型ウイルス検査に公的
保険 保健所を通さず検査が

新型コロナウイルスの検査に6日から公的保険が適用され、加藤厚生労働大臣は、保健所を通さずに検査を受けられるようになるとして検査体制が拡充されることに期待を示しました。

新型コロナウイルスの検査をめぐっては、医師が必要と判断したにもかかわらず、保健所に断られるなどして検査が受けられないケースが出ていて、厚生労働省は、幅広く検査が受けられるよう6日から公的保険の適用対象としました。

窓口負担分は、全額公費で補助されるため自己負担は発生しません。

これについて加藤厚生労働大臣は、閣議のあと記者団に対し「保健所との調整プロセスが不要となり、ボトルネックが解消される。また民間では事業の見通しが立つので、検査能力を拡充するところが出てくることを期待したい。われわれも、さまざまな形で支援していきたい」と述べました。

厚生労働省によりますと、保険適用後も当面の間は院内感染を防止する観点などから、検査を実施するのは「帰国者・接触者外来」など、体制が整った医療機関に限られるということです。

また、都道府県ごとに医療関係者などで構成する調整機関を設置し、民間も含めて効率的に検査を実施できる体制を整備することにしています。

保健所を通さずに検査可能に

検査はこれまで最終的に保健所の判断で実施されていましたが、今回の保険適用によって医師が必要と判断した場合は保健所を通さずに検査が可能になりました。

そのねらいについて厚生労働省は、医師が感染を疑った人の検査を確実に実施するためとしています。

ただし、院内感染を防止する観点などから当面の間、検査を実施できるのは全国におよそ860か所ある「帰国者・接触者外来」か同様の機能を持つ医療機関などに限られます。

それ以外の医療機関では感染が疑われる患者が来た場合、原則、「帰国者・接触者相談センター」へ連絡することになっていますが、直接専門外来に患者を紹介しても差し支えないとしています。

厚生労働省は発熱が4日以上続くなど感染が疑われる人に対しこれまで通り「帰国者・接触者相談センター」に相談してほしいと呼びかけています。

また全国の都道府県などに医療関係者などで作る調整会議が設けられ、検査機関の空き状況を確認するなどして効率的に検査を進めるための調整を行います。

検査の単価は最大1万8000円 自己負担なし

検査の単価は最大1万8000円となり、窓口負担分も公費で補助されるため自己負担は発生しません。

一方で、感染した人の濃厚接触者などについて保健所の判断で行う「行政検査」も引き続き実施されます。

厚生労働省によりますと、全国で実施可能な検査件数は5日の時点で1日あたりおよそ4200件となっていますが、実際に実施された件数は先月18日以降、多い日でも1日およそ1600件にとどまっているということです。

厚生労働省は今回の保険適用で民間の検査機関の積極的な参入を促すほか、地域間で検査を協力しあう調整も進めることで検査数は一定程度増える見込みだとしています。

地域のクリニックは

一方、地域の診療所の医師が感染を疑った場合も検査につなげられるかどうかは引き続き大きな課題となります。

厚生労働省は、かぜの症状や37度5分以上の発熱が4日以上続く場合などは相談センターに電話するよう呼びかけていますが、センターに相談する前に身近な診療所を受診する人も少なくありません。

しかし、診療所の医師が検査が必要だと連絡しても保健所が断るケースが相次でいると指摘されています。

こうした状況に対し厚生労働省は、診療所の医師が検査が必要だとした場合、専門の外来につないでできるだけ検査を実施すべきだとしています。

今後さらに感染が拡大すれば、多くの患者が地域の診療所を訪れることも想定され、院内の感染防止対策も課題となります。

また、国は検査体制を拡大するため従来よりも検査時間を大幅に短縮できる簡易検査キットの導入などを急いでいます。

診療所「確実に検査を」

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、地域の診療所で医師が感染を疑った人も確実に検査に結びつけてほしいという声が上がっています。

東京 国立市にある診療所では、帰国者・接触者外来などではないため保険適用になっても検査を行うことはできません。

このため、診療所の医師が感染を疑った患者も確実に検査につながる仕組みが必要ではないかと考えています。

「新田クリニック」の新田國夫院長は「診察や検査を尽くした上で疑わしいと考えた場合、信頼して検査をしてほしい」と話しています。

また診療所を訪れた70代の男性は「もし症状が出たら不安を抱え続けることになるので疑いのある場合は検査してもらいたい」と話していました。

一方、診療所では院内の感染予防対策が今後、さらに重要になると考えています。

現在、感染が疑われる患者は相談センターを通じて「帰国者・接触者外来」を受診する仕組みとなっていますが、この診療所には発熱の症状が続く人がやってくるといいます。

また、新型コロナウイルスの検査が出来ないことを知らずに検査を受けたいとやってくる患者も増えると予想しています。

そこで診療所では感染対策を強化し、受付で体温を測定する際に患者と職員の接触を避けるため患者の額にあてるだけで検温ができる体温計を新たに購入しました。

37度5分以上の発熱があった場合はほかの患者との接触を避けるため、一般の診察室ではなく専用の診察室を設けて対応しています。

また、会計の際に感染の可能性が否定できない患者から受け取ったお金も消毒するなどできる限りの対策を取っているということです。

ただ、感染症の専門医ではなく、新型のウイルスについての情報が限られる中で院内感染のリスクに十分対応できているか不安を感じていると言います。

新田院長は「念のため防護服も注文しているが、手に入らない状況が続いている。国は規模の小さな診療所に感染が疑われる患者が来た場合どう対応すべきなのか具体的に示してほしい」と話しています。

専門家「患者は事前に電話で相談をして受診を」

感染症対策に詳しい東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は「誰もが検査を受けたいと思う気持ちは分かるが、すぐに検査体制を2倍・3倍に増やせないのでまずは医師の判断をもとに、必要な患者の検査を実施し感染の拡大を封じ込めることが重要だ」としています。

そのうえで今後の検査のあり方について「医師が感染の疑いを持っても検査に結びつくケースがまだまだ少なく、検査体制をより充実させていかなければならない」と指摘しています。

また院内の感染対策に苦慮している地域の診療所については「現在、地域の医療機関に感染が疑われる患者が来た時の対応マニュアルを国の研究班が作っている。これを早く示すとともに患者側にも事前に電話で相談をしてから受診することをお願いしたい」と話しています。