況の全体像を把握するには、PCR検査だけでは困難で、抗体検査を用いた疫学調査も有意義な方法だ。現在、抗体検査キットの性能評価などを行っており、速やかに疫学調査の実施に移していきたい」と述べました。

一方で、「欧米に比べて日本の死者数が少ないのは、別の肺炎で亡くなった人に新型コロナウイルスによる死者が混じっているからではないかという指摘があるが、日本は肺炎で亡くなった人には大体CT検査を行っていて、直ちに判断がつくので、そういうことはない」と述べました。

経済再生相会見 “14日めどにデータ分析 結果次第で解除も”

緊急事態宣言の延長決定を受け、西村経済再生担当大臣は4日夜記者会見し、今月14日をめどに新たな感染者の数やPCR検査の件数など直近のデータを都道府県ごとに分析し、結果次第では宣言を解除することもあり得るという見通しを示しました。

この中で西村大臣は緊急事態宣言の延長決定について「ここからが大事だ。このウイルスは無症状の人が感染を拡大させてしまううえ、ウイルスを持ち続ける人もいる。新規感染者をゼロにすることは非常に難しく、気を緩めるとまた感染が拡大する」と指摘しました。

また今後の宣言の解除は、
▽直近の2~3週間の新規感染者数や、
▽経路が分からない感染者の割合が一定以下であること、
▽PCR検査や医療提供体制が十分かどうか、
などを見極めながら判断する考えを示しました。

そして、今月14日とその1週間後をめどに都道府県別のデータを専門家に詳しく分析・評価してもらうとしたうえで、「仮に急激に新規感染者の数が増えれば『特定警戒都道府県』に入る可能性もある一方、一定の水準を満たせば解除することもあり得る」と述べました。

また、安倍総理大臣が賃料の支払いが困難な事業者の負担軽減など追加的な対策を講じる考えを示したことを受け、西村大臣は、補正予算に計上した予備費1兆5000億円の活用も含め、財政措置を検討する考えを示しました。

さらに西村大臣は「命を守ることと暮らしを守ることの2つのバランスをよく見ながら両方実現していくことが私に課せられた課題だ」と述べました。

そして「データと科学的根拠に基づく判断と対策、地域の感染状況や医療提供体制の状況に応じた段階的な対応、専門家会議から提案された新しい生活様式、『スマートライフ』をどうつくっていくか。この3つを実行していきたい」と強調しました。

各党の反応は

緊急事態宣言が今月31日まで延長されることが決まったことについて各党の反応です。

自民 二階氏「打てる対策はどんどん打っていきたい」
自民党の二階幹事長は、記者会見で、「宣言の延長は適切なことだと思う。この未曽有の国難とも言える時に、政府と一体となって情報を共有し、国民の生活が一刻も早く元どおりになるようあらゆる対策をとっていく決意だ。国民とともに一刻も早く切り抜けていかなければならないので、打てる対策はどんどん積極的に打っていきたい」と述べました。

公明 高木氏「妥当な判断 必要な対応策を検討」
公明党の高木政務調査会長代理は、「妥当な判断だ。今、措置を緩めてしまうと再度感染拡大を招きかねない現状にあることから、警戒を解くわけにはいかず、引き続き国民の理解と協力を求めるものだ。今後、地方自治体などの現場でどのような対応がなされるか、注視しつつ、必要な対応策を検討していきたい」というコメントを出しました。

立民 枝野氏「延長と補償はセット 2次補正編成を」
立憲民主党の枝野代表は、記者団に対し、「いま解除すれば、再び感染が拡大するのは、専門家でなくとも想像できる状況だ。結論自体はやむをえないが、結果的に見通しを誤ったと指摘せざるをえない。GDPの2割程度が損なわれるという指摘もあり、宣言の延長と補償はセットという考えのもと、少なくとも半年分として、『真水』の財政支出で50兆円規模の支援が必要だ。一日も早く、第2次補正予算案の編成を政府に求めたい」と述べました。

国民 玉木氏「評価するが出口は見えず 100兆円規模の予算を」
国民民主党の玉木代表は、記者団に対し、「医療体制がひっ迫し、宣言を解除できる状況にはないので、延長は評価するが、出口が全く見えない。政府は、解除できなかった原因を検証し、解除の基準を示すべきだ。また『真水』の財政支出で100兆円規模の予算を組み、学生の学費免除などを速やかに行うことも必要だ。国民に『新しい生活様式』を求めるよりも、野党の提案を柔軟に受け入れることなど、『新しい政治様式』が求められている」と述べました。

維新 馬場氏「国民にダメージ 事業者への支援策を」
日本維新の会の馬場幹事長は、記者会見で、「感染者数がゼロや数十人に収まっている自治体は早々に宣言を解除し、経済活動を順次、再開させていくべきだった。この1か月、国民には、経済的、精神的なダメージがボディーブローのようにじわじわと広がっている。期間が延長されると、顔面にストレートパンチを受けるような大きなダメージをさらに受けることになるので、政府に、賃料の支払いが困難な事業者への支援策などの提言を続けていきたい」と述べました。

共産 小池氏「一刻も早く休業補償など抜本的対策を」
共産党の小池書記局長は、記者会見で、「感染の広がりや医療体制がひっ迫している状況を見れば、延長はやむをえないが、国民の理解と納得を得て進めるべき問題にもかかわらず政府は、その理由や宣言を解除する基準などを明確に答弁していない。『行動変容』が一番必要なのは政府であり、国民の声に応えていくべきだ。西村大臣も長期化を認めているが、そうであれば、一刻も早く、休業補償など抜本的な対策を打ち出すべきだ」と述べました。

小池都知事 「致し方ない またひと頑張り」

政府が対象地域を全国としたまま今月31日まで延長することを正式に決めたことについて、東京都の小池知事は4日夜、記者団に、「東京としてはきょうも感染者数が87人で、そういう中では致し方ない。これから終息に向けてまたひと頑張りしなければいけない」と述べました。

そのうえで「皆様方には大変協力をいただいている。『5月6日まで』と思って頑張ってきた方もおられる中で5月いっぱいという話なので、さまざまな工夫をしながらBCP=事業継続計画などの方法を考えながら、皆さんとともに新型コロナウイルスの終息へ向けて進めていきたい」と述べました。

「緊急事態宣言」めぐる経過

新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言をめぐる経過です。

新型コロナウイルスの感染拡大に備え、安倍総理大臣は2月27日、政府の対策本部で関係閣僚に対し、緊急事態宣言を可能とする特別措置法の整備に向けた準備を進めるよう指示しました。

一部の野党から私権の制限に懸念も出る中、安倍総理大臣は、法案の早期成立を図るため、3月4日、野党5党の党首らと個別の会談を行い、協力を呼びかけました。

そして3月13日、新型コロナウイルス対策の特別措置法が参議院本会議で可決・成立。

東京都内などで感染者が急増する中、政府は3月26日、特別措置法に基づく「対策本部」を設置しました。

そして、2日後の3月28日の対策本部で、政府などが取り組む全般的な方針を盛り込んだ「基本的対処方針」を決定し、緊急事態宣言を行うための法律上の手続きが整いました。

緊急事態宣言をめぐって、政府内では、経済への影響を考慮し、慎重に対応すべきだという意見が根強くありましたが、東京都の小池知事や大阪府の吉村知事ら自治体側や日本医師会などの医療関係者からは、宣言を出すよう求める声が強まりました。

4月に入り、東京都内の1日あたりの感染者数が100人を超え、政府内でも緊迫感が高まる中、安倍総理大臣は6日、新型コロナウイルス対策を担当する西村経済再生担当大臣、感染症の専門家などでつくる政府の「諮問委員会」の尾身茂・会長と会談し、状況の報告を受けました。

そして、4月7日に緊急事態宣言を出す考えを明らかにしました。対象地域は東京など7都府県、期間は5月6日までの1か月程度として、対策本部でもこうした方針を表明しました。

4月7日、諮問委員会が、東京都をはじめ7都府県を対象に緊急事態宣言を出すなどとした政府の方針は妥当だとする見解を示したことを踏まえ、安倍総理大臣は、衆参両院の議院運営委員会に出席して政府の方針を説明。夕方の対策本部で、宣言を決定しました。安倍総理大臣は記者会見し、人との接触機会の7割から8割削減を目指すとして、7都府県の住民に対し、外出を自粛するよう呼びかけました。また、政府は、臨時閣議で緊急経済対策を決定しました。

緊急事態宣言の発出を受け、東京都の小池知事が4月10日、休業への協力要請を行う具体的な業態などを公表。都は当初、百貨店やホームセンター、理髪店などにも要請を行う考えでしたが、政府との調整を踏まえ、対象には含めないことになりました。

緊急事態宣言の対象となった7都府県以外でも感染拡大が続き、愛知県などが独自の緊急事態宣言を行う中、安倍総理大臣は4月16日の対策本部で、宣言の対象地域を全国に拡大することを決定。翌日の記者会見で、大型連休に向け、都市部から地方への移動を自粛するよう重ねて呼びかけました。

4月29日の参議院予算委員会で安倍総理大臣は、現状でも新規の感染者数の増加が続いているとした上で、「5月6日に『緊急事態が終わった』と言えるかどうかは、依然、厳しい状況が続いていると思う」と述べ、全面的な解除は難しいという認識を示しました。

そして、5月1日、対象地域を全国としたまま、1か月程度延長する方針を明らかにしました。

安倍総理大臣は、5月3日、西村経済再生担当大臣や加藤厚生労働大臣と会談し、宣言の期間を5月31日まで延長することで政府の諮問委員会に諮る方針を決めました。また、延長にあたって、特に重点的な取り組みを進める「特定警戒都道府県」に新たな県は追加しない方針も固めました。