10万円一律給付閣議決定
マイナンバーカード活用も

政府は20日の持ち回りの閣議で、今月7日に決定した「緊急経済対策」について、収入が減少した世帯への30万円の給付の代わりに、すべての国民を対象に1人当たり10万円を給付するとした内容に見直すことを決めました。

この中では、10万円の給付について「人々が連帯して一致団結し、見えざる敵との闘いという国難を克服しなければならないため、感染拡大防止に留意しつつ、簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行う」としたうえで、マイナンバーカードを活用した受付システムも整備するとしています。

これによって緊急経済対策の事業規模は、当初の108兆2000億円程度から117兆1000億円程度に拡大し、財政支出も39兆5000億円程度から48兆4000億円程度に増えることになりました。

菅官房長官「経済あっての財政再建」

菅官房長官は午後の記者会見で、「新型コロナウイルスの甚大な影響で、内外の経済は近年で最大の危機に直面しており、あらゆる政策を動員して、まずは感染拡大を防いで、この難局を乗り切り、経済を回復させていくために、リーマンショックの時を上回る過去最大の経済対策・補正予算案を策定した」と述べました。

そのうえで記者団が財政再建への影響を質問したのに対し、「経済あっての財政再建であり、まずは感染拡大を防ぎ、経済を回復させることを最優先にして取り組んでいきたい」と述べました。

一方、菅官房長官は現金10万円の一律給付について海外に住む日本人は対象になるのか問われたのに対し「前回の定額給付金の際には、対象外だったと承知している。今回は、国内感染対策も踏まえて総務省で検討することになるだろう」と述べました。

麻生財務相「国民との一体感が大切」

1人当たり10万円の一律給付を実現するために見直した今年度の補正予算案について麻生副総理兼財務大臣は記者会見で、見直しは国民との一体感を重視した決定だとしたうえで、国会での早期成立を図る考えを示しました。

この中で麻生副総理兼財務大臣は収入が減少した世帯への30万円の給付を取りやめ、一律で1人10万円の給付を実施することについて、「緊急事態宣言が全国に広げられ、感染症の影響が長引き、すべての国民が極めて厳しい状況に置かれている。長期戦も予想されることを考えると、ウイルスへのこの闘いを乗り切るためには、なによりも、国民との一体感が大切だということから、このような決定になったと理解している」と述べました。

そのうえで、「補正予算案の早期成立を目指し、10万円の現金給付をはじめ、各種の支援ができるよう、なるべく早く、国民の手元に届くように、全力を尽くしたい」と述べ国会での早期成立を図る考えを示しました。

またリーマンショックのあとの2009年に実施した1人につき1万2000円の「定額給付金」との違いについて麻生副総理は「前回は金融危機という状況で家計の生活支援から消費活性化を図ろうと考えた。今回の一律給付は緊急事態宣言を受けて普通の生活をしている方々でも活動が制約され、迷惑がかかることは間違いないので、みんなで連帯して乗り切るためにやらせていただく。定額給付金の時の景気活性化策とは少し意味が違う」と述べました。

さらに取りやめとなった収入が減少した世帯への30万円の給付について今後改めて実施する考えがあるか問われたのに対し、麻生副総理は、雇用調整助成金の拡充や子育て世帯に対する児童手当の上乗せなどの対策が緊急経済対策に盛り込まれているとしたうえで、「そういったものの効果がどう出てきているかを見極めないと、今の段階で直ちに30万円の給付をやるとか、やらないとかを申し上げる段階ではない」と述べました。

西村経済再生相「5月中に支給開始を」

西村経済再生担当大臣は記者会見で、「まずは与野党の協力も得ながら補正予算案の早期成立を目指して全力で取り組みたい。なんとか5月中に支給を開始し、できるだけ多くの人に届くようにしたいので、制度設計や市町村との調整も急ぎたい」と述べました。

また給付の方法について、住民基本台帳に記載しているすべての人に申請書を郵送するとして、「いわゆる『手上げ方式』ではない」と述べました。

立民 枝野氏「30万円の給付も行わなくていいのか」

立憲民主党の枝野代表は党の役員会で、「野党が強く求めてきた一律10万円の給付は決まったが、収入が大幅に減った人には足りない。30万円の給付も行わなくていいのか、考えなくてはいけない。」と述べました。

また、「1兆円の『地方創生臨時交付金』を、各自治体が独自に進める休業などへの事実上の補填(ほてん)に回すことができるのは歓迎すべきだが、自治体の財政状況を考えれば焼け石に水だ。使途を自由にしたうえで、少なくとも1兆円の5倍程度が必要だ」と述べました。

国民 原口氏「一回こっきりではいけない」

国民民主党の原口国会対策委員長は記者会見で、「政府は、補正予算案の提出直前に最重要項目を組み替えるという前代未聞の迷走を演じた。給付の実現は当然だが、感染者数の伸び方をみると楽観できず、一回こっきりではいけない」と述べました。

また今回取り下げた、収入が減少した世帯への30万円の給付について、「性質が違うもので、金額は別にしても、セーフティーネットは維持すべきだ」と述べました。