議・市議ら少なくとも
10人“前法相から現金”

自民党の河井案里議員の陣営の選挙違反事件で、広島県の県議会議員や複数の市議会の議員、それに後援会幹部などのうち少なくとも10人が検察の任意の事情聴取に対して、夫の河井克行前法務大臣から現金を渡されたと説明していることがNHKの取材でわかりました。検察は現金に票の取りまとめを依頼する意図がなかったかなど、実態解明を進めているものとみられます。

河井案里議員が初当選した去年7月の参議院選挙をめぐって広島地方検察庁は、陣営の資金が買収に使われた公職選挙法違反の疑いがあるとして、今月、複数の県議会議員の自宅や事務所を捜索するなど、資金の流れの解明を進めています。

NHKが64人の県議会議員や各地の市議会議員、それに後援会幹部に取材したところ、これまでに少なくとも20人以上が検察の任意の調べを受け、少なくとも10人は案里議員が自民党の公認候補に決まった去年3月以降、河井克行前法務大臣から現金を渡されたと、説明していることがわかりました。

このうち1人は、案里議員からも現金を受け取ったと述べました。

渡された現金は1人を除いてそれぞれ5万円から30万円だったとしていて、検察にも同様の説明をしているということです。

取材に対し、複数が違法性の認識を認める一方、「後日、返金した」とか、「県議選の当選祝いとして受け取った」などと説明する人もいました。

このうち河井前大臣の後援会幹部の1人は「去年6月、河井前大臣が自宅を訪ね、『案里議員の応援をお願いしたい』と言って現金5万円の入った封筒を差し出した。断ったが、『気持ちですから』と言って置いて帰っていった。返すべき金だと認識していた」と述べました。

また県議会議員の1人は「去年4月、河井前大臣から『当選おめでとう』と言われ、現金30万円を直接、手渡された。翌月、前大臣の事務所に返しに行った」と話しています。

公職選挙法では、候補者が選挙区内の有権者に票の取りまとめを依頼する趣旨で金品を渡す行為を禁じていて、検察は現金が渡された趣旨や陣営の資金の流れについて、さらに実態解明を進めるものとみられます。

河井前大臣の事務所は今月6日「関係者に対する捜査が行われているところであり、現時点でのコメントは差し控えさせていただきます」としています。

町長の辞職や県議事務所の強制捜査に発展

河井案里議員の陣営をめぐる選挙違反事件では、河井克行前法務大臣から現金を受け取ったと明らかにした広島県の安芸太田町の町長が辞職したほか、複数の県議会議員の事務所などが検察の強制捜査を受ける事態に発展しています。

安芸太田町の小坂真治前町長は去年4月、自宅で河井前大臣から現金20万円を受け取り、検察の任意の事情聴取を受けたことを認め、道義的責任を取るとして今月9日に辞職しました。

小坂前町長によりますと河井前大臣は「保守系の票を分けることができれば、自民党の2人が当選できる」などと話をしたあと、帰り際に現金が入った白い封筒を渡してきたということです。

県内の自治体トップでは、このほかに三原市の天満祥典市長と、大竹市の入山欣郎市長も検察の任意の事情聴取を受けたことを明らかにしていますが、現金の授受についてはいずれも否定しています。

このうち大竹市の入山市長は「河井前大臣が現金が入ったとみられる封筒を持ってきたが、突き返して叱責した」と述べています。

さらに検察は陣営の資金が買収に使われた公職選挙法違反の疑いがあるとして、今月新たに複数の県議会議員の事務所や自宅の捜索に乗り出し、資金の流れの解明を進めています。

捜索を受けたと明らかにしたのは、いずれも自民党の桧山俊宏議員、渡辺典子議員、平本徹議員の3人で、桧山議員は県議会議長も務めた地元政界の実力者として知られています。

NHKの取材に対し、桧山議員は「金銭の授受について捜査当局との間で認識に食い違いがある」と述べ、渡辺議員と平本議員は違法な金銭の授受を否定しています。

関係者によりますと検察は、今月に入ってこのほかにも広島県内の複数の地方議員の関係先を捜索しているということです。

後援会幹部「現金5万円入った封筒渡された」

河井克行前法務大臣の後援会の幹部は、NHKの取材に対し、去年の参議院議員選挙で妻の案里議員への応援を依頼され、現金5万円が入った封筒を渡されたと明らかにしました。

この時の状況について後援会幹部は「去年6月、河井前大臣が1人で私の自宅を訪れ、『案里議員が参議院選挙に立候補することになり、ぜひ応援をお願いしたい』と話してきた。そして、『いろいろな形でご支援いただきたいし、お願いをするので皆さんで食事でもどうぞ』と言って、現金5万円が入った白い封筒を差し出してきた」と説明しました。

そのうえで、「『そんなことをしてもらうために応援している訳ではない』と答えて何度も返したが、河井前大臣は『気持ちですから』と言って結局、帰り際に置いて帰ってしまった」と述べました。

受け取った現金について、この後援会幹部は「悪い金だとは認識していたが、その場でケンカする訳にもいかず非常に困った。3か月ほどあとに、河井前大臣の政治フォーラムで5万円を会費として払った。法的には返したことにはならないと思うが、私的に流用したことは一切ない。ケンカしてでも突き返すべきだったと、非常に情けなく思い反省している」と述べました。

このほか選挙戦での河井前大臣の様子については「とくに自分の衆議院選挙の選挙区では非常に力を入れてたびたび回ってきた。自分のところへ来たときも『厳しいです、大変です』と言っていた」と振り返りました。

そのうえで、「自民党から2人を当選させることは非常に難しいというのは最初からあったので、案里議員は新人だし、ぜひ通さないといけないということで、人も金もつぎ込んだのだと思う。支援してきたわれわれも憤りを感じている。みんなの前に出て事実を吐露することが必要だと思う」と述べました。